アメリカのポピュラー音楽界が歌手、作詞・作曲家、編曲者、演奏家等の分業システムで成り立っていた1960年代前半、キャロル・キングはプロのソングライターとして活躍していました。
ところが、ビートルズが切り開いた作詞・作曲、歌唱、演奏を全て自分達でこなすというポピュラー音楽制作のイノベーションが米ポピュラー音楽界に波及し、職業作家としていきずまってしまいます。
キャロル・キングは、職業作家から自ら自作・自演にシフトするため、最初にバンドThe Cityを組みます。そしてバンド解散後、シンガーソングライターとしてデビューするのです。
最近気づいたんですけど、YouTuberって、ロックバンド/シンガーソングライターなんですよね。
テレビ番組、例えばバラエティショーなら制作スタッフは3桁の人間が関わるでしょう。番組最後に流れるクレジットに数十名の名前が流れます。
始めたばかりのYouTuberなら自分一人で企画、構成作家、カメラマン、ナレーター、出演、選曲、録音、効果、美術、編集、予算・スケジュール等の総合プロデュースまで全て自分で行います。
一年前に、タイの人気アイドルグループBNK48が、人気YouTuberチームの『The Ska』と組むと発表した時、『年配の人』感覚で「なんでYouTuberなんかと」、「小学生世代には人気あるんだろうけど(オッサンには判らん)」という陳腐な感想を持ちました。
で、蓋を開けてみると、昨年7月のスタートから高頻度で(最近はほぼ毎週)番組制作・発表を続け、総視聴数は約4千万回(2020年5月末時点)に達しています。ということは、若い世代に支持されているということでしょう。
彼らYouTuberチーム『The Ska』は、自前の編集スタジオ・プロダクションとして機能しています。これ、地上波テレビ番組を制作しているスタッフを使ったらとても制作ペースや費用が合わないなじゃないかと思います。
◆ใครคือ หมาป่า? หาเจอรอด ไม่เจอโดน !! - The Ska x BNK48
アイドルとYouTuberによるカードゲーム『人狼』のインストラクション&プレイ動画を約半年間で約190万回も再生させており、企画・構成・撮影・編集等の質は高いですね。
https://www.youtube.com/watch?v=xdkbriCd3Ps
2020年2月中旬から、日本のコンサート、ライブの多くが中止になりました。緊急事態宣言発令以降は全て中止になり、テレビ局のコンテンツもスタジオでの収録や生放送ができずリモートでの出演が主になっています。
今までの仕事の進め方の標準や常識が通用しなくなった非常事態なのですが、この制約を逆手に取って、新しい表現を試みる動きも様々に出ているようです。
メディア、エンターテインメント業界全体の売上額と比べると、僅かあるいは売上が立たない試行段階のものだったりするのですが、往々にしてこの時代の制約下の試行錯誤から次の時代に成長する事業・製品の種が育っているものです。
テレワーク演劇等チェックしていましたが、これは凄いなと感じたのがお笑い芸人レインボーのリモートコント。
すごいのはその新作発表のスピード感です。
そして、コントの背景・設定が、テレワーク、リモート環境が一気にインフラ、仕事、生活風景として広がった2020年を舞台設定として活用しているのです。
新作『リモートコント』群は、コロナ禍による緊急事態宣言下の生活や仕事風景を描写する、時代の必然性のある作品なのです。
ロックンロールもパンクロックもおおよそすべてのサブカル表現とは、その国その時代の必然があって出現し人気が出て広まったものです。
レインボーのクオリティの高い『リモートコント』の企画・制作に、既存のテレビ番組の仕事をしている制作プロダクションや所属する吉本興業のリソースも関わっているのか、それともほとんど二人の自作自演なのかはわかりません。
いずれにしても、この時代ならではの必然性のある表現は強いのではないでしょうか。
◆【リモートコント】リモ ート会議中、自分の顔ばっか気にする女
https://www.youtube.com/watch?v=e2n389BSU4s
◆【リモートコント】部下の女の子の部屋めっちゃ気になる上司
https://www.youtube.com/watch?v=-7FseX33-jU
◆【リモートコント】リモート会議中隠れて飯食う上司
https://www.youtube.com/watch?v=gUJFAvYNlvg
◆吉本坂46 『不能ではいられない』Music Video
https://www.youtube.com/watch?v=CTaDSi-VdYQ
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