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【路地裏の】 あいみょん 「生きていたんだよな」 、そして浜田省吾さん 【J.GIRL】

シンガーソングライターのあいみょんさん(以下敬称は略すかもしれません)が、11月30日、ワーナーミュージック・ジャパン傘下のレーベル「unBORDE」より「生きていたんだよな」をリリースし、メジャーデビューされました。

あいみょんさんは、インディーズ時代から、「貴方解剖純愛歌」が、歌詞の過激さから放送自粛されながらも、口コミ(ネット)で評判が広まり、動画の再生回数が伸びる(12月1日現在で50万7千回超)等、話題を読んでいるシンガーソングライターです。

あいみょんさんの「生きていたんだよな」を聴くと、メジャーデビューしても、聴いた人に衝撃を与えるその先鋭的な表現には、全く妥協は見られません。

あいみょんさん、各インタビューで、影響を受けたアーティストを1人だけあげる時には、真っ先に浜田省吾さんの名前をあげられています。

そこで、ソロデビューから2000年代までの浜田省吾さんの曲はたぶんほとんど聞いているはずの私がコメントしてみますよ。

実は、最近、浜田省吾さんと町支寛二さん達が浜田省吾さん(以下、文中で時々気分によって「浜省」と略すかもしれません)のソロデビューの前に組んでいたロックバンド「愛奴」の「二人の夏」を初めて聞いて、「愛奴」の音楽を聞いて初めて浜省のポップスセンスがわかると今頃になって知り愕然としたレベルではありますが。


あいみょんさんの曲では、テーマとその歌詞表現に、ストレートに「死」を扱っています。これは、「生」の終わりに焦点を当てることによって、「生きること」をよりくっきりと描きだす表現のように聴き取れました。

浜田省吾さんの曲で、モチーフや状況として「死」を扱った曲には、代表曲の「J.BOY」、「パーキングメーターに気をつけろ!」、「初秋」等が思いつきました。隠喩的表現で、これは「死」を表しているのかなと感じる曲が他にもありますが、解釈が割れそうな曲はあげないことにします。

浜田省吾さんは作家の村上龍さんと同い年で、サンフランシスコ平和条約が発効した1952年生まれの世代です。

浜田省吾さんも村上龍さんも、日本の敗戦・占領、アメリカ文化・消費社会化、その中で名もなき若者がどう生きていくかについて描いてきました。

浜田省吾さんの初期の曲、「いつかもうすぐ」(原曲は海外曲で日本語詞は浜省のオリジナルです)の歌詞の内容はこんなふうです。将来を約束した恋人がアメリカ兵のお嫁さんとなってしまってアメリカに渡ってしまい、今はアメリカで豊かに平和に暮らしているのを、唇をかみしめ想う日本人の青年(若かりし時のJ.BOY?)の痛切な感情を描いています。若いカップルの別れと男性の心理表現から、敗戦国と戦勝国の関係性、経済・文化差等を表現しています。

パーキングメーターに気をつけろ!」は、浜田省吾さんの代表作の一つであるアルバム「PROMISED LAND ~約束の地」に収録されている曲です。アルバムの3曲目で、一つ前の2曲目がMr.Childrenミスターチルドレン)の桜井和寿さんがBank Bandのプロジェクトでカバーしていた「MY HOMETOWN」です。(オープニングはインスト曲)

アルバム「PROMISED LAND ~約束の地」は、”東西冷戦下の核戦争の危機”がテーマであり、全体として死を予感させる表現箇所は多いです。クライマックスの「僕と彼女と週末に」の前の曲、「凱旋門」は、聞きようによっては、冷戦下での”エノラ・ゲイの帰還” を連想させる曲です。浜省のキャリア中、そして日本の商業ロック史上、最も政治色の強いアルバムで、広島出身の浜田省吾さんがどうしても表現しなくてはならないテーマだったのだと思います。

少し触れましたが、Mr.Childrenミスターチルドレン)の桜井和寿さんが、高校時代に浜田省吾さんと甲斐バンドに熱中し、自宅の部屋で歌唱やパフォーマンスをコピーしていたというのは有名な話です。そして、Mr.Childrenミスターチルドレン)の桜井和寿さんは、カバーした浜省の曲から見ると、浜省のアルバムの中でも「PROMISED LAND ~約束の地」に最も強く影響を受けているのではないでしょうか。ちなみに、先月(11月21日)、鎌倉芸術館での「Mr.Children Hall Tour 2016 虹」ファイナル公演では、浜田省吾さんの「悲しみは雪のように」をカバーして演奏されたそうです。たぶん、全部好きなんでしょう。

「初秋」、オリジナル収録アルバムは、「その永遠の一秒に」で、セルフカバーアルバムとしてとても人気の高い「初秋 Early Autumn」に再録音が収録されています。アルバム「初秋 Early Autumn」はとても人気が高い企画アルバムです。

2曲目「PAIN」と3曲目「悲しみの岸辺」は、数ある浜田省吾さんの曲の中でも好きな曲で、個人的には、「初秋 Early Autumn」版より、オリジナルアルバムのアレンジの方が好みです。私にとっては、アルバム「初秋 Early Autumn」は、中盤、後半とぐっと沁みてくる名盤です。

アルバム全体のトーンはちょっとというか、結構暗いです(一曲目からして)。人生の秋を表現したアルバムなので必然的にこうなるのでしょう。なので、失恋とか離婚とかの悲しいライフイベントがあった時に聞くかどうかは慎重に判断したほうがよいかもしれません。


あいみょんさんは、インタビューを受けている媒体によっては、「高校時代から浜田省吾さんを聞いた」とも語られているのですが、これは、自らソングライティングするにあたって、改めて意識して技術や構造を習得するため、幼少の時から聞いていた浜田省吾さんを聞き直したということだと推測しています。

ローリング・ストーン日本版のインタビューでは、元バンドマンでPAの仕事をされているお父さんの影響で、「浜田省吾さん、BOOWY、平井 堅さん、スピッツビートルズマイケル・ジャクソンが家で流れていた。」とのことですから。

あいみょんさんは、尾崎豊さんの名前もあげています。浜田省吾さん、尾崎豊さんとくれば、同じく須藤晃さんがプロデュースした女性シンガーソングライターのカリスマである橘いずみ榊いずみ)さん(miwaさんとも共演していましたね)の名前が出てくるのが自然なような気がします。

家庭の音楽環境から、生まれた時からロック系の音楽を聞いて育ったあいみょんさん。ところが、各種インタビューを読むと、女性歌手や女性シンガーソングライターの名前が出てきません。ほとんど男性ボーカル曲中心に流れていた音楽環境で育ったように読めます。

あまり、あるいはほとんど、女性シンガーソングライター、女性歌手の影響を受けていない、ここのところはあいみょんさんの現在の音楽性が出来上がるうえで、結構、肝になっている気がします。


ところで、前回のブログで取り上げたジョン・メレンキャンプの「ピンク・ハウス」。32年前のヒット曲のコメント欄が2016年の今年にぎわっているのは、米大統領選挙の影響が大きいはずです。昔から、アメリカ大統領選挙に名乗りをあげた陣営が使用したい曲として真っ先にあがる曲が、ブルース・スプリングスティーンの「ボーン・イン・ザ・U.S.A.」とジョン・メレンキャンプの「ピンク・ハウス」でした。

そして、ジョン・メレンキャンプは、現在も出身地であるインディアナ州に居住しています。インディアナ州は、ドナルド・トランプさん(次期・第45代大統領)の票田と報道されていたラストベルト(Rust Belt)地帯です。きっと、ジョン・メレンキャンプのMV「ピンク・ハウス」の映像が、”荒廃したラストベルト(Rust Belt)とアメリカの復興”という選挙戦の鍵のコンセプトをストレートに連想させるものであるため、発表後32年たった今年、「ピンク・ハウス」のコメント欄が盛り上がっていたのかもしれません。

「合衆国は米大陸以外のことに干渉しない、他国の米大陸への干渉は許さない」という趣旨が、ジョージ・ワシントン(初代大統領)やジェームズ・モンロー(第5代大統領)が唱えた「孤立主義」「モンロー主義」だと思います。「モンロー主義」は、伝統的に合衆国の外交の有力な理念の一つであり、国際情勢、財政、経済状況、さまざまなパワーバランスによっては、振り戻しが起きて、再び有力な方針となる可能性はあるはずです。

これからは、ドナルド・トランプさん(次期・第45代大統領)が、再び孤立主義に回帰し、世界中に広げた扇の羽を閉じるように、数多くの表現者が作品中で表現した「FENCEの向こうのアメリカ」が、北米大陸へと還っていくことがあるいはあるのかもしれません。

 

そんな2016年の年の瀬に、名もなきJ.BOY達がFENCEの向こうを想って唇をかんだ曲を聴いて育ったあいみょんさんがデビューするのは・・・・・、まぁ、単なる偶然でしょう。

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あいみょん「生きていたんだよな」
この曲を聴いて、真っ先に連想したのは、井上陽水さんの代表曲「傘がない」です。「傘がない」は、テレビの自殺の報道の出だしの歌詞で始まり、若者の心理内面描写へと展開していく曲でした。
https://www.youtube.com/watch?v=EEMwA8KZAqg

あいみょん「どうせ死ぬなら」
https://www.youtube.com/watch?v=Qetpdg4C1IY

浜田省吾 「J.Boy (ON THE ROAD 2011 "The Last Weekend")」
戦後40年目の1986年に発売された2枚組アルバム「J.BOY」のタイトル曲。アルバム「J.BOY」30周年記念盤は、2016年11月21日付オリコン週間アルバムランキング2位(初登場)。1986年盤は発売当時1位を記録しました。1999年リアレンジ版再発。あいみょんさんがお父さんのCDキャビネットから借りて聞かれたのは、「86年版」か「99年版」のどちらかでしょう。
https://www.youtube.com/watch?v=7dUfaCD5Y0A


(2016.12.19追記)
12月18日に、影響力の大きいAKBグループ(HKT48)の指原莉乃さん(HKT48)および元AKB48メンバーの篠田麻里子さんが、相次いであいみょんを絶賛するツイートを発信。また、TVドラマ「吉祥寺だけが住みたい街ですか?」のテーマ曲「生きていたんだよな」に続き、2017年2月公開予定の映画「恋愛奇譚集」の主題歌「漂白」(書下ろし曲)をあいみょんさんが歌われるなど、タイアップも続いており、あいみょんさんのブレイクが期待されています。 

 

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◇芸能界の浜省(浜田省吾)チルドレンについて

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◇『あいみょんの〈生きていたんだよな〉は、すごい。女性シンガーの歌でピンと来ることは実はあまりないんだが、自分と同じDNAを感じてしまった。  俺がデビューしたくらいの時代だったら、この歌は放送禁止になるか、自主規制でリリースできなかったかもしれないな。』(小山卓治

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◇HR/HM(ハードロック/ヘヴィメタル)専門誌の「BURRN!」がロック/ポップス界からの米大統領選挙に関する現地情報を報道していました。

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