いきなりですがGoogle先生、”山本太郎”・”池田勇人” のワードで検索すると、”やまもといちろう”・”イケダハヤト”の検索結果ばかりずうっと表示されるのはどうにかならないでしょうか(笑)?
そうです。 漫画『疾風の勇人』(大和田秀樹先生)で描かれた”所得倍増計画”の池田勇人さん(第58-60代内閣総理大臣)ですよ。
国全体の所得(GNP、ほぼ現在のGDPと同じ)、一人ひとり(家計)にとっては収入が2倍ですよ、2倍。
さらに、失業中の人は全員仕事に就けるようにして、医療・福祉も行き渡るようにしょうという計画です。
期間は1961年間から10年間。10年間で国民所得を2倍にするという計画でした。
で、実際はどうなったかというと、4年間で2倍、10年間で約4倍を実現しました。
コトバの使い方って大事だと思うのですよ。”コトダマ(言霊)”と言って、意味不明の言葉や乱暴な言葉を振り回して罵倒することを繰り返していると、ブーメランのように自分に帰ってきてダメージを受けることがあります。
山本太郎代表の「れいわ新選組」って、”左派ポピュリズム”じゃね?はたまた、”令和の田中角栄!”と期待する向きも少なくないようですが、実際のところどうなのでしょうか?
↓ このテキストが山本太郎さんの政策の基本姿勢を表明しているようです。
例えば1970年代に首相になった田中角栄さんは「列島改造論」を唱え、公共工事を積極的に行いました。福祉にも力を入れ、再配分を強化しました。
冒頭に名前とその姿勢、政策が出てくるのが、田中角栄内閣総理大臣(第64・65代)。
つまり、山本太郎さんは、故・田中角栄元首相の後継者・フォロワーを目指すと言っていると解釈するのが自然でしょう。
さらに、
・とにかく景気をよくしなければならない
・必要な公共工事は大切!
という章があり、財政出動により需要を喚起するという伝統的なケインズ経済学に基づく財政・経済政策が述べられています。
これらは、伝統的に日本のリベラル・左派勢力が最も忌み嫌う、土木建築を中心とした公共事業です。
アメリカではドナルド・トランプ第45代アメリカ合衆国大統領が、21世紀のニュー・ディール政策ともいうべき大規模公共事業の実施を大統領選挙戦から一貫して主張してきました。
(2016年大統領選挙戦当時)
「我々皆が、ケインジアンだ」とは、ニクソン米大統領が1971年に新経済政策を発表した当時に口にした言葉だ。あれから45年を経て、民主党と共和党の候補者が財政拡大並びにインフラ投資計画を立てている。
トランプ氏は米国のインフラを「第三世界なみ」と呼び、全面的な改善を通じた雇用創出を主張している。
(2019年)
(2019年)4月30日、ドナルド・トランプ米大統領と野党・民主党指導部が2兆ドル(約220兆円)のインフラ投資法案の検討を始めることで合意した。
米国の新しいインフラ政策の動き~ブラウンフィールド法改正、そして日本への示唆~
(2枚目)トランプ大統領のインフラ投資政策(概要)
https://www.ares.or.jp/publication/pdf/ARES46p8-17.pdf?open=1
上の山本太郎さんのテキストを眺め、その基本姿勢は、保守本流・右派・伝統的なケインジアンであると判断しました。
では、左派ポピュリズムという見立て、指摘は間違っているのでしょうか?
大規模公共事業によって需要を創出し、雇用を生み出し(完全雇用)、経済を成長させる典型的なモデル、ルーツは、ドナルド・トランプ大統領が目指すようにルーズベルト大統領時代のニューディール政策です。
ルーズベルト大統領時代のニューディール政策には、19世紀末アメリカの人民党(ポピュリスト党、正式名称はピープルズ・パーティー)の主張や代表的なポピュリストであるウィリアム・ジェニングズ・ブライアンさん(民主党大統領候補)らの思想・運動が反映され、盛り込まれています。
農民、労働者の救済、地位向上を強く訴えた民主党大統領候補ウィリアム・ジェニングズ・ブライアンさんの思想・主張は、金融資本家層からは急進的・左派的、あるいは金融システムを混乱させるものとして強く警戒されたのではないでしょうか。
そのことが、共和党大統領候補のウィリアム・マッキンリーさんに敗退した理由の一つでないかと推測しています。
アメリカ大使館の広報・交流部門『アメリカンセンターJAPAN』は、様々なアメリカ合衆国に関する統計・ドキュメントを公開しています。
その中のアメリカの歴史の解説に、1896年民主党全国大会でウィリアム・ジェニングズ・ブライアンさんが行った「クロス・オブ・ゴールド」演説についての記述があります。
『アメリカンセンターJAPAN』は、代表的なポピュリストであるウィリアム・ジェニングズ・ブライアンさんについて、”米国政治史上有数の著名な演説が大きな影響を与えた”と、アメリカで高く評価されていることを説明しています。
このことは、演説の内容への賛成、反対は別として、英語圏で政治家やリーダーを志す人の多くは、リーダーとしての演説の教材として、「クロス・オブ・ゴールド」を学び研究しているであろうことを示しています。
進歩的・左派的とされた1896年の「クロス・オブ・ゴールド」演説から123年後の2019年の日本。
れいわ新選組代表の山本太郎さんの主張が、ウィリアム・ジェニングズ・ブライアンさんの主張に近いのです。
近いというより、エンジン部分が同じです。
通貨を大量に発行し、財政出動により需要を創出し、賃金を上げ、困窮する農民や労働者の生活を向上させるという主張が同じなのです。
つまり、山本太郎さんの主張は、20世紀の視点では、保守本流・右派・ケインジアンですが、19世紀末の視点からすれば、”左派ポピュリズム”になるかもしれません。
そして、2019年大ブームとなっているMMT(現代貨幣理論)による財源をベースとした積極財政策・ケインズ経済については、日本では同様の考え方=政府貨幣論が、少なくとも25年以上前から、一部で支持されてきました。
亀井静香さんは1990年代半ばに建設大臣、運輸大臣等を歴任した大物保守政治家です。
亀井静香さんは、2009年に内閣府特命担当大臣(金融担当)に就く7か月ほど前に、2019年大ブームになっているMMT(現代貨幣理論)に類似した考え方のプレゼンを受けています。
こういった経緯は、おそらく2019年に亀井静香さんが山本太郎さんを援護射撃する発言をしていることと無縁ではないかもしれません。
そして、実は、決してメジャーな考え方とはなっているわけでない、(中央銀行発行ではない)政府発行貨幣を根拠とする積極財政策を日本で長年根強く主張してきた方達には、いわゆる右派、保守派、民族派に位置付けられる方が少なくありません。
自民党の京都選挙区選出の参議院議員、西田昌司さんといえば、おそらく、左派・リベラル側の視点・立場から見ると(超?)タカ派、(極?)右と認知されているはずです。
しかし、実は所属政党や左右の枠を超えて、山本太郎さんの主張する財政・経済政策に最も近い主張をしている政治家が西田昌司さんであるのは事実です。
西田昌司さんもまた、MMT(現代貨幣理論)、国債増発による財政出動、消費税増税反対、需要サイドに立った経済政策等のケインズ経済学に親和性の高い財政・経済政策を根気強く主張しています(需要サイドに立ったケインズ経済学に対し、平成の日本を覆ったハイエク、フリードマンらにルーツのある新自由主義的経済思想をサプライサイドエコノミクスといいます)。
そして西田昌司さんは日本での一般的受け止め方としての"ポピュリズム"については鋭く批判しています。
現代では、本質や内容理解を一切無視し、"右"、"左"、"ポピュリズム"等の単語に、他者(他コミュニティ)と文脈を共有できないマイナスのニュアンスを込めた"レッテル張り"、"罵倒芸"による批判、否定が横行しています。
しかし、政治家や政治思想を、単純に"右"と"左"に分けて理解しようとすると見誤ってしまうことが少なくないのです。
日本の左派・リベラル勢力が一貫して闘ってきた相手とは、実は、”田中角栄的なるもの”、つまり日本に土着したケインズ経済政策です。その実行局面が、左派・リベラル勢が蛇蝎のごとく嫌悪する金権政治、公共事業、利益誘導等なのです。
しかし、日本の土着的な保守・ケインジアン勢が倒されたのは、伝統的な左派・リベラル勢によってではなく、サプライサイドエコノミクスを主張する新自由主義(ネオリベラリズム)によってでした。
このような歴史的経緯から、右派・保守・土着型ケインジアンと、左派・リベラル・ネオリベラルというのは混じることなく棲み分けしています。
左派・リベラルの息のかかった人脈から、「何?景気が悪いだ?中央銀行の輪転機をフル回転させて、お金じゃぶじゃぶ刷ったれ、刷って刷って刷りまくれ!それでどっかんどっかん工事するんや!掘って掘って掘りまくれ!」という景気の良い政策は絶対に出てこないのです。
会話調のパートは、誇張して言っているのではなく、実際に田中角栄さんの秘書だった方が月刊誌のコラムに書いた”経済政策”のニュアンスをトレースしたものです。
政界を引退後文筆家になったその方は、かつて同じ釜の飯を食ったファミリーである小沢一郎さんが率いる党がどんどん小さくなりながらも選挙で生き残る様に、「イチローを殺してはいかん!(日本の政界に必要な男だ!)」と絶叫調で主張していました。
文筆家とは作家の故・早坂茂三さんです。
"坂本龍馬神話"を創ったのが司馬遼太郎さんだとすれば、今日まで何度もブームを起こした"田中角栄神話"を後世に残したのは早坂茂三さんでしょう。
小沢一郎さんら一門はもちろん、田中角栄さんを「オヤジ」と呼びますが、その小沢一郎さんを「親方」と呼ぶ山本太郎さんが、田中角栄的なものを引っ張り出して主張するのは、意識してのことかもしれません。
このような背景は、山本太郎さんが、実際にMMT(現代貨幣理論)に基づく積極財政政策を実行しようとする際に、右派、保守派、民族派の人脈までウィングを広げ、採りこむ(呑み込む)可能性を示唆しています。
19世紀末のポピュリズム運動は銀本位制をその根拠としました。
21世紀のポピュリズム運動は、MMT(現代貨幣理論)に基づく積極財政に加え、仮想通貨、ブロックチェーン技術等を基にする暗号資産をその根拠とするかどうかについては、現時点で言及する材料を持っていません。
その年(1896年)の民主党大会では、米国政治史上有数の著名な演説が大きな影響を与えた。「人類を金の十字架にかけてはならない」と訴えた、ネブラスカ州出身の若い銀本位制支持者ウィリアム・ジェニングズ・ブライアンが、民主党大統領候補に指名された。ポピュリスト党もブライアンを支持した。
◆新月灯花「選挙の日」MV
◆John Mellencamp - Pink Houses (Live at Farm Aid 1987)
これはファーム・エイドでのライブですが、2016年のアメリカ合衆国大統領選挙当時、MV本編のコメント欄が賑わいました。ジョン・メレンキャンプはインディアナ住みで、「ピンク・ハウス」のMVで描かれている世界観は、ラストベルトを強く感じさせたからかもしれません。
◆SY51 - แสงแห่งความหวัง Silver Lining [ Official MV ]
Every cloud has a silver lining.
空を覆った雲の間から必ず希望の光が射すだろう。