平田オリザさんのコロナ禍とライブエンタテイメント事業の支援に関する発言は、ショービジネス、エンタテイメントビジネス、サブカルチャー全般に関わる問題提起で関心を持ちました。
5月8日の平田オリザさんの長文のご意見表明、正直言うと最初に読んだ時、誤解・誤読して「イラっ」としたのです。それで揶揄するようなブログを書いてしまいました。
二度目に目を通した時、平田オリザさんが何度も言及している『採算分岐点』は、『損益分岐点』のことだと気づきました。そうすると、最初から最後まで文章全体が整合したのです。
以下の #平田オリザ さんの文章を読み直したところ、真っ当なことをおっしゃっているのに自分の理解が足りなかったことがわかりました。揶揄する文章を書き申し訳ありませんでした。https://t.co/MiCmw0TzHE
— pop music fan (@anjammel) 2020年5月10日
書き直しました。#損益分岐点 #演劇 #J・A・シーザー #JAシーザーhttps://t.co/Nv4XQ3l7St
ひと昔前まで、フランス人は『タヌキ』を認知できなかったと言われます。フランスに『タヌキ』がいなかったためです。(現代ではアニメ・マンガなどを通じて知られ『タヌキ』は通じるらしい。)
犬のようでラクーンのようで、しかしどうも犬でもラクーンでもないワイルドな野獣。
なので、フランス人に日本昔話の『かちかち山』をコミュケーションするためには、前提として、話す側と聞く側で、『タヌキ』という概念(コンセプト)について理解を共有しなければなりません。
でないと、「『タヌキ』って何だ?」と言う箇所で話の本筋が分断され、コミュニケーション・ブレイクダウンしてしまうからです。
平田オリザさんの5月8日の文章、ずばり、読者との間で『損益分岐点』や『固定費』や『稼働率』等の概念(コンセプト)が共有されていないと、全く話が通じないだろうと強く感じました。
『損益分岐点』(『損益分岐点売上高』、『損益分岐点分析』)の考え方や分析(計算)の体系で読むと、「なるほど、問題提起としての現状や予測はその通りでしょう。」「(それをもとにした)提案は、検討のたたき台としてありですね。」と肯定的に受け止めることができました。
しかし、一度目に文に接した時は、『損益分岐点』という概念・ツールを用いずに読んだため、「何を言っているんだ」とイラっとしてしまったのです。
テレビで放送されたという『海外工場に発注した製品が販路が休業したため窮地に陥っているメーカー』の例。
実は、これも『内外作決定』という概念(コンセプト)を持っているかどうかで全く解釈が違ってしまう例です。
そしてこれもまた、『内外作決定』という概念(コンセプト)を有している人とそうでない人との会話がコミュニケーション・ブレイクダウンしている例が見られます。
『損益分岐点』という概念・体系で平田オリザさんの5月8日の文章読むと、実は平田オリザさんは、「製造業を下に見ている」、あるいは「軽視している」発言は全くしていなくて、「公的金融機関の融資の仕組みを説明しようとしている」ということがわかりました。
(以前「製造業を下に見る」発言があったと指摘があるかもしれませんが、ここでは、対象をあくまで5月8日の文章のみに絞った解析しています。)
この件が、コミュニケーション・ブレイクダウンだとすると、結構根が深いというか、難しい問題が浮かび上がってきてしまいます。
『コミュニケーション教育』からの切り口というのは、一種のルサンチマンの面もあるように見えます。
歴史的に、変動期に『下克上』が仕掛けられる、起きるのは通例だからでしょう。
ライブエンタテイメント事業の『支援策』について触れるべきですが、そこまでいきませんが、その端緒を。
学校や高齢者介護施設は、民間法人による設立であっても、公的な資金が、助成や融資の形で入っています。そして、経営危機が表面化した場合でも、市場競争に任せて淘汰させるということはしません。利用者保護のため、行政が介入して経営余力のある法人に吸収合併させるなどして解決します。
設立・運営が民間によるものであっても、公的なインフラであるとして自由競争による撤退を認めず、利用者保護のため規制や保護をする業種というのがあるわけです。
民間の設立の「『劇場』というハコも、市営ホールと同様、文化を支える社会インフラであり、経営危機を何と支援できませんか」というのは(採用されるかどうかは別として)要求や提案としてはあっても良いのではないでしょうか。
日本全国には、公営(国営、都道府県立、市立)のホールはたくさんあります。
これらのホールで予定されていた公演は、3月は多くの、4月は殆ど全てが中止になっています。
その間も雇用されている公務員や第三セクターの職員の給料、あるいは(運営が民間委託なら)指定管理者への委託料は、支払われ続けてます。
つまり、公営事業である文化事業のホールは収入がほぼ絶たれ、固定費だけが発生し続けている状況です。
しかし、今のところ、国や都道府県、市町村の公営ホールを、直ちに全て潰し、赤字として流出していくだけの巨額の税金を減らしてください、私たちに配ってください、というまでの世論は起きていません。
もちろん、これから起きる可能性はあるかもしれません。
今のところ、不要不急の文化施設であっても、インフラとして存続が支持されている例ではないでしょうか。
社会の分断、コミュニケーション・ブレイクダウンの問題は根が深く、一刀両断に解決策を示せるようなことではないのでしょう。
そして、歴史的に、「あいつをやっつけろ!」というわかりやすい解決策は、しばしば最も危険で、庶民を塗炭の苦しみに喘がせる道であったことも繰り返されてきたことです
◆Garland Jeffreys - R. O. C. K. (TV "Fridays")