【問題1】邦ロックを中心に扱う音楽メディア(WEBZINE)「地下室タイムズ」(後に「BASEMENT-TIMES」と改名)を立ち上げた中心人物を次の1~5の選択肢の中から答えなさい。
1 石左
2 渋谷陽一
3 谷澤ジョルジュ
4 徳川慶喜
5 はと
【正答】:選択肢5「はと」。
5 以外の選択肢を答えてしまった方は、真剣に高校・大学入試の国語(国語総合、現代文等)の対策を見直しする必要があるかもしれません。
Webサイト、WEBZINEの性格を読み取るには、一番最初の記事に注目することです。最初の記事からサイトの抱負であったり性格が読み取れることがあります。そして、「地下室タイムズ」は、最初の記事をはとさんが書いています。
「地下室タイムズ」の第1回から第10回までの記事の執筆者と取り上げているアーティストは次のようになっています。
第1回(はと)「Chouchou」
第2回(はと)「Explosions In The Sky」
第3回(はと)「Buckethead」
第4回(はと)「Ólafur Arnalds」
第5回(はと)「Andy Mckee」
第6回(はと)「Yael Naim」
第7回(石左)「水中」
第8回(はと)「宇多田ヒカル」
第9回(石左)「フジファブリック」
第10回(はと)ギターの技術的な記事「格付けチェック ~歪み編~」
10回中、第1回目の記事を含め8本の記事がはとさんのペンによるもの。これが【問題1】の答です。「地下室タイムズ」を中心になって立ち上げた人物は明らかにはとさんなのです。
一般的な「地下室タイムズ」(「BASEMENT-TIMES」)に対するイメージ、『石左さんと谷澤さんが中心に立ち上げたサイト』と違うのではないでしょうか。
はとさんが初回から10番目までに扱っている記事は、決して国民的に関心の高いアーティストばかりではありません。つまり、アクセスを集められる記事ではありません。第8回目の宇多田ヒカルが、ようやく人気の高いJ-POP歌手でアクセスがありそうです。
そして、石左さんが初期に書いている、例えば、Syrup16gやART-SCHOOLに関する記事も真面目な内容の「読ませたい」記事です。
実際に、「地下室タイムズ」(「BASEMENT-TIMES」)が大きくアクセスを伸ばしたのは、ガールズバンドの容姿(持って生まれた造形)を揶揄したり、押しの強いシンガーソングライターをサイコパス呼ばわりしたり、人気女性ソングライターのことを女性はみんな嫌いだと茶化すような記事によってでした。
これらの炎上を狙った『罵倒芸』記事には、音楽的だったり専門知識的な内容は含まれていません。
しかし、文章による『罵倒芸』としては抜群に面白い。
際立つ『罵倒芸』によって炎上を起こしアクセスを集め、本当に読ませたい音楽評論として内容のある記事に誘導するというのが、「地下室タイムズ」(「BASEMENT-TIMES」)の戦略だったのです。
以下は一般論として、炎上でアクセスを集め人気サイトとなると起こるやっかいな問題についての解説です。
Webサイトの収益(広告収入)はアクセス数(ページビュー)に比例します。成約率に連動するタイプの報酬形式もありますが、それにしても母数となるアクセスが多くなくては話になりません。
ガールズバンドの容姿やシンガーソングライターの性格や処世術に難癖をつけ揶揄する記事が何万、あるいは十万を超えるアクセスを集め、一方、真面目に真摯に音楽に向き合う記事がせいぜい数百アクセスしかないとどういうことが起こるでしょうか?
真面目に真摯に書いた記事はアクセスが少ないので、サイトの収入にほとんど貢献できません。一方、音楽評論としての内容や質を棄て、罵倒芸に徹し、バンドやミュージシャンの容姿や性格を面白おかしく揶揄し炎上させる記事はお金をたくさん稼げてしまう。
そうなると、サイトを立ち上げた時の志(こころざし)を忘れずに、忠実にかじ取りをすることが必要になります。
実はこれが大変難しい。
つまり、炎上目的の記事は、あくまでサイトにアクセスを集めるための『撒き餌』であって、本当に読ませたい記事は真摯に書いた記事なのです。なので、アクセス数の多寡、ストレートに言えば『稼ぎ』に囚われず、真摯な内容の記事を尊重する姿勢を堅持できるかどうか?
もし、初志がぐらついて、成果(収入)の多寡=すなわちアクセスの多少による『成果への貢献』、ずばり収入額が評価されるような雰囲気になってしまうと、真剣な記事を書いているがアクセスは少ないライターは、「やってられねえ」となってしまいかねません。
以上はあくまで『一般論』でした。
はとさんは、自分が中心になって立ち上げた「地下室タイムズ」を離れました。
その理由や経緯を知る由もありません。
地下室タイムズの立ち上げの理念や記事の質を担っていたはとさんが抜けた時点で、地下室タイムズがいずれいきずまることはほぼ見えていました。
洋楽・邦楽を問わないあらゆるカテゴリへの関心、バンドやソロ等の形式にとらわれない関心、10代に限らず全世代に訴求しうる音楽の質の追求、音楽へのリスペクトをもとに決して否定的なことや悪口を言わないこと、これらははとさんの記事の根底となる『姿勢』です。
はとさんが地下室タイムズにいる限り、他のライターが書く記事に対しても、これらの誠実な姿勢が、タガが外れないためのお目付け、意識の制約として隠然とであっても働いていた。
しかし、はとさんがサイトを離れたことで、サイト創始者の姿勢による『誠実さ』や『質の重視』等の意識的な制約は完全に外れてしまい、新たな指針や方向性を求めて試行錯誤するようになったのかもしれません。
「地下室タイムズ」(後に「BASEMENT-TIMES」と改名)とは、はとさんが中心になって創始したサイトであり、はとさんが離れた時点で、いきずまる(更新が途絶える)可能性は高かったと言えるでしょう。
個人的に好きな記事や新しい知識、音楽を教えてくれるのがはとさんだったからもう地下室タイムズに価値はない
複数人のライターが各人の知識を持ち寄って幅広い音楽評論を繰り広げるのが良かったのに
ただ地下室タイムズらしいと言われるような毒のある文体を確立させたのは正解だと思う
https://twitter.com/hetero__combat/status/902502909778071553
もし、今後「BASEMENT-TIMES」が更新されたら・・・、まぁ、その時はその時で状況や気が変わったということでしょう。
(2020年12月26日追記)
2020年12月10日、ついにというかとうとうというか、一年以上更新されないまま放置されていた「地下室タイムズ」(BASEMENT-TIMES)は閉鎖されました。
最盛期には月間250万ページビュー以上を誇った人気音楽サイトが、運営からのコメントもなくひっそりと閉鎖されたのは、罵倒・炎上・言い逃げ上等のやんちゃな芸風で高い人気を獲得すると同時に、激しい反発や怒りも買っていたサイトにふさわしい終わり方だったのかもしれません。
(2021年1月26日追記)
2020年12月10日前後から閲覧不可能な状態が続いていた「地下室タイムズ」は、2020年1年25日より再び閲覧可能な状態になったようです。
◆熊木杏里「君の名前」
https://www.youtube.com/watch?v=goRVnSLxkGM
◆野田愛実(NodaEmi)「Panorama」(IZ*ONE Cover)
https://www.youtube.com/watch?v=Ef3GZKS6sPs
◆バウンダリー「神様」Live Video
https://www.youtube.com/watch?v=Jqj_nD4y7Zk