英ロックメディア『Classic Rock』による「史上最高のAORアルバムTOP50」 ランキング発表が、日本の一部の音楽ファン、AORファンの間で波紋(?)を呼んでいるのかどうか知らないのですがいかがおすごしでしょうか?
10年位前でしょうか、北欧では日本ではハードロック(アメリカン・プログレッシヴ・ハードロック)のジャンルとして認知されているアメリカのボストンがAORにカテゴライズされていると知りました。
海外、ヨーロッパでは、日本におけるAORとその示す音楽が違う(ずれている)らしいということは何となく認知していました。
ポピュラー音楽史上、アメリカのボストンに大きな影響を受けてサウンドを作っていったオフコースは、日本の最高のAORバンドの一つです。したがって、根本が違うわけではありません。向いている方向は違うかもしれませんが。
日本の音楽雑誌『ミュージック・マガジン』のAOR・ヨットロックオールタイムランキングの第一位は、ネッド・ドヒニー『スウィート・キャンディ』です。
一方、イギリスの『Classic Rock』のAORオールタイムランキングの一位は、ジャーニーの『エスケイプ』です。
両誌のランキングを比較するとはっきりわかることがあります。
日本では、白人が作る黒人音楽(ソウル、R&B、ファンク)を消化して作られた音楽(=ブルーアイドソウル)をAORと呼び、海外(英米)では、白人による白人のための音楽をAORと呼ぶ。
この点に行きつきます。
インターネット、YouTube、Spotifyの時代になって、歴史、ジャンルを問わず音楽を聴く時代と違って、1970年代のラジオは白人向けのラジオ局(番組)、黒人向けのラジオ局(番組)ははっきり分かれていました。
上物(歌)がスウィートなポップスだったりアイドル歌謡だったりするのに、角松敏生さん系のサウンドに見られるように、イントロからスラップべースがバチバチ鳴って楽曲を通して中低音をリードする極めて特異な音楽性。
海外(英米)系のポップスにこのような特徴を持つ音楽はありません。海外の人から見れば、VaporwaveやFuture Funkでサンプリングされるアイドル歌謡ポップスもニューミュージックも歌謡曲も、『ジャパニーズファンク』、『シティポップ』なのです。
『Classic Rock』1位のジャーニーと『ミュージック・マガジン』1位のネッド・ドヒニーを比べると非常に明確に見えてくることがあります。
最盛期のジャーニーのボーカリスト、スティーヴ・ペリーは、サム・クックに影響を受けた白人リズム&ブルースシンガーで、ソロではR&B志向を明確に出しています。
しかし、ジャーニーというロックバンドの音楽ではあくまで白人向けのロックに徹し、R&Bを意識しなくても楽しめるものになっています。
一方のネッド・ドヒニーは、代表曲の「What Cha' Gonna Do for Me」はソウルシンガー、チャカ・カーンの代表曲でもあります。
そして、スコットランド出身の白人最高のファンクバンド、AWB(アヴェレージ・ホワイト・バンド)のメンバー達との共演も多い。
2018年には元アヴェレージ・ホワイト・バンド、元ポール・マッカートニーのバックバンドのバンマスで黒人音楽系カッティングギターの鬼、ヘイミッシュ・スチュワートとツートップで来日しています。
1970年代、1980年代のアメリカのラジオ局、レコード店の棚、つまり『流通』を考えた場合、ネッド・ドヒニーの音楽は、どのラジオ局で放送し、レコード店のどの棚に置いたらよいか全くわからない音楽だったのではないでしょうか。
だからアメリカでは全く注目されなかった。
しかし、上述のような状況、環境の縛りから無縁の日本では、今日まで続くシティポップブームのルーツとなるほど爆発的に支持された。
そんな背景が、『Classic Rock』と『ミュージック・マガジン』のランキングから見えてくる気がします。
◆FEVER - PASSWORD「Official MV」
FEVER - PASSWORD「Official MV」 - YouTube
◆mamakiss - ดาวเคราะห์แคระ (Dwarf Planet) [Official MV]
山下達郎さんや角松敏生さんを連想させるベースのイントロと正反対の確信的というより革新的にダサい映像が2018年の音楽であることを語っている?
mamakiss - ดาวเคราะห์แคระ (Dwarf Planet) [Official MV] - YouTube
◆Dept - แล้วเธอจะรู้บ้างไหม? | ForWhat? (Official Video)
AOR・シティポップらしい見た目の爽やかな若者達!
もしかして彼らが、往年の杉山清貴&オメガトライブ(マイケル・マクドナルドの熱烈なフォロワーでもあります)からヘアスタイルをインスパイアされていたら本物です!?ネッド・ドヒニーのファンにも是非。
Dept - แล้วเธอจะรู้บ้างไหม? | ForWhat? (Official Video) - YouTube
◆markmywords. - ก็ไม่เท่าไหร่ (Oshihen)
タイトルは『推し変』。最近聴いた中で一番不思議な音楽がこれ。日本語で『ガチ恋口上』が入ります。
『ガチ恋口上』とはヲタが現場でコールする次のような口上です。
『言いたいことがあるんだよ!
やっぱり君はかわいいよ!
好き好き大好き!やっぱ好き!
やっと見つけたお姫様!
おれが生まれてきた理由
それは君に出会うため!
おれと一緒に人生歩もう!
世界で一番愛してる!
ア・イ・シ・テ・ル!!』
このバンドは、FEVERの「Ghost World」のバンドカバーも発表しています。
markmywords. - ก็ไม่เท่าไหร่ (Oshihen) - YouTube
◆Steve Perry - Foolish Heart
全盛期のジャーニーのボーカリスト、スティーヴ・ペリーは実は白人リズム&ブルース歌手。
Steve Perry - Foolish Heart - YouTube
◆Paul Rodgers - Born Under A Bad Sign
『Classic Rock』トップ10にランク入りしているマイケル・ボルトン(アメリカの小野正利さん?)が一番はっきりわかるんですが、ほとんどのハードロック歌手とは、実は白人リズム&ブルース歌手です。
ただ、黒人音楽と白人音楽では、流通とファン層が違います。ロック界の大物達のキャリアを見ると、そこらへんのバランスに長年取り組んできているかわかります。
今年、クイーンのボーカリストとして来日するのはポール・ロジャースではなく、アダム・ランバート。
Paul Rodgers - Born Under A Bad Sign - YouTube
◆FEVER - Start Again @Cat Foodival#4
FEVER - Start Again @Cat Foodival#4 - YouTube
PHOTOリンク先
<関連エントリー>