自分の好みとしては、今までのBAND-MAIDの楽曲中ベスト。
これまで、BAND-MAIDの楽曲中個人的ベスト3は、
- matchless GUM(シングル『YOLO』収録)
- Unfair game(同)
- you.(アルバム『Just Bring It』収録)
でした。
BAND-MAIDは、「matchless GUM」や「Unfair game」のように、ゆったりと重く沈んだリフで牽引するブラック・サバス調のドゥームメタル/クラシックハードロック風の楽曲は抜群に上手い。そして、小鳩ミクさんが、そこにハードボイルド調の歌詞を載せて、ピカレスクロマン(悪漢小説)調の世界観に仕上げる表現力があります。
最新フルアルバム『WORLD DOMINATION』では、ピカレスクロマン路線は、楽曲「Alive-or-Dead」で踏襲。
ギャンブラーのスリリングでアドレナリン噴出気味の瞬間を描写する「Alive-or-Dead」は、ZZ TOPやガンズ・アンド・ローゼズ(Guns N' Roses)の1stアルバム『アペタイト・フォー・ディストラクション』(Appetite for Destruction)収録曲のような、擦れて荒くれたおっさんや兄ちゃんのブギーなノリ。
ZZ TOPのギタボのビリー・ギボンズ(1メートル位あるあごひげを生やした一年中サンタクロースのコスプレしているようなおじさん)が、JB(ジェームス・ブラウン)と演奏でクラブを一緒に回った時、(話しが必要な時に)JBはテーブルの上に銃をドーンと置くので、「マジ怖かった。」というインタビューを読んだことがあります。ロックンロールってそういうスリリングでピカレスクロマンでギャンブラーなノリあるある。
伝説のガンファイト!。実際にJB(ジェームス・ブラウン)は、パトカーの警官隊と銃撃戦を行っています。(もちろん逮捕され投獄されました。)アメリカの芸能界マジヤバいよね。
BAND-MAIDの「Alive-or-Dead」、ヒゲをはやした白人のおじさんがギブソンのエレキギターで、爆音で「ギュイ~ン♪♪」というブギーなノリ。そういうブギーな曲を、キュートなルックスのバンドが演奏するという『ギャップ』は非常にユニークですよね。
また、BAND-MAIDの「you.」(アルバム『Just Bring It』収録)は、エモ・邦ロックのヒット曲調。ドラムソロのイントロアレンジで入ってライブで映える楽曲。
そして、BAND-MAIDの2018年7月25日リリースのシングル 「start over」。
「start over」、今までのBAND-MAIDの楽曲中、一番ブラック・ミュージック的要素強めじゃないですか?
プロ・デビュー5年間で国内、海外のライブで叩き上げ、飛躍的に向上した演奏力と技術力を、遮二無二全力投球するのでなく、俯瞰的に見て、音数も押し出しも引くところは引いて、グルーヴィーに演奏しています。
廣瀬茜さんのドラムと、MISAさんのぐるんぐるん、ぐりんぐりん動き回るベース。リズム楽器にウェイトをおいた歌波さんのギター。今までの全力投球のバンド寄りから、手練れのスタジオミュージシャン・セッションプレイヤー感のある演奏。
本格的なブラック・ミュージックというより、1980年代のイギリスの白人アーティストが、アメリカのブラック・ミュージックを消化して制作したロック/ポップスのテイストを感じました。
ポール・キャラック、シンプリー・レッド、ブロウ・モンキーズ、スクリッティ・ポリッティ、スウィング・アウト・シスター、シャーデー、プリファブ・スプラウト、スタイル・カウンシル、もちろんワム(ジョージ・マイケル)にポール・ヤングにカルチャー・クラブ・・・・・「ブラック・コーヒー・イン・ベッド」をアメリカでヒットさせた頃のスクイーズも入れて良いでしょう・・・。
とにかくものすごくたくさんいたイギリスのブルーアイドソウル(白人の制作・演奏するブラック・ミュージックの意味)系のバンド、アーティスト。
J-POP代表、ドリカム(ドリームズ・カム・トゥルー)が構想段階でバンドのモデルの一つとしたのが、イギリスのスウィング・アウト・シスター(Swing Out Sister)でした。
確かに、「アース・ウィンド&ファイアー(Earth, Wind & Fire)のサウンドをシンセで再現して、ソウルフルな女性ボーカルをフィーチャーし、ブラック・ミュージックとフォーク/ニューミュージックのハイブリッドな音楽を創ります。」と言われても、「ハぁ?」と反応されそうです。
「日本版スウィング・アウト・シスターのようなユニットを目指します!。」と宣言した方が、おしゃれなイメージがわいて、「おお、それは若者に受けそうだ!。」と、話が通りやすそうですよね。
つまり、1980年代のブリティッシュブルーアイドソウルは、J-POPのルーツの一つといっても間違いではないはず。
当時(1980年代)の英アーティストのテイストや音楽の構築の方法は、その後現在に至るまでポップスの一つの基調となり、今まで受け継がれているのでしょう。
そして、ブルーアイドソウル/ポップスに通じるグルーブを持つ楽曲ということは、HR/HM・ラウドロックのリスナー・ファンが、最も苦手とする曲調です。
ぐらぐら、ユラユラ、音楽があちこち揺れ動いて、ヘドバン(ヘッドバンギング)できないような感じで、何とも落ち着かない感触をうけるかもしれません。
「甘いのが苦手」なご主人様、お嬢様には、へヴィーでラウドな楽曲は他に多数取り揃えてあるので、お口直しとしてご容赦くださいということでしょうか。
次からMVの前までの文は、ちょっとややこしい話です。なのですっ飛ばしていただいてOKです。
レゲエ=ラスタファリアニズム(エチオピアの皇帝ハイレ・セラシエ1世を信奉するジャマイカのアフリカ回帰運動)というレベルで、メタル(ヘヴィメタル)=ネオペイガニズム(ヨーロッパのキリスト教伝播以前の原始信仰再興運動)なのかな?と薄々感じるようになりました。
定説とは言えないと思いますが、このフレーム/モデルで見ることによって、見えてくる、理解できることってあるんですよね。外国からは見えない、『社会の分断線』とか『不当に扱われていると思う人の抗議』であるとか『救済への希求』であるとか。
思想・宗教的背景が強固にあり、そこにアイデンティティを持つ個人と信奉者のコミュニティが存在する活動については、部外者が充分な知識・理解を持たずに、スタイルを模倣する等表面的に関わることには、「リスペクト(信奉)が足りない」と批判を受けるリスクがあったりするということです。
BAND-MAIDは、比較的初期の段階から、「BAND-MAIDというジャンルを作りたい。」と、特定のジャンルにカテゴライズされることからのフリーハンドを宣言しています。
この発言の背景には、小鳩ミクさんのクレバーさと直感、勝負勘の鋭さがあるのかもしれません。
BAND-MAID 「start over」、海外のHR/HM・ラウドロック系のレーベルと契約していたりすると出せないタイプの音源な気がします。
制約のない現状だからこそできるチャレンジングな楽曲に、「いいね!」を押します。
P.S. カルト的人気のある1970年頃の英ヘヴィメタルバンド、アイアン・クロウ(IRON CLAW)を聴いてて感じたんですけど、やっぱバンメ(BAND-MAID)さん、(決して名乗らないけど)へヴィメタル/ドゥームメタルのスタイル上手いですよ。鈴木ヒロミツさん、星勝さんらを擁したザ・モップス以来だと思います。
是非、これからもフリーハンドを活かして、いろいろなスタイルの音楽に進出していってください。
◇ BAND-MAID :「start over」
◇ ローリング・ストーンズ(The Rolling Stones):「ミス・ユー」(Miss You)
グルーブといえばローリング・ストーンズ。BAND-MAIDのボーカル彩姫さんは、得意のダンスとふてぶてしさとキュートさを兼ね備えた独特の存在感を活かして、女性版ミック・ジャガー的なポジションを目指せる可能性があると思います。
◇ マルーン5(Maroon 5):「ムーブ・ライク・ジャガー」(Moves Like Jagger)
典型的な白人が演奏するブラック・ミュージック。若き日のミック・ジャガーは、JB(ジェームス・ブラウン)のダンスを消化し、マルーン5のアダム・レヴィーンは、ミック・ジャガー公認のもとオリジナルMVにミック・ジャガーの映像をふんだんに使用しました。海外のメタルを熱心に聴く人(メタルヘッド)の中には、こういうポップを聴かせると真剣に怒る人が少なからず存在します(もちろん柔軟な人も多いです)。マルーン5を好む人とメタルヘッドの一部は、実生活で一生接点がないこともあるはず。それにしてもマルーン5は、ミック・ジャガーあるいはストーンズに映像使用料をいくら払ったのでしょうか?
https://www.youtube.com/watch?v=H7s80FB8418