特別お題「わたしの推し」
2021年のベスト音源をたくさんの音楽ファンが発表されています。
今年は全方位にポップミュージックをチェックしていたわけではなく、特段ベストを発表しませんが、印象に残ったのは年末にかけて発表されたオールドスクールの大御所の音源が素晴らしかったことです。
ディープ・パープルのカバーアルバム『Turning To Crime』、ロバート・プラント & アリソン・クラウスの『Raise The Roof』は素晴らしかった。またリッチー・ブラックモアとキャンディス・ナイトのブラックモアズナイトが年末にかけてクリスマスにちなみ発表した動画も素晴らしかった。
これらの音源は、1970年代初頭、ハードロック、ヘヴィメタル音楽の基礎を打ちてたてたディープ・パープルとレッド・ツェッペリンの元メンバーや、今も生き残っているバンド本体そのものなわけです。
しかし、2021年のコンテンポラリーなポップミュージックとして、テイラー・スウィフトやオリヴィア・ロドリゴを聴いている10代の若者が聴いても違和感なく聴けるのではないでしょうか。(世代が違いますがオリヴィア・ロドリゴはテイラー・スウィフトを「お母さん」と呼んでリスペクトしてます。)
2021年に発表されたレッド・ツェッペリンとディープ・パープルの元メンバーやバンド本体が発表した音源、1970年代の全盛期の音を一切聴かずに、今年の音源だけを切り取って聴いても第一級のポップ・ミュージックとして通用するクオリティを実現しています。さすが超一流のミュージシャンは歳を取っても本気出すと違う、凡百のバンドとは全く違うものだと驚きました。
還暦を過ぎた年代の文化人、芸能人、大学教授、政治家、経営者等の方で、10代、20代の頃、ディープ・パープルを熱心に聴いたという元ファンには、再結成後のバンドのキャリアをトレースしていない人は珍しくありません。というかそれが普通でしょう。
おそらく若い時にディープ・パープルのファンだった「年配」のロックファンの中には、「現代」ディープ・パープルのギタリストを27年以上務めているスティーヴ・モーズの名前すら知らない人も珍しくないかもしれません。オールドファンにとってはディープ・パープルとは永遠にリッチー・ブラックモアとジョン・ロードなのです。
夭折しオールドロックファンの想い出の中で若かりし姿のまま生き続けている天才、ディープ・パープルの2代目ギタリスト、トミー・ボーリン。
元オールマン・ブラザーズ・バンドのギタリスト、ウォーレン・ヘインズはトミー・ボーリンのトリビュートアルバムにステイーヴ・モーズらと一緒に名を連ねています。そのウォーレン・ヘインズがリーダーを務めるバンドがガヴァメント・ミュール。
ガヴァメント・ミュールが発表したブルースアルバム『Heavy Load Blues』が滅茶苦茶カッコ良かった!
白人ブルースに求める要素が全てつまった最強最高の音楽です!この音楽こそジョニー・ウィンターやステイーヴィー・レイ・ヴォ―ンが演奏した白人ブルース!
そういうわけで、BAND-MAIDが2021年クリスマス企画として開催したオンラインアコースティックお給仕『BAND-MAID ONLINE ACOUSTIC』。
印象を一言でいうと、
彩姫さんのボーカルをフューチャーしたBAND-MAID流R&B。
往年のハードロックバンドのボーカルに明らかなように、ハードロック歌手とは白人のリズム&ブルース歌手なのです。サム・クックやオーティス・レディングをカバーしていた白人青年がバンドにボーカルとして加入しハードロックバンドになった。白人でハードロック歌手に大きな影響を与えたエルヴィス・プレスリーも、黒人的な歌い方と言われていました。
なので『BAND-MAID ONLINE ACOUSTIC』は、バンメ流ハードロックだというのももちろん正しいのです。
なぜ、あえて「BAND-MAID流R&B」と呼んだかというと、結成後8年を経て、創造性のリフレッシュのため、ボーカル彩姫さん、または彩姫さんと作編曲の要の歌波さんのデュオ形式でソロ音源を制作するのではないかと予想していたのです。
そしてその音楽性はおそらくR&Bになるだろうと予想していました。
その兆しが「about Us」(2021年)。
しかし、BAND-MAIDは、ボーカル彩姫さんのソロ作品、または彩姫さんと歌波さんのユニットとして制作し出してくるだろうと予想していたBAND-MAID流R&Bを、オンラインアコースティックお給仕による既存発表曲のリアレンジというスタイルで出してきたのです。
イアン・ギランが1969年にディープ・パープルに加入しハードロックをシャウトしてから、再結成したイアン・ギラン・アンド・ザ・ジャヴェリンズでリズム&ブルースやロックンロールのレコードを出すまで50年かかっている。
ディープ・パープル本体としてリズム&ブルースやロックンロールを歌うまでにはさらに3年かっている。
BAND-MAIDがルーツとしてのR&Bに全力で取り組むスピードはなかなかに速いと言っていいのではないでしょうか。