メガネっ娘のキャラが立っているタイのアイドル/ロックバンドMelt Mallowのギター担当PIn、白のストラトキャスターがトレードマーク、ユニットでも活動。ロックやメタル好きのおじさんを怒らせそうなアピアランスですが、「アイドルなのかロックなのか」という野暮な問いはこの際おいていきましょう。
2018年にタイ・バンコクをホームとする日本のAKB48の海外姉妹グループ、BNK48が大ブームを起こしたことは、「タイのアイドルブーム」への日本からの関心・興味を呼び起こし、報道もされました。
実際のところはどうなのでしょうか?
正直、タイの大手レーベル(GMM GRAMMY等)は、日本型アイドルグループなるものを手掛けていません。ブームの日本型女性アイドルグループとは、基本インディペンデント(独立系)の存在なのです。
大手は傘下に有能な制作陣(プロデューサー、歌手・アイドルの卵、作詞・作曲家、編曲家、ミュージシャン)のネットワークを有しています。本格的に『日本型アイドル』を手掛けるなら日本の企業と提携することが考えられますが、タイのポップス界は、わざわざ海外にライセンス料を支払わなくとも自前で優れた楽曲を制作できることが背景にありそうです。
◆「GMM GRAMMY」子会社「genie records」創業者のWichian氏インタビュー
和食、洋食、中華なんでもできれば料理人は重宝されます(特に大量調理の分野では)。タイポップス界の制作陣は自前でアメリカのPOP、K-POP、J-POPなんでも料理できる腕があります。
GMM GRAMMYが傘下のティーンエイジャー向けレーベルMBOで大事に育ててきたPAM(徐嘉琳)が、2018年11月に発表した『แฟนเธอ... (I Don't Like )』は、制作陣が渋谷系等のJ-POPを深く研究していることがわかる佳品でした。
そういうわけで、コロナ禍に覆われ残り4か月を切った2020年9月、タイの女性アイドルグループのトレンドは次の3点と見ています。
1.中国志向
2.タイポップ回帰
3.ガールズバンド
1.中国志向(中国オーディション番組への参加)
もともとタイ族は中国から南下してきたという説が有力で、伝統的にタイ産業界、芸能界ともに隣国の大国、中国市場に進出しようとする志向を強く持っています。
タイ芸能界は、『プデュ』の略称で知られる韓国発のオーディション番組のフォーマットに沿った中国のオーディション番組に有能な若手を送り込み、本国タイはもちろん、中国、東南アジア各国で知名度と人気を高めることに成功しています。
上述のタイ国内で既にソロとして知名度を得ていたPamは、中国名「徐嘉琳」として『明日乃子』に参加。タイ出身のBLACKPINKのLisaが審査員を務める『创造营』(CHUANG 2020)にはNENEが参加し、中国、タイ、東南アジア各国で知名度・人気を高めることに成功しています。
https://www.youtube.com/watch?v=Us6f-F9KzJw
【STAGE】硬糖少女303成团曲"BonBon Girls"
— CHUANG 2020 (@CHUANG_Official) 2020年7月7日
Exclusive on YouTube:https://t.co/pqiX3RJtdJ
Watch on WeTV:https://t.co/9gEJQmNpaM#创造营2020 #CHUANG2020 #硬糖少女303 #BONBONGirls pic.twitter.com/im5KOvIdT3
◆Highlight รอบ Final:Nene-“รักไม่ต้องการเวลา”เวอร์ชั่นภาษาจีน | CHUANG 2020 | ดู Full EP ที่ WeTV.vip
東南アジア各国の『WeTV』で放映。
https://www.youtube.com/watch?v=PKoJBIf0I6Q
テンセントは今年6月、マレーシアの有名動画配信プラットフォーム「Iflix」を買収した。(中略)テンセント視頻はマレーシア及びタイの研修生を、彼らが制作する最新のバラエティ番組『創造営2020』に招待している。同番組はすでに東南アジアの多くの視聴者から注目されている。
2.Kamikazeレーベル的なタイポップ黄金期への回帰
大手が中国を向いているのに対し、インディーズの日本型アイドルブームは、音楽性においてJ-POPでもK-POPでもない伝統的なタイポップ回帰の傾向が強まっているように見えます。
ここでいうタイポップとは、やはりその象徴は2000年代末から2010年代前半にかけてタイのアイドル界を席巻したKamkazeレーベルでしょう。
2018年に、最も早く日本型アイドルBNK48のビジネスの仕組み(20名以上のメンバーの中から楽曲毎に十数名を選抜する『選抜制』、収益源としての『握手会』等)を丸ごとパクってデビューしたグループが7th Senseです。
しかし7th Senseは、こと音楽性においてはJ-POPでもK-POPでもないオリジナルなテイストを感じさせ、「オヤっ?」、「もしかしてタイポップ回帰?!」と期待させてくれました。
続く大型女性アイドルグループCm Cafeの音楽性に、このタイポップ回帰トレンドは決定的と判断しました。サブユニットのDAIFUKUのように、初期AKB48のロック、パワーポップの音楽性を完璧に再現するのと並行して、別ユニットでは明確にタイポップ回帰を志向する楽曲を発表しているのです。
制作陣は、J-POPは完全にリバースエンジニアリングして開発・生産することは可能、その上でタイの志向に合わせタイポップアイドルの音楽性に回帰していると言っているようでした。
そして、タイポップ回帰、往年のKamikazeレーベルを思わせるキュートでキッチュなアイドルポップスのトレンドは、黄金時代のKamikazeレーベルのプロデューサー陣が再結集して送り出した女性アイドルグループRedSpinにより真打登場!となりました。
学園もの(体育館)の衣装がまさに往年のKamikazeレーベル!CGM48の人気メンバーが参加して話題のBNK48「Wink wa 3 Kai」なんかもKamikazeレーベルっぽいですよね。
RedSpinのこのインスタのフィルタかけたっぽいセピア色は、往年のKamikazeレーベルの演出にセピア色が使われていたことを指しているのでしょう。
◆RedSpin (เรดสปิน) - FANZONE (แฟนโซน) [Official MV]
https://www.youtube.com/watch?v=GgVjHOx9kho
3.ガールズバンド
最後の2018年から2019年にかけて明白になってきたタイの女性アイドルグループのトレンドは、歌と同時に楽器を演奏するロックバンドスタイルのガールズバンドです。
2020年9月現在、活動が軌道に乗っている重要なバンドは、Melt MallowとLaBisがあります。この両者はアイドルとロックバンドを兼ねる二刀流のスタイルです。そのメリットは、毎月のように開かれているアイドルイベントに参加することができることです。純粋なロックバンド色が強いとそうはいきません。
・Melt Mallow、アイドルにしか見えないし実際アイドルでもあるのですが、楽器を持つとロックバンドになります。日本のPASSPO☆や凸凹凸凹(ルリロリ)に通じるバンド or ダンス&ボーカルの二刀流。
・LaBis、一曲目はSCANDALに通じるパワーポップガールズバンド路線。二曲目は一転し、BAND-MAIDとROSELIAを意識していますね。
デビュー当時の衣装はSCANDAL風でした。
他に、タイにはALIZというアイドル路線でなく本格派ガールズバンドがあって新曲は白の衣装でメタルのLOVEBITESを意識した演出です。ただ、ALIZはアイドルイベントに出演することはないでしょう。
◆Melt Mallow : Duck's Dream : เป็ด (Official MV)
https://www.youtube.com/watch?v=057jSU-mXKg
◆LaBis - Broken Dream [Official MV]
暗い廃屋のセットで人形を抱えた少女が自立に向け歩みだす演出は、BAND-MAID「DICE」の影響を感じます。
https://www.youtube.com/watch?v=XWdqXF5HIRs
◆ภาพลวงตา - ALIZ [OFFICIAL MV]
ALIZはアイドルではありませんし、過去の曲はオルタナ、エモ、フュージョン等の気がしたのですが、この曲はLOVEBITES!
https://www.youtube.com/watch?v=A46iNmvPFTU
◆ไม่บอกเธอ - หมอริท feat. ปิ่น melt mallow | Highlight | EP.90 | Guess My Age รู้หน้า ไม่รู้วัย
Melt Mallowのギターのメガネっ娘、Pin(実は『タイの東大』チュラロンコン大学の学生らしい)がタイの人気男性アイドル(俳優、歌手)”20代の頃の半沢直樹?”なRitz Rueangritzとデュエット&バックでギターを演奏!かなりの優遇ではないでしょうか。
https://www.youtube.com/watch?v=R0QjPQ2DGGc
◆Melt Mallow : Popsigirls Project - Philophobia (Official MV)
https://www.youtube.com/watch?v=ZFEe0AncEPM