- MNL48 Team NIVが「Palusot Ko'y Maybe」(言い訳Maybe)MVを公開
- ロック(ロックンロール)とは何なのか?
- アジアのAKB48海外姉妹グループは1960年代の黒人女性ボーカルグループの現代版?
- 音楽史ではAKB48のルーツはキャンディーズ、キャンディーズのルーツは60’s米黒人女性ボーカルグループ?
- AKB48の楽曲=ロックとしてチューニングしたBNK48運営とその影響
- <参考音源(MV)>
- <参考エントリー>
MNL48 Team NIVが「Palusot Ko'y Maybe」(言い訳Maybe)MVを公開
フィリピン・マニラを拠点とする日本の女性アイドルAKB48の海外姉妹グループ、MNL48 Team NIVが、「Palusot Ko'y Maybe」(言い訳Maybe)のMVを公開しました。
楽曲は、粗削りながらも、ロックンロール/パワーポップ本来のプリミティブでパワフルで切なくスイートな魅力を描き出すことに成功した佳曲となっています。
ロック(ロックンロール)とは何なのか?
社会、経済、文化、音楽の歴史と発展を踏まえたロックンロールの定義については、業界、音楽ファンはもとより、世界中の大学や図書館や博物館や民間の研究者、音源収集家達等によって試みられてきました。
大衆音楽(ポピュラーミュージック)の特色は、新しい音楽の発生、勃興やその流行は『常に辺境や境界から発生する』という点にあります。
ポピュラーミュージックの新しいカテゴリは、辺境や境界、異なる文化が交わるポイント等で発生することが多いというのは、定義しにくいということでもあります。
”底辺”という単語は嫌いなので使用しませんが、ロック、ジャズ、R&Bをはじめとするほとんどの主要なポピュラー音楽の重要なルーツであるブルースは、黒人奴隷の子孫の音楽であることは事実です。
ブルースのルーツは、19世紀末の綿花農場の労働歌のフィールドハラーでした。
また、20世紀前半のフォークソング歌手やブルースメンたちの歌う世界観は、当時、ホーボー(Hobo)と呼ばれた移動労働者の生活感と密接に結びついています。
ミュージシャン自身も、街から街へと放浪の生活を送る者(=社会の周辺、境界に存在する者)であることが多かったのです。
ブルースにしてもフォークソングにしても、アメリカ社会の発展をその下積みとして支えた名もなき民衆の人生の喜びや楽しみを表現する娯楽でした。
で、いきなり、時代は2019年のフィリピン、マニラの女性アイドルグループMNL48になるんですが。
アジアのAKB48海外姉妹グループは1960年代の黒人女性ボーカルグループの現代版?
アジア特にASEANで直近に立ちあがったAKB48の姉妹グループの音楽性は、1960年代の黒人女性ボーカルグループ(広義のロックンロール)の現代版(リバイバル)に位置づけられるような気がするんですよね。
マーサ&ザ・ヴァンデラス、ダイアナ・ロス&シュープリームス、ロネッツ、シフォンズ、クリスタルズ、マーヴェレッツ等々・・・
ビートルズ、フー、ジャム、ブルース・スプリングスティーン、エアロスミス、リンダ・ロンシュタット、フィル・コリンズ・・・60’s女性黒人ボーカルグループの楽曲をカバーしているロックバンド、ロックミュージシャンは数知れません。
HR/HM(ハードロック・ヘヴィメタル)では、ソロ歌手ですけどリトル・エヴァの「ロコモーション」をカバーしたGFR(グランド・ファンク・レイルロード)が有名ですね。
60’s女性黒人ボーカルグループ自体を、”ロック”(ロックンロール)のカテゴリーに入れるかどうか(リズム&ブルースのカテゴリにくくる場合も多い)は、定義(広義か狭義)によります。しかし、音楽的影響の大きさに注目すれば、60’s女性黒人ボーカルグループが、ロックの大きな要素であることは間違いないないでしょう。
そもそも、ロック史のど真ん中に位置するビートルズの最重要なイノベーションの一つが、黒人女性ボーカルグループのコーラスとロックンロールのバンド(コンボ)の融合・統合です。
音楽史ではAKB48のルーツはキャンディーズ、キャンディーズのルーツは60’s米黒人女性ボーカルグループ?
そして、上記の60’s女性黒人ボーカルグループの大きな影響を受けているのが、日本の1970年代の女性アイドルグループ、キャンディーズです。
このことを踏まえると、2019年のアジアのAKB48姉妹グループとは、女性アイドルグループの60’s女性黒人ボーカルグループへの”先祖帰り”、”ルーツ回帰”であると解釈できるかもしれません。
AKB48グループの秋元康総合プロデューサーは、「AKB48の原点はキャンディーズ」との趣旨の発言をされています。
<引用元>秋元康氏「キャンディーズはAKBの原点」 | 日テレNEWS24
引用開始ーーー
秋元氏は「大学生にとってのアイドルだった。AKBの原点と言えるかもしれない。3人のうち誰が好きなのか、自分のタイプは誰なんだという会話を生んだ」と当時を振り返った。
3人の功績を「等身大のアイドルの出現。それまではもっと芸能界的だった。スターであることに執着するハングリー精神がきらきら輝いていた。キャンディーズの出現によって、普通の女の子が芸能界に入り、また普通の女の子に戻るという流れができた」と位置づけた。
引用終了ーーー
このインタビューでは、あり方、ふるまい、態度等(アティチュード)にフォーカスされており、音楽性については触れていません。でも、キャンディーズが現代の女性アイドルグループの原点・ルーツということは、当然、音楽的影響もあると考えてよいと思います。
現代のアジアのAKB48姉妹グループは、AKB48 → キャンディーズ → 米1960年代黒人女性ボーカルグループと、音楽史の進化系統樹を逆にたどって、現代においてパワフルなロックンロールをパフォーマンスする『ロックンロールのルネサンス』と解釈できるかもしれません。
AKB48の楽曲=ロックとしてチューニングしたBNK48運営とその影響
フィリピン・マニラのMNL48、ベトナム・サイゴンのSGO48は、2017年から2018年にかけて大成功を収めたAKB48の海外姉妹グループであるタイ・バンコクのBNK48の影響を受け意識しているはずです。
バンコクのBNK48音楽スタッフは、アメリカと日本のポピュラー音楽に通ずる手練れです。
例えば、アンプラグドのアカペラのパフォーマンスのアレンジや、(原曲のトラック中にもあったのだろうけどまず気付かない)「恋するフォーチュンクッキー」のドゥーワップコーラス(1950年代の黒人ボーカルスタイル)を強調して抜き出し映画のサントラに使ったりしている点からわかります。
アジアではそもそもCD(フィジカル)を販売するというビジネスがあまり盛んでなかったこともあり、『AKB商法なるものが音楽業界を荒らす』というような被害者感覚や対立感覚は発生しなかったようです。
楽曲のみに注目すると、AKB48の現地姉妹グループというのは、ロック(ロックンロール)のボーカル&ダンスグループです。
そこがよくわかるのは、タイの地場のロックグループ達によるBNK48の楽曲(元はAKB48の楽曲)のカバーです。
日本でありがちな、ロック対アイドルという雑音にとらわれることがないので、AKB48の楽曲が本来持つ純粋にロックとしてのパワーや楽しさを上手く抽出して強調するタイプのカバーが目出ちます。
ビートルズやフーやエアロスミスやグランド・ファンク・レイルロードや多くの豪快なロックバンド達が性別や演奏スタイルを超えて、モータウンをはじめとする黒人女性グループ/ソロ歌手の名曲群をレパートリーにしているのと通じるかもしれません。
なので、AKB48の海外姉妹グループが”旋風”を巻き起こした国のロックシーンは、ロック勢からのフィードバックがユニークで興味深いのです。
例えば、タイ・バンコクで今最も注目されている新進アイドルのFeverの音楽制作には、インディーズロックの手練れが勢ぞろいしている感があります。
米パワーポップの代表格Weezerは、インドネシア・ジャカルタ公演で、ツカミにイントロでAKB48(現地ではJKT48のヒット曲として知られている楽曲)の「ヘビーローテーション」を入れてます。
まあ、Weezerのリヴァース・クオモは「目標は紅白」と言うほどのJ-POP通ですからまた別ですね。
<参考音源(MV)>
◆MNL48 Team NIV 「Palusot Ko'y Maybe 」(言い訳Maybe)
粗削りなところもロックンロールらしくてGood!
https://www.youtube.com/watch?v=QV51W3IIpUg
◆The Donelles「Heatwave」
マーサ&ザ・ヴァンデラスの「Heatwave」の原曲に忠実なパワフルなカバー。
https://www.youtube.com/watch?v=GH4Ei-MeBtU
◆スイートポップキャンディ「Heatwave」
メジャーデビューもしている、キャンディーズ、英米オールディーズ、昭和歌謡曲等のカバーグループによるマーサ&ザ・ヴァンデラス「Heatwave」のカバー。
これを見ると、1960年代米ロックンロール(黒人女性ボーカルグループ)音楽が、日本の女性アイドルグループ(キャンディーズ)の音楽になっていくプロセスがわかる気がしました。
キャンディーズは、シュープリームス、スティーヴィー・ワンダー、EW&F(アース・ウィンド・アンド・ファイアー)、KC&ザ・サンシャインバンド等たくさんの洋楽をレパートリーにしています。
https://www.youtube.com/watch?v=kXOevzTiI2s
スイートポップキャンディの「レパートリー」を見ると、英米オールディーズ(ポップス、ロックンロール)、昭和アイドル歌謡曲等、日本の女性アイドルポップスの歴史と成り立ちの参考になります。
◆Scarlet「ฤดูใหม่ (Tsugi no Season)次のシーズン」BNK48 ( 2nd Generation ) カバー
タイのポップパンク(?)バンドによる、もちろん原曲はAKB48の楽曲のカバー。目立つアレンジはギターソロとレゲエの間奏位の割と原曲に忠実なアレンジですが、バンドでやるとここまでロック(ポップパンク)になります。SNSで見ていると、タイはじめ東南アジアのロックバンド、バンドメンバーには日本のサブカルチャーであるアイドル好きが多いようです。
https://www.youtube.com/watch?v=nbmlU7B3L9A
<参考エントリー>
BNK48の2期生がマンさんのギターでアンプラグドパフォーマンスしてます。