人の声を機械的に加工し楽器のように使う、あるいは楽器の出す音を人の声とミックスする等の効果は1970年代からポップミュージックで広く使われています。スティーヴィー・ワンダーやピーター・フランプトン等のヒット曲、そして、ザップ(ロジャー)等のファンクのトレードマークとなっているトーキング・モジュレーターがそうですね。
クラシックロックを代表するイギリス出身のギタリスト、ピーター・フランプトンのヒット曲「ショー・ミー・ザ・ウェイ」を聴かれると「アァ、アレか」と気づかれると思います。
◆Peter Frampton Show Me The Way (Live)
https://www.youtube.com/watch?v=UAynwzutk0A
現代では入力装置が口にホースを咥える大がかりな仕掛けが必要なトーキング・モジュレーターを使うのは様式美にこだわるファンク系のミュージシャン位でしょう。同様の効果を得られるヴォコーダーやオートチューン等が主です。
で、BAND-MAID「Manners」(『Unseen World』)なんですが、同じネオクラシックロック路線の「CHEMICAL REACTION」が、ワウペダル+カウベルで「20代のミュージシャンが考える高齢ロックファンへのホスピタリティ全力追及」みたいな仕上がりになっているのと比べ、「クラシックロック風ながらモダン」に仕上がっている感があります。
BAND-MAIDの前作アルバム『CONQUEROR』は、中ノ森文子さんのボーカルディレクションによる分厚い「コーラスの壁」が、カントリーを連想させるテンポと相まって1970年代のアメリカンプログレッシブハードロック(ボストン、カンサス、スティクスetc)風のテイストを実現していました。
『Unseen World』収録曲の「Manners」、リフを弾くというまでの長さではないのですが、人声を加工して楽器として使用し効果を出している点がユニーク。MVでは小鳩ミクさんが映し出されている「アーアアアアアアアッ♪」というパートです。ギターリフとこのボーカルパートが「Manners」を強く印象付けています。
一聴するとサイケデリックロック、ハードロック、ヘヴィメタル(ドゥームメタル)等のクラシックロック風でありながら、決してクラシックにとどまらないモダンさ。
BAND-MAID『Unseen World』は、初回限定盤のみDisc1[原点回帰-Roots]、Disc2[現点進化-Progress]のCD二枚組セットの構成です。クラシックでありながらモダンな「Manners」は両CDに同じテイクが収録され、原点回帰(ルーツ)と現点進化(プログレッシブ)をつなぐ役割を果たす位置づけの曲なのです。
◆BAND-MAID / Manners (Official Music Video)
https://www.youtube.com/watch?v=-FWuMx_pkH4
◆Roger - I Want To Be Your Man (Official Music Video)
https://www.youtube.com/watch?v=c1xf_RWhwso
◆Whiskey Dust 2020.10.18 @ Atsugi THUNDER SNAKE, Kanagawa
サイケでドゥームなHR/HMを得意とするWhiskey Dust。「マネキン」の1970年代ハードロック風のくどいエンディングがナイスですね。
https://www.youtube.com/watch?v=I1wYzL_ZsyQ