2014年リリースの1stアルバム時にBABYMETALから受けた印象は、「白人のショック・ロック(アリス・クーパーやKISSやマリリン・マンソン等)より、神話主義、神秘主義が思いっきり前に出ている感じが、(音楽性は全く違いますが)P-Funk(パーラメント/ファンカデリック)みたいだ。」というものでした。
BABYMETALの神秘主義は、実際には、おそらく、北欧あたりのヘヴィメタルの神話主義、神秘主義から来ているのではないかと想像します。が、自分の知識の範囲では、創始者(オリジネーター)が発した『神話』(BABYMETALの場合、『キツネ様のお告げ』)に沿ってミュージシャンがアクターとして神話を演じきるというのは、P-Funk(パーラメント/ファンカデリック)が一番視覚的に近い印象を受けたのです。
サン・ラ(地球上では1993年没)というジャズの大御所がいました。サン・ラは自分のことを『土星人』と称し、一生を『土星人』として終えました(土星に戻ったそうです)。ゆうこりん(小倉優子さん)は、こりん星人であると主張し続けることに次第にストレスを感じるようになり、地球人に転じたとのことですので、サン・ラの『土星人』として一生通した生き方は際立っています。
サン・ラはなぜ一生を『土星人』として通しきることができたのでしょうか?それは、実際にサン・ラは本当に『土星人』だったからです。DNAを採取してどうこうということでなく、教祖(オリジネーター)が、自身が発した神話を信じなければ何も始まりません。サン・ラは実際に(多くの新興宗教の創始者と同様に)神秘体験を経て、自分は『土星人』であると発言するようになったとされています。
サン・ラのバンドがサン・ラ・アーケストラです。神話系のバンド、音楽集団というのは、本体・本質は、創始者(オリジネーター)が伝える『神話』『教義』なので、理論的には、メンバーが入れ替わったり創始者(オリジネーター)が亡くなっても、『神話』『教義』を信じるものが志を継いで音楽活動を継続することが可能です。
サン・ラ・アーケストラは現在(2018年)も活動を続けており、その音楽を聴くと(1993年に地球を離れ、土星に戻った?とされる)サン・ラに会えるといいます。
もうひとつのアフロフューチャリズム系の代表的音楽集団であるP-Funk(パーラメント/ファンカデリック)も、その『本体』『本質』とは、創始者、ジョージ・クリントンの発する独自の神話、教義であるということは指摘されるところで、専門書も出ています。
ジョージ・クリントンの孫世代にP-Funkファミリーの実権が移った時、彼らがP-Funk(パーラメント・ファンカデリック)を名乗るのかどうかはわかりません。ジョージ・クリントンの考え方次第ではその可能性はあるかもしれません。
サン・ラは、地球を離れ土星に戻ったとされ、P-Funk(パーラメント/ファンカデリック)の中心メンバーの1人、ゲイリー・シャイダーは、亡くなるまで、芸能活動ではスターチャイルド(聖なる星の子、赤ん坊なのでオムツをしている)であることを通しました。
ロック系、例えばデビッド・ボウイ等が、『ジギー・スターダスト』等のペルソナを演じる時は、アルバムあるいはツアー単位であることが多いものです。
KISSも、初期メンバーのエース・フレーリーはおそらく”星から系”ですが、他のメンバーはオフステージではガッツリとビジネスマンの顔を見せていますので、ステージ上のエンターテインメントのキャラクターとオフは区分している感じです。
一方、サン・ラやP-Funk(パーラメント/ファンカデリック)の『宇宙から』というのは、エンターティンメント限定のペルソナではなく、思想・哲学が背景にあります。アフロフューチャリズムという思想です。キャンディーズやキャンディーズのバックバンドのMMPが影響を受けたアース・ウィンド・アンド・ファイアー(EW&F、J-POPで最もEW&Fの影響が強いのはドリカム、DREAMS COME TRUE、次いで槇原敬之さんだと思います。)もアフロフューチャリズムが背景にある音楽集団です。
アフロフューチャリズムを正確に説明することは本日は困難なので端折りますが、宇宙から来た、宇宙に連れ去られたという宇宙=ユートピア思想です。ユートピア思想という点で、ジャマイカの黒人がエチオピアをユートピアとするラスタファリアニズムと通ずる点もありそうです。おそらく、生きる希望としてユートピア(理想郷)を求める思想が流行した背景には、苛烈で厳しい現状(人種差別や貧困等)があったのではないかということも想像できます。
もとい、BABYMETALの本質、本体とは、プロデューサーであるKOBAMETALの伝える『神話』(『キツネ様のお告げ』)だと信じれば、私生活にまで『神話』のキャラクターとの矛盾を生じさせないよう、『神話』を演じるメンバーやバックバンドのSNS等での私的な発言を厳しく管理する方法論、手法は矛盾のあるものではなく、整合します。
特に、事前のツアー告知では3人のメンバーであった2018年の全米ツアーにYUIMETAL(ユイメタル)が欠場となった際、運営側からの正規の告知なしで、ダークサイドという『神話のアップデート』で乗り切った点からは、BABYMETALが『神話』型音楽集団であることを徹底させているように感じました。
あくまで推測ですが、アミューズ社は、『神話』型の音楽集団の特色や特有のコミュニケーションスタイルに理解があるのではないかとも想像しました。
徹底して、公式が伝える『神話』(『キツネ様のお告げ』)以外のプライベート等の情報開示をシャットアウトし、メンバーが欠場するような非常事態に際しても、『神話』のアップデートで乗り切るというのは、固有の思想・文化、やり方を理解したうえで、ぶれずに腹をくくる必要があるのではと思ったからです。
2018年10月、そのBABYMETALでYUIMETAL(ユイメタル)として活躍してきた水野由結さんが、BABYMETALを辞めることを発表されました。
ポピュラー音楽の歴史を変えたビートルズのレコードデビューから解散までが8年間。BABYMETALにYUIMETAL(ユイメタル)として水野由結さんが在籍した時間と丁度同じ期間です。
水野由結さんの志向は、音楽では、アリアナ・グランデのようなポップであり、女優を目指されているそうです。
水野由結さんは、他者によって書かれた神話を演じることを経て、自分の人生を生きることに踏み出されたのではないでしょうか。
今後の水野由結さんのご活躍を心から祈念いたします。
補足)
キャンディーズにまで話がいきませんでした。
キャンディーズとアミューズ周辺は、黒人音楽のアフロフューチャリズムに理解があるのではないかと想像したのは、以下のようなことからです。
・キャンディーズは宇宙服風のステージ衣装を着てパフォーマンスしたことがある。
・スペクトラム(元キャンディーズのバックバンドMMPのメンバーが結成したブラスロック/ファンクバンド)は「イン・ザ・スペース」というアフロフューチャリズムに影響受けてる系の曲を歌っている。
・スペクトラムの衣装はスペースバイキング風
・P-Funk(パーラメント・ファンカデリック)寄りの音楽性のバンド、米米クラブの1stアルバムのプロデューサーは元ホーン・スペクトラムの中村さん。
・キャンディーズと(バックバンドとして)MMPのコラボレーションを実現したのは(当時渡辺プロダクションでキャンディーズのマネージャーだった)大里会長のようです。
◇BABYMETAL
Can you guess these @BABYMETAL_JAPAN songs from emojis? 🙋♀️🍫 Take our latest #DownloadFestival quiz HERE 👉 https://t.co/6ZKsxqWBOH pic.twitter.com/rPiTY8EApK
— Download Festival (@DownloadFest) September 13, 2018
◇Sun Ra(サン・ラ)
I have many names
— Sun Ra Arkestra (@SunRaUniverse) October 19, 2018
Names of mystery
Names of splendor
Names of shame
I have many names
Some call me Mr Ra
You can call me Mr Mystery pic.twitter.com/uD0ju2qc54
◇BABYMETALのプロデューサーKOBAMETAL(コバメタル)はメタルのコンテクストを理解しアイドルを素材に『実践』する数少ない日本人。だから真似することができずフォロワーが存在しないのでしょう。
◇2014年のBABYMETALの海外進出に”追い風”を吹かせたトム・ドーソン氏・・・
◇キャンディーズは、アイドルであると同時にソウル、ファンクのダンス&ボーカルグループだった!
◇ヘヴィメタルのネオペイガニズムとジャマイカ・レゲエのアフリカ回帰思想・ラスタファリアニズムについて
◇ハードロックとヘヴィメタルは違うのか?BABYMETALとは何なのか?等
◇(2014年武道館時の)BABYMETALルックに似ている?と話題になったタイの人気アイドルグループBNK48の衣装