自由と民主主義を掲げる社会であれば、おおよそ一番まずいのは自分と異なる意見を封じようとすることです。
異なる意見、立場を主張し、言論、表現では多いにガチンコすればよいのです。そのためには、国民のリテラシーを育てなければなりません。『人格』や『立場』と『主張』を分けて考え、異なる立場(ポジション)からの主張も内容を精査し、是々非々で臨むこともまたリテラシーの一つです。
例えば、上位の『立場』(お上、権力者)の言うことは常に正しく従うべきで、下の立場の者が従わなければ首を刎ねて社会秩序を維持するべきであるという思想・原理は、民主主義や法による支配・コンプライアンス等の考え方と相容れないことはいうまでもありません。
刮目して視るべきは『上』とか『下』(階級・経済的地位)や『右』や『左』(ポジション)ではなく、主張の内容です。
自分と異なる意見に対して、乱暴な言葉や汚い言葉で圧殺し合う泥沼の争いに陥った時、そこには激しい怒りと深い憎しみだけが残り、主張の内容はもはやほとんど関係なくなります。その先には修復や調整が困難な社会の深い分断があります。
劇作家の平田オリザさんは、コロナ禍による演劇(ライブエンタテイメント)業界の窮状を説明しようとするも、伝わらないどころか、多くの人に誤解、誤読され、摩擦(炎上)に見舞われました。
国や社会が経済的にも文化的にも豊かに発展していくためには、建設的なコミュニケーションを可能とする基礎のリテラシーの底上げが欠かせません。
平田オリザさんは、国レベルで教育界に影響力のある方ですので、ストリートのリテラシーとコミュニケーションブレイクダウンの『リアル』に接して感じられたこと、得た知見を実際の教育にフィードバックされることがあれば前進に繋がるかもしれません。
2015年、安倍晋三首相は、アメリカ議会の上下両院合同会議で英語で行った演説『希望の同盟へ』の中で、キャロル・キングの名曲「You’ve Got a Friend(君の友だち)」の歌詞を引用しました。
ジェームス・テイラーによるカバーが全米No.1となったキャロル・キングの『Tapestry(つづれおり)』(1971年)収録曲「You've Got A Friend(君の友だち)」は、強く豊かで正義と友情の国、アメリカを比喩するのに相応しい曲かもしれません。
「You've Got A Friend(君の友だち)」は、社会心理学的には、ベトナム戦争への厭戦気分とヒッピームーブメントの退潮等により、社会的なことから個人の内面へと関心がシフトしていった1970年代初頭のアメリカを象徴する曲と解釈されています。
名曲「You've Got A Friend(君の友だち)」に、ドキュメンタリー映画の主題と主張を込めた演出を観たことがあります。
アメリカ人監督による『西側』の視点で、ポル・ポト派のクメール・ルージュ時代のカンボジア国民への圧政と大虐殺を、ロック(ポップ・ミュージック)の切り口から描いた傑作『カンボジアの失われたロックンロール』。
アメリカの支援を受け成立したカンボジアの親米政権『クメール共和国』で病身だった大統領ロン・ノルを補佐したのが元首相のシリク・マタクとロン・ノルの弟のロン・ボレトらでした。
マタクらは、首都プノンペンが内戦相手のクメール・ルージュ(ポル・ポト派)によって陥落させられる直前、アメリカが勧めてきた国外脱出の助言を断り、クメール・ルージュにより処刑されます。
プノンペン陥落の6時間前にアメリカ大使館に届いたというマタクのアメリカへの決別の手紙の一節。
『私が犯した最大の間違いは、あなた方アメリカを友人と信じたことだ。』
マタクらクメール共和国幹部の処刑のナレーションの背景に流れる「You've Got A Friend(君の友だち)」。
死が直前に迫った時、マタクらはアメリカが、中国(とその支援を受けたポル・ポト派)のインドシナ半島、カンボジアへの影響力拡大を容認し、民族派の親米・反共勢力である自分達を見捨てたことを悟ったのです。
映画『グラン・トリノ』に描かれたベトナム戦争でアメリカ側の尖兵となったため現在も続く差別や民族離散の運命に見舞われた『モン族の悲劇』、シリアでアメリカと同盟し地上軍の主力として戦ったもののアメリカに見捨てられる形となったクルド人勢力・・・。アメリカのホームは米大陸であり、他大陸での展開は戦況の不利や本国の世論に押された政策の変更によっては、『友だち』を敵対勢力の中に置き去りにしたまま撤退せざるを得ないこともあるのです。
たたみかけるように映画で流れるカンボジアの女性歌手Poev (Pov) Vannaryによる「You've Got A Friend(君の友だち)」クメール語カバー。
『カンボジアの失われたロックンロール』の演出で「You've Got A Friend(君の友だち)」は、カンボジア、インドシナ半島、そして『アジアにとってのアメリカ』を象徴する重要な意味を担っています。
ポル・ポト派(クメール・ルージュ)時代、当時のカンボジアの人口の約1/4が殺害されたとされます。
ポル・ポト派の農本主義的改革に最もそぐわない西側の価値観に染まった芸術家、音楽家達は真っ先に処刑されました。
「You've Got A Friend(君の友だち)」のクメール語カバーを歌ったPoev Vannaryもまた、クメール・ルージュ時代に消息を絶った歌手の一人です。
それはそうと、2020年の『検察庁法改正案』への賛否の議論を通し、日本の芸能界、芸能人の政治課題や時事問題に関する発言の温度が変わってきた感もあります。
元AKB48、HKT48のメンバーだったアイドルプロデューサーの指原莉乃さん、AKB48グループで長年トップだっただけに地頭の良さとバランス感覚は抜群です。
AKB48姉妹グループ、ここ数年間、海外の姉妹グループの立ち上げをウォッチしてきて感じたことは、次のようなことです。
政治的な姿勢に関しては、独自の理念や主張を声高に掲げることなく、その時の最大勢力、世論の最大公約数的な方向に親和性の高いポジションを採る傾向がある、採る必要があるということ。
AKB48の海外姉妹グループは、1期、2期と期を重ねるごとに、50人を超える大集団となっていきます。
そして、大人数のグループを維持・発展させていくために、国・政府・自治体等やその国を代表するような企業等のプロモーションを担うことを目指すのです。
そのため、基本的にその時々の政権側や世論の最大公約数に親しい傾向のポジションを採る必要がある企業活動・商業活動なのです。
ギター一本で路上でプロテストソングを弾き語りするのであれば、さまざまなしがらみから自由でいられらます。
自分の言いたいことを貫くことを第一とするのであれば、大人数アイドルグループのメンバーという形式を取らず、国や大企業のスポンサー等も一切期待せず、路上で歌うしかないのです。
世界中にそうして『筋を通している』バンドやミュージシャンは数多く存在します。
そもそも、テレビに出られるということは、国や企業の広報・広告の最大公約数の方向に沿っている、少なくとも逆らってはいないということです。
あくまで自分の姿勢を貫こうとすれば、商業主義と相いれないこととなり、テレビ番組に出られる可能性は低いのです。
お茶の間でおなじみの芸能人に対して、商業主義と広告による支配と異なる姿勢を求めることは無理な期待ではないでしょうか。
NHKラジオ第一放送とNHKFMで、ほぼ毎日(月曜日から土曜日まで)、5分ないし10分の短時間、洋楽ポップス名曲をオンエアする『エターナル ナンバーズ2020』。
番組テーマ曲であるキャロル・キングの「You’ve Got a Friend(君の友だち)」を聴くと、映画『カンボジアの失われたロックンロール』中のマタクがアメリカに出した『最後の手紙』を想い出します。
◆新月灯花 選挙の日 MVフル
遂にやるぞ!!無観客配信ライブ!ワンマン中止の無念晴らすぞー!
— 新月灯花 (@shingetutouka) 2020年5月19日
🌸🌸🌈5.24(日) 20:00〜🌈🌸🌸
「新月灯花は1967年型ロックサウンドです。」
💿新音源もこの日発売!!
全国から集合よろしく!
チケット購入・詳細はこちらhttps://t.co/Bd6klxim71 pic.twitter.com/WDp4RllOs0
◆“You’ve Got A Friend” by Carole King – sung by London City Voices choir, campaigning for Women’s Aid
◆Carole King - You've Got a Friend (Audio)
https://www.youtube.com/watch?v=eAR_Ff5A8Rk
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◆新月灯花 「僕たちは戦わない」(AKB48)を路上で歌ってみた
https://www.youtube.com/watch?v=fCMk_5wccfo
◆『カンボジアの失われたロックンロール』予告編|Don't Think I've Forgotten: Cambodia's Lost Rock & Roll - Trailer
https://www.youtube.com/watch?v=Xib6wbBFXo8
◆AKB48がNHK紅白で海外姉妹Gと「恋チュン」を歌う理由はアメリカのアジア撤退後の日本の在り方の模索である
◆モン族の悲劇
www.international-press-syndicate-japan.net