2019年3月2日(土)深夜、タイの国民的人気を誇る女性アイドルグループBNK48(日本のAKB48の海外姉妹グループ)は、第一回選抜総選挙の結果を受け、チャープランがセンターを務める6thシングル「Beginner」のMVを公開しました。
MV公開に先駆け、同日夕方、バンコク・サイアムスクエアのハードロックカフェ前広場ステージにて、「Beginner」およびカップリング曲「君のことが好きだから」の披露イベント「BNK48 Thank you & The Beginner」が開催されています。
※同イベントはBNK48オフィシャルYouTubeチャンネルにて配信されました。末尾に該当URLを添付いたします。
イベントでの「Beginner」初披露の入場シーンの演出およびMVの演出を観た音楽ファンから、BABYMETALとの類似(オマージュ等)についての指摘がありました。
BNK48は、2018年9月の清涼飲料『ミリンダMix-It』の衣装・CMの際も、やはりタイ現地(タイをはじめとする東南アジアではBABYMETALの人気・知名度は高い)音楽ファンから、BABYMETALとの類似(オマージュ等)の指摘があったことがあります。
そういうわけで、本日は、BNK48の演出には、BABYMETALへのオマージュ等は実際に存在しているのかについて考えてみたいと思います。
- スターウォーズ、BABYMETAL、BNK48、善悪二元論、善悪表裏一体論・・・
- BABYMETAL、BNK48のドッペルゲンガーとの格闘~善悪表裏一体論
- BNK48がBABYMETALをオマージュしているという説の根拠は?
- アイドル音楽の『辛口』の味付けとしてはアリ
- <MV等>
スターウォーズ、BABYMETAL、BNK48、善悪二元論、善悪表裏一体論・・・
まず、BABYMETALは、スターウォーズの世界観からの引用、パロディ・オマージュをふんだんに含んでいます。
そして、様々なパロディの引用元となっているスターウォーズ自体も、様々な神話や思想や芸術作品からの引用がミックスされたものです。
スターウォーズの根本となる世界観は、世界最古の一神教とされるゾロアスター教を起源とする善悪二元論です。
同時に老荘思想(タオイズム)や道教由来の東洋思想の要素もふんだんに盛り込んであり、作品中の善悪二元論は善悪表裏一体論でもあります。
ゾロアスター教はペルシア(イラン)地方を起源とする宗教で、クイーンのフレディ・マーキュリーが信者だったことでも知られるようになりました。
歴史的には最古の一神教であり、仏教、ユダヤ教、キリスト教等の世界の主要宗教にゾロアスター教が影響を与えたとされています。
多くの宗教に見られる善悪二元論、終末論、救済論等のコンセプトは、ゾロアスター教を起源とする説が有力です。
BABYMETALの世界観は、道教的な多神教世界観や神秘主義と、ゾロアスター教、スターウォーズ由来の善悪二元論等を下敷きにしており、メタルを司る神『キツネ様』がBABYMETALを地上に降臨させたという設定(神話)になっています。
BABYMETALやBNK48「Beginner」が引用する正義と悪の対決=善悪二元論は、スターウォーズの光と闇(ライトサイドとダークサイド)のコンセプト、用語からの引用です。
ここで注目されるのは、BABYMETALNの「紅月-アカツキ-」とBNK48「Beginner」では、正義の闘いを挑んだ相手(悪)とは、実は自分自身の分身(ドッペルゲンガー)であったという『善悪表裏一体論』がクライマックスになっている点です。
BABYMETAL、BNK48のドッペルゲンガーとの格闘~善悪表裏一体論
初期のBABYMETALの「紅月-アカツキ-」の決戦に至るストーリーを抜き出すと以下のようになります。
・聖地「A-KIBA」を拠点とする巨大勢力「アイドル」は、強大な魔力によって政治、経済、文化を牛耳り世界を支配していた。
・巨大勢力「アイドル」は、「アイドルソング」以外の音楽を禁止し、メタルを禁止した。
・巨大勢力「アイドル」は、構成員が脱退しても次々に新人を補充し、また各地に支部を設立し勢力を拡大していく。
・メタルの復権を願うファンの思いがメタルを司る神「キツネ様」に届き、キツネ様はメタルの復権のためにBABYMETAL(SU-METAL、YUIMETAL、MOAMETALの3人)を降臨させる。
・BABYMETALは、メタルで世界を一つにするという「聖戦」(メタルレジスタンス)に臨む。
(プロセスを略します。)
・BABYMETALのメンバー、YUIMETALとMOAMETALは、巨大勢力「アイドル」の術中にはまりとらえらてしまう。
・SU-METALは、YUIMETALとMOAMETALの奪還のため、巨大勢力「アイドル」の聖地「A-KIBA」に単独で乗り込み闘いを挑む。
『アカツキだァーっ!』
「紅月-アカツキ-」は、ステージにおいてシアトリカルロック(演劇 × ロック)として解釈が示されたことがあります。(『LEGEND“Z”』2013年2月於ZeppTokyo)
「紅月-アカツキ-」の間奏のギターソロにおいて、SU-METALは、全く自分と同じコスチュームのもう一人の自分自身(ドッペルゲンガー)と格闘シーンを演じるのです。
ドッペルゲンガーは顔にはマスクをかぶっていますが、体格、衣装、アクションのクオリティーはSU-METALと瓜二つの「分身」です。
このSU-METALとドッペルゲンガーとの格闘シーンは、悪=ダークサイドとは、実はもうひとりの自分、自分自身の別な人格・側面であるとの善悪表裏一体説を描いています。
(私は、「紅月-アカツキ-」のキャラクターは、小山ゆうの漫画「あずみ」によるところがあると思っています。偶然かもしれませんが・・・。)
BNK48がBABYMETALをオマージュしているという説の根拠は?
BNK48のチームにBABYMETALを意識している可能性があると説かれる場合の根拠は以下の3点があります。
・【『ダークサイド』の呼称と黒フード・黒マントの衣装】
BNK48「Beginner」お披露目の場での選抜メンバー入場シーンの「ダークサイド」の呼称と黒のフード付きローブあるいはマント姿。
ダークサイド自体はスターウォーズの用語の引用ですが、BABYMETALが頻繁に着用する黒フード・マント姿やフラッグ、杖等の小道具と組みわされると類似を感じる人もいるようです。
・【『悪』として闘う敵は実はもう一人の自分自身だったという展開】
ドッペルゲンガー(自分自身の分身)との格闘シーン(種明かしでもある)は「善悪表裏一体説」を主張しています。
この演出が、BABYMETALの「アカツキ-紅月-」(舞台)とBNK48「Beginner」(MV)に共に見られること。
・【以前もCM・イベント演出がBABYMETALオマージュ風だったことがある】
2018年9月に発表された清涼飲料ミリンダMix-It のCM・イベントのBNK48の衣装は、2014年3月武道館のBABYMETALの衣装を参照、引用しているように見え、音楽もメタルを意識したスラッシーなものであること。
2日間の武道館(『RED NIGHT』『BLACK NIGHT』)のデザインを掛け合わせたようにも見え、中の人(クリエイター)に、かなりBABYMETALを研究している人(メイトさん?)がいるのではないかと推測しました。
アイドル音楽の『辛口』の味付けとしてはアリ
BABYMETALは、活動初期から東南アジア各国で人気が高く、タイでも、イギリスでの活躍(受賞等)がTVで報道されたり、HR/HM系の雑誌の表紙に起用されたり、映画館でライブビューイングが実施されるなど、人気、関心が高いアーティストです。
アイドルが『辛口』の味付け、差別化の要素として、ロック系の音楽の要素を取り入れることは盛んで、メタルであったりラウドロック/ハードコアであったりポストロックであったりいろいろです。
BNK48「Beginner」は、他のジャンルとのコラボレーションではありませんが、ヒップホップの人気ラッパーを『悪役』としてMVに客演させていることがいいスパイスになっています。
BNK48「Beginner」の演出、味付けとしてはアリではないかと思います。
<MV等>
◆BNK48「Beginner」
大人気アイドルグループBNK48がラッパーYOUNGOHM率いる一味の邸宅にカチコミ!
https://www.youtube.com/watch?v=IptefJ9C4PY
◆The Rolling Stones「Undercover Of The Night」
AKB48「Biginner」の当初のMVはボツになりましたが、80'sバイオレントなMVといえばこれ、ローリング・ストーンズ「アンダーカヴァー・オブ・ザ・ナイト」 。このオリジナルMVもボツになりました。
https://www.youtube.com/watch?v=DVJkfXeTs9Q
Mirinda Mix-It CM (มาแล้ว... มิรินด้า มิกซ์-อิท 2 รสชาติใหม่! )
この衣装と音楽は、べビメタ(BABYMETAL)を意識しているように見えます。
https://www.youtube.com/watch?v=oyAx2qne3FI
◆BNK48『THANK YOU & THE BEGINNER』 2 MARCH 2019
「Beginner」入場シーンは、1:51:00~。
https://www.youtube.com/watch?v=w0veGNs05es
<参考エントリー>