BAND-MAID『Unseen World』から「Manners」「Warning!」に続き3週続けて最後に発表されたMV「After Life」が3曲の中でも特に好調です。
「After Life」のMVはYogee New Waves 「Bluemin'Days」や、あいみょん「朝陽」などのMVも手掛けた新進気鋭の映像作家Pennacky(ぺんなっきー)の手によるもの。
MVに限らず芸術作品は作家の手を離れてから様々な解釈がされます。時に「そういう受けとめ受け止め方もあるんだ?!」という作家側の意図を離れた解釈も、必ずしも間違いとは限らないところがユニークであり難しいところ。
という前置きを書いた上で一つの勝手な解釈を述べさせていただきます。
【来世】仏教で、三世(さんぜ)の一つ。現世や前世に対しての、死後に生まれ変わって住む世。後世(ごせ)。
https://kokugo.jitenon.jp/word/p53155
BAND-MAIDはこれまでも歌詞とMVの表現において繰り返し死生観や宗教観、独自のジェンダー観等を表現してきました。その延長線上にある作品が「After Life」です。
「現世」があるから「あの世」がある。前者と後者を隔てるライフイベンドは「死」です。つまり、BAND-MAID「After Life」は、小鳩ミクさんの死生観、宗教観を表した楽曲なのです。
「After Life」MVの構図は、意図的に奥行を抑え平面的な演出になっており、あたかも小劇場の観客席から演劇の舞台を見ている感覚です。
右側のBAND-MAIDが演奏する部屋は来世、左側のメイド喫茶の従業員の待機室は現世。
右側のバンドの演奏エリアの描写は深夜の病棟や遺体安置室等を連想させます。
左側の待機室では、現世において主人公が悶々と奮闘していた様が描かれています。
「煩悩即菩提」「生死即涅槃」。
楽曲タイトルとMVは「死」と「転生」を表現しています。つまり、現世において苦悩、煩悩と葛藤していた自身の姿が走馬灯のように再現され、それを幽体離脱した魂が愛おしく眺めている構図ともとれます。
冒頭のメイド喫茶時代の主人公の思いつめたような無表情は死期が近づいていることを連想させます。右側の部屋(病棟)の小鳩ミクさんの(メタルで死体や悪魔を表現する)コープス・ペイントを連想させる濃いメイクはそれに対応したものでしょう。
煩悩極まり、主人公が発煙筒を「来生」に向かって投げつけるシーンは、「魂」が現世から来生へと跳んで抜ける様を表しているのでしょう。
発煙筒の赤は魂(人魂)の炎の赤、ラストシーンのドラマー廣瀬茜さんが炎の赤に包まれるような照明の中演奏するシーンが対応しています。
現世において憤死、悶死した魂が、来生、ロックンロール(ロック)として転生する。
大円団の5人がコレオグラフダンスを踊るシーン。
意味としてはジャズが涵養されたニューオーリンズの葬送パレード(ジャズ・フューネラル)のセカンド・ラインに近いのではないでしょうか。
セカンド・ラインのパレードの音楽と踊りは、魂が解放され天国へ行くことを祝う意味があるとされています。
◆BAND-MAID / After Life (Official Music Video)
https://www.youtube.com/watch?v=2MOvCkCqz_U
◆Funeral parade with the Dirty Dozen Brass Band: Feet Don't Fail Me Now (1982)
https://www.youtube.com/watch?v=uFf0qPBcAd4
◆Dirty Dozen Brass Band - "Use Your Brain" | a Do512 Lounge Session
https://www.youtube.com/watch?v=oXSf4GwNfhY