Suchmos(サチモス)が音作りで最も影響を受けたと公言するアーティスト/アルバムがドナルド・フェイゲン(元スティーリー・ダン)の『The Nightfly』(ナイトフライ)。
Suchmosイチオシの名盤を紹介するコーナーでは、ドナルド・フェイゲンの「The Nightfly」をピックアップしました。
スティーリー・ダンの元メンバー、ドナルド・フェイゲンが解散後、1982年にリリースした初のソロアルバムであり、当時としては珍しいデジタルレコーディングが採用された1枚でもあります。スタジオのマスタリングエンジニアやライブのPAもこのアルバムをかけて、その音を基準にしてスピーカーの調整をすることがあるのだとか。
同アルバムは、TAIKINGとHSUが一緒に聴いてハマっていたという思い出の1枚でもあり、“音楽オタク必聴の一枚”だと言います。Suchmosの曲作りにも影響を与えており、TAIKINGとHSUが提案する「音の引き算」(バンドサウンドのバランス)は、このアルバムのサウンドを参考にしているのだとか。「Suchmosが好きで聴いてくれてる人は、かなり腑に落ちるアルバム」(TAIKING)ということで気になるところです。
スティーリー・ダンとドナルド・フェイゲンのレコードは、とにかく”音が良い”ことで有名で、オーディオシステムのチェック等でも『基準』的に使用されます。上記のSuchmosのインタビューで彼らがスタジオやライブのPAシステムのチェックにドナルド・フェイゲンの『The Nightfly』をかけることを明しています。
もちろん、Suchmos(サチモス)がスティーリー・ダン、ドナルド・フェイゲンの音楽自体からも大きな影響を受けていることは明らかです。
最近の若手では福岡出身、チルなサウンドで若者に人気のバンドyonawo。King Gnu(キング・ヌー)の次に来るといいですね!
ファッションセンスも独特ですが、彼らのレコード『ijo』のアートディレクションが、スティーリー・ダンの名盤『Aja』(エイジャ)をオマージュしていて、「あぁ、このバンドは、スティーリー・ダンをリスペクトしているんだな」と聴く前から安心安全保証1年間付デス!
◆yonawo『ijo』 ロゴデザインがスティーリー・ダン『Aja』オマージュ!
個人的には、スティーリー・ダンの『Aja』で「♪ペーーグッ♪」とコーラスを入れていたマイケル・マクドナルド(『Aja』の時点ではスティーリー・ダンを脱退しドゥービー・ブラザーズに参加しており、ゲストでレコーディングに参加していました)の大衆性の高いブルーアイドソウルの方が、スティーリー・ダン、ドナルド・フェイゲンの音楽より好みなんですけどね。
都会的であると同時に親しみやすい大衆性、かすかな泥臭さをも併せ持つマイケル・マクドナルドのサウンドは、歌謡曲の巨匠、筒美京平さんらが採り入れたことにより、1970年代末から1980年代の日本の歌謡曲、アイドルポップス、シティポップ、ニューミュージック等の主流サウンドとなりました。世界で一番マイケル・マクドナルドの影響を受けた大衆音楽は日本の歌謡曲でしょう。
サカナクションが「忘れられないの」でパロッた1980年代の日本のシティポップの雄、杉山清貴とオメガトライブは、元々マイケル・マクドナルドが主導権を握ってグラミー賞を受賞したドゥービー・ブラザーズのコピバン出身。
杉山清貴とオメガトライブは、シティポップを代表する作曲家、林哲司さんが、マイケル・マクドナルドのサウンドを日本の歌謡曲に落とし込む=シティポップというフォーマットを創造するための商業実験の意味をも担っていたと解釈しています。
そういうわけで、BAND-MAID「endless Story」 です。
2コーラス目は、裏拍にインパクトがくる縦横無尽なベースラインとドラミングのアンサンブルとか相変わらずユニークなサウンドですごいなこれ。
よく、ジャズに詳しい方から、「BAND-MAIDは、基本となるテーマ(メロディー)を楽器隊が縦横無尽に展開していくジャズだ。」と指摘されることがありますが、BAND-MAIDの作曲・編曲の要の遠乃歌波さんは、ラリー・カールトンをリスペクトするジャズ畑の音楽家であり、オリジナリティーのあるロックを作ろうとしてプログレになっていくのは納得できます。
そういえば、プログレシッブロック、ポストロック、マスロック、邦ロックといえば、BAND-MAIDのドラマー廣瀬茜さんがリスペクトする凛として時雨なわけですけれど、凛として時雨のベーシスト345さんが表紙と巻頭特集のベースマガジンには、BAND-MAIDのMISAさんの特集が載っていましたね。
【メディア情報】
— 凛として時雨 (@sigure_official) February 13, 2018
345が表紙の「ベース・マガジン」も公開!
◆雑誌
2/19(月)発売「ベース・マガジン」※345表紙&インタビュー
◆ラジオ
2/21(水) 文化放送「レコメン!」(22:00~25:00)※ピエール中野出演 pic.twitter.com/RnaiSkjhda
もの凄くお世話になっている阿久津大先生様から「ドラム叩いてる姿がアシュラマンみたい」と言われました☆(誉め言葉だと信じています。)
— BAND-MAID AKANE (@achi_bandmaid) August 23, 2014
つまり、阿久津さんの目には私はこのように映っているという事ですかね。
ピエール廣瀬です。 pic.twitter.com/GYfBqeEUcq
◆Rush(ラッシュ) 「Red Barchetta」 (Live (1980/Canada))
バカテクで知られるカナダを代表するハードロック、プログレシッブロックの代表バンド。初期はカナダのハードロック/ヘヴィメタルを代表するパワートリオ、トライアンフと同様レッド・ツェッペリンの影響を感じさせましたが、1980年代以降はパンク・ニューウェイブの雄ポリスの影響も消化し、独特のサウンドを編み出しています。
https://www.youtube.com/watch?v=PjjNvjURS-s
◆「Hard Times」Boz Scaggs(Cover) OB@Marz 2014/06/29
”世界で人気”のジャパニーズシティポップ、その本質を一発で知るには竹内まりやさんの「Plastic Love」を聴くだけではなく、吉田まゆみ先生が漫画『アイドルを探せ』で描いた世界観を探求することが重要デス!
根拠は、吉田まゆみ先生の漫画『アイドルを探せ』には、杉山清貴さんをイメージしたキャラクターが登場し、映画化された際には杉山清貴さんご本人が出演!そして、映画『アイドルを探せ』主演は、シティポップブームで注目されているロックバンド、ラ・ムーのボーカル菊池桃子さん!!
海外の日本の音楽ファンの方で、漫画『アイドルを探せ』まで掘られている方は本格的だと思います!レコード・コレクターズ増刊『CITYPOP(シティ・ポップ 1973-2019)』(ミュージックマガジン社) の”堀り”が甘い点は、漫画『アイドルを探せ』や『ポパイ』・『ホットドッグ・プレス』等に触れていないところでしょうか。
ホンモノのシティポップ・AORが、30年の時をタイムカプセルに閉じ込められ突然開封された感の衝撃!これが2010年代とはとても思えないルックス、ファッション、佇まい、出音、バンドアンサンブル、全てが1980年代!ジェフ・ポーカロより重く引きずるソウルフルなドラムもシティポップ・AORを主張しています。
1980年代のミッション系大学の軽音サークルのメンバーが卒業記念ライブでタイムカプセルに閉じ込められ30年後に開封、演奏を再開したらこうなるんじゃないかという位の衝撃!ちなみに竹内まりやさんは慶応の軽音出身です。
https://www.youtube.com/watch?v=gMzLjVDHbG4
これ、圧縮かかってないCDオリジナル音源を大きな音で、ベース、ドラムス、ギター、各楽器のニュアンスと関連具合を追いながら聴いたら凄そうですね。ご本人たちもスタジアムロックを目指して制作したそうです。
https://www.youtube.com/watch?v=5_S4s8jZQ-A
◆Anthrax(アンスラックス)「Carry On Wayward Son」 (Kansas カバー)
スラッシュメタル4天王の一角、アンスラックスによるボストン、ジャーニーらと並ぶ産業ロック・アメリカンプログレッシブハードロックの雄、カンサスのスタンダードナンバーの完全コピー。アンスラックスのスコット・イアンは、2015年のゴールデンゴッドアワーズの壇上、メタル界隈はもちろんロック界全般の鉄板パーティージョークな「アンヴィル(Anvil)かと思ったぜ!」で「ハーイ、ウィー・アー・ベビーメタル!」なBABYMETALの3人を迎撃しました。スタジアムメタル、スタジアムロックってこんな感じデス!
日本のバンドでこの系統の音が圧倒的に得意なのはフォーク・ニューミュージック畑出身のオフコースとTHE ALFEE。 日本のハードロックのヒット曲としては、オフコースによる(ボストンが開発した)アメリカンプログレッシブハードロック調のナンバー「愛を止めないで」(1979年1月)や、THE ALFEEがアメリカのスタジアムロックのジャーニーを下敷きにした風の「メリーアン」(1983年6月)のほうが、ジャパメタのパイオニア、アースシェイカーの「MORE」(1984年6月)よりも早いです。
後のジャパメタの大物バンド、VOW WOWとLOUDNESSの前身バンドのスマッシュヒットであるBOW WOWの「欲しいのはお前だけ」(1979年9月)やレイジ―(LAZY)の「赤頭巾ちゃん御用心」(1978年2月)は、いずれも楽曲としてはBCR(ベイシティローラーズ)を意識したバブルガムポップ/パワーポップであり、ハードロック/ヘヴィメタルではありません。
まぁエリック・カルメンのラズベリースフリークである自分の好みはヘヴィメタルよりバブルガムポップの方なんですけど。
https://www.youtube.com/watch?v=hVD5iqAcIbQ
◆OUTRAGE「御意見無用」
名古屋の老舗スラッシュメタルバンドによる井上陽水さんや浜省(浜田省吾さん)のアレンジャー、プロデューサーとしてもおなじみの星勝さんが在籍した伝説の日本のロックのパイオニア、モップスの代表曲のカバー。
ブルー・チアーがアメリカのヘヴィメタルのルーツだとする説を採るならば、日本のメタルのルーツはモップスになるはず。
https://www.youtube.com/watch?v=iiqZknUn7to
◆Styx(スティクス)「Babe」 (Official Video)
ハードロックはAORでもあります。 この曲にはマイケル・マクドナルドの盟友にしてAORの雄、ディヴィッド・パックが在籍したアメリカンプログレッシブロックバンド(初期はアメリカのYESの路線でした)アンブロージアの大ヒット曲「Biggest Part Of Me」に通じるセンスを感じます。リズムセクションを加え5人編成のアメリカンプログレッシブハードロックバンドとなったオフコースは、楽器編成がStyxと共通だったのでたまに引き合いに出されました。
https://www.youtube.com/watch?v=yaVyQS1T7TY
◆Styx「Come Sail Away」 (Official Video)
スティクス良いですね!こういうプログレッシブでハードでポップなセンスを出せるバンドというと往年の日本のロックシーンではオフコースとゴダイゴ(Godiego)が存在しました。
https://www.youtube.com/watch?v=e5MAg_yWsq8
◆Boston(ボストン)「A Man I'll Never Be 」(Live)
日本のハードロック、プログレッシブロック、スタジアムメタル、産業ロックのパイオニア、オフコース関連では何といってもこの一曲! トム・シュルツ率いるアメリカンプログレッシブハードロックの第一人者ボストン。そしてもちろん自分もヤッさん(鈴木康博さん)脱退後のオフコースはオフコースと認知できません。
https://www.youtube.com/watch?v=gZxP3bMn0as
◆The Blue Scream - Party Naughty Naughty (Live '88 11.2 @WildSideTokyo)
フロントマンの後藤“Goty”高文さんがオフコース推しの日本のLAメタルバンド、The Blue Scream!
https://www.youtube.com/watch?v=4pnDlAq9az4
こうして往年のヒット曲、人気曲を聴いてきて感じたことは・・・。
2019年の日本には、SHE'Sとかマカロニえんぴつとかヒゲダン(Official髭男dism)とか、洋楽、例えば1980年代のアメリカのヒットチャートを飾ったようなポップロック、ハードロック、ポップスも養分にして優れた邦ロックを作り、10代から20代前半位の世代(もちろん邦ロックのターゲットである女子中学生を含む)に大人気のロックバンドがたくさんあるわけです。
BAND-MAIDが、この強豪ひしめく邦ロックのヒットメーカーの指定席にどうやって割り込んでいくか?
BAND-MAIDは、今までディストーションの効いたエレキギターやマシンガンライクなツインペダル等のラウドなバンドアンサンブル・サウンドを経てきて、硬軟両刀縦横無尽にこなせるのは強みでしょう。
現代の若者は聴きなれないせいもあってか、エレキギターの音を騒音、雑音と認知するという説もあるようです。
サマースクールの合宿で『麦飯』を出されたら、「ゴミが入っている」と泣いた子どもがいたそうですが、今時の若者にエレキギターの音が雑音・騒音なら、クリーントーンを活かした曲もどんどん出すべきでしょう。
硬軟のサウンドを自在にこなせる作・編曲力、歌唱力、バンドアンサンブル・・・、BAND-MAIDなら2010年代末のオフコースのポジジョンを目指せるかも?。
BAND-MAIDの演奏力をもってすれば、広告代理店を巻き込んだタイアップ曲で、匿名・覆面の女性ボーカルロックバンドとして、オフコースのハードロックナンバーをカバーしたら世代を問わず話題となってウケそうな気がします。
英米のロックバンドの英語詞曲は発音の習得だけで週一ペースのレッスンでも何カ月もかかるので現実的ではないでしょう。ただし日本語詞を付ければOK。
若手で、オフコースの「一億の夜を越えて」のようなオールドスクールなハードロック、スタジアムメタル、プログレハード、威風堂々産業ロックのイメージと一番マッチするロックバンドはBAND-MAIDのように思います。
てやんでぇ、麦飯や玄米が怖くちゃご飯なんて食べらねぇんだよ!
日本の商業ハードロックならオフコース!
ももクロ(ももいろクローバーZ)は、KISSの演奏をバックに、オフコースの「一億の夜を超えて」や「のがすなチャンスを」をカバーしてくれたら最高だったんですけどね。
ゴダイゴ(Godiego)は・・・、イメージとして、英米系外国人かハーフのメンバーがいて英語で歌わないとゴダイゴは難しそうですね。
それでやっぱりさっきからヒゲダン(Official髭男dism)の「宿命」がかかっているんですが、トップに躍り出る理由が良くわかります。邦ロックとして良くできているのはもちろん、洋楽半世紀以上聴いてきた方も納得させる実力を発揮していますね。