推しがNewJeansのファンです。
インスタのストーリーのBGMとしてしょっちゅう使っているのでホントに好きなんでしょう。踊ってみた動画でも投稿してくれれば良いのにと思うんですが、推しも本職アイドルなので大人の事情はあるのかも。
最近、面白い!と思ったのがUSのガールズグループBoys World(ボーイズ・ワールド)。
Boys Worldは、サイコ・ミュージックの元経営者、ソニー・タカールがLive Nationと設立したKyn Entertainmentが売り出し中のガールズグループ。
いや、これUS製のK-POPじゃね?それもガールズクラッシュ。
実際にRed velvet、TWICE等K-POPの一流どころの楽曲を手掛けた制作者を起用しているらしい。
1981年、矢沢永吉がLAでリトル・フィートやドゥービー・ブラザーズのメンバーをバックに本場のロックのサウンドを実現したように、2023年のBoys World(ボーイズ・ワールド)、本場のK-POPの制作スタッフを起用してUS産K-POP的な音楽を作ったのか!
(ここで羽織を脱ぐ)
『BAND-MAID TOKYO GARDEN THEATER OKYUJI』、BARKSで増田勇一さんが総括的レビューを書かれてます。
セットリストの全ての曲には意味があり重要ですが、ライブ初披露、しかも音源未発表という全くの新曲はひときわ特別でしょう。
ガーデンシアターにおいて世界初披露された新曲が「Memorable」。
セットリストの26曲目中16曲目の「about Us」からのスムーズな流れとして演奏されました。
この「about Us」がまた特別な意味が込められている曲。コロナで中止になった2021年BAND-MAID武道館公演でサプライズ披露される予定だった曲なのです。
結局「about Us」は武道館公園中止の告知と同時にリリックビデオを公開。捲土重来、大観客を前にして演奏したいという思いはあったはずです。
BAND-MAIDのセットリストでは、中盤から終盤、クライマックスへの転換としてバラード系楽曲のコンビネーションが位置づけられています。
2017年のツアーのセットリストでは「Awkward」と「Daydreaming」のコンビでした。
ガーデンシアターではこの中盤から後半、クライマックスへの転換の役割を、「about Us」と初公開の新曲「Memorable」が担いました。
BAND-MAID、10周年を迎え、アリーナクラスのバンドとして勝ち残ってこられた理由は何なのでしょうか?
要因は単一ではなく複数あるはずですが、その一つに柔軟さがあると思っています。
BAND-MAIDはマーケット志向とアーティストエゴのバランスが絶妙なのです。
顧客や市場の志向に完全に迎合するわけでもなく、かと言ってファンの先を行き過ぎるようなエゴを推し通し売上と動員を下げたりもしない。匙加減が絶妙なのです。
HR/HM(ハードロック・ヘヴィメタル)系のガールズバンドのファンダムは、40歳、50歳をとうに過ぎた「シニアな紳士」(バンドは年配の方と呼んでいる)が、「俺の好きなハードロックやメタルの曲調だけやってくれなきゃいやだー!」と子泣き爺のように泣き叫ぶことが珍しくないというなかなかに厄介な傾向もある存在なのです。
ちなみに私も4歳位の時に「あのおもちゃ買ってー(泣)」と道路にひっくり返って泣き叫んだことがあります。
今はしねぇよ。
実はこの「問題」の背景には、アメリカのポピュラー音楽市場の白人系のマーケットと黒人系のマーケットが別れていることがあります。
ロックはアメリカでは保守的な高齢の白人男性が好む音楽のイメージが定着しています。
ドナルド・トランプ元大統領が選挙集会で自身の支持者である40代から60代の白人中高年男性が好む1970年代、1980年代のロックのヒットソングをかけるイメージです。
この点(ブラック・ミュージックとロックの関係)について、当ブログでは度々言及してきました。
元ディープ・パープルのグレン・ヒューズだったり、元ユーライア・ヒープのケン・ヘンズレーだったりは、商業的にはハードロックバンドで成功するキャリアを歩みましたが、本来、黒人音楽志向も強い音楽家なのです。
しかし、4大ハードロックバンドOBという縛りは強く、ソロ活動においてもハードロックバンド時代からのオールドファンに向けた音楽をやることか多かったのです。
有名ハードロックバンドのOBがブラック・ミュージックやPOP色の強い音源をリリースしても、HR/HMファンはあまり喜ばないですし、かといって黒人向けラジオ曲でかかるわけでもなく、コンサート会場に若者の黒人のファンが来ることもない。
つまり、趣味の音楽、アーティストエゴを通すことになりかねず、ビジネスとして成立しにくい。
BAND-MAIDの作曲の要であるKANAMIは、初期の頃、影響を受けた音楽ジャンルとして真っ先にジャズを上げ、次いでファンク、パンク等を上げていました。
2015年にガールズハードロックバンドとして海外発で注目を浴びたBAND-MAIDですが、KANAMIの音楽的バックグラウンド、安室奈美恵に最も影響を受けたボーカル彩姫の志向等から、ブラック・ミュージック、POPへの拡張は必然だったはずです。
このBAND-MAIDのブラック・ミュージック、POP志向が結実したのが、2018年にリリースされた楽曲「start over」。
「start over」のリズム、グルーヴには、1970年代のクール・アンド・ザ・ギャングやレイ・パーカー・アンド・ザ・レイディオ等に通じるようなブラック・ミュージック感があります。
この「start over」の音楽性に、海外のHR/HMファンのBAND-MAIDファンの一部が強く反発しました。
面白い謎解きです!
BAND-MAIDは、HRを渇望していたわけではない5人組が大人の諸事情により偶然HR路線へと拡張し、自前曲になってからは「ソリッドなドラム+ファンキーなベース+ジャズ系の作曲&ギター+個性的なヴォーカル=BAND-MAID」というスタイルを現在進行系で築きつつあると理解しています。
なので、YouTubeやredditのノイジーな一部海外ファンが「start overやendless StoryはHRにあるまじきソフトな曲であり、レコード会社にやらされてる」とヒステリックに騒ぎ続けるのがアホらしいです。
pcdさんは英語ができるみたいなので、ぜひredditで一喝してやって欲しいです。
当時、黒人の血を引く20歳前後のK-POPファンのアメリカ人女性リアクターが、BAND-MAIDの楽曲として「start over」に始めて反応したことに注目しました。
(2023年現在、アカウントは削除されています)
彼女は、ビリー・アイリッシュ、BLACKPINK、モモランド、LANA、GFRIEND、LOONA、CLC、DREAMCATCHER、Red Velvet等、K-POPとPOPにリアクトしていたのです。
(ようやくマクラが回収できました!)
BAND-MAIDが10年間も日本のポピュラー音楽シーンを生き延び、遅咲きながらアリーナクラスのバンドとして勝ち上がった背景。
それは、半世紀前と変わらないHR/HMファンのリスナーの志向に媚び過ぎることなく、かといってバンドのやりたいことを無理強いして売上と動員を落とすこともない絶妙の匙加減、バランス感覚にあるのではないでしょうか。
BAND-MAID10周年の幕開けとなるガーデンシアターお給仕での「about Us」「Memorable」のバラードのコンビネーション。
ファンが納得するであろうハードロックバンドのバラードであると同時に、BAND-MAIDが消化したブラック・コンテンポラリー、R&B、POPのグルーヴもはっきりと感じることのできるサウンドでした。
・BAND-MAID / about Us (Official Live Video)
https://m.youtube.com/watch?v=qicgVAxCYV8
・Ken Hensley - Bleeding Heart
https://youtube.com/watch?v=MNRJXDsb2Yc
・Deep Purple "Rockin' Pneumonia And The Boogie Woogie Flu"
https://youtube.com/watch?v=ECGft-VgIsg
【2月25日追記】
配信シングルとしてリリースされた「Memorable」スタジオレコーディングバージョンについてのレビューを書きました。
【過去記事】