1966年のビートルズ来日騒動の際、経済評論家の小汀利得(おばまとしえ)さんが、細川隆元さんとの人気対談番組『時事放談』中、「乞食芸人」、「ファンは※※※※」、「あんな連中に外貨を渡すな」等、あまり上品とは言えない語彙でディスられ、大きな反響を呼んだことは、日本のサブカルチャーの歴史上有名なエピソードです。
テレビの『時事放談』で、時の人気政治評論家の細川隆元氏と小汀利得氏が、『あの薄汚い西洋乞食のような連中に、天下の大新聞ともあろうものが、貴重な外貨を使うとは何事か』と噛みついた、といういきさつがあり、右翼の街宣カーまでが、神聖な武道館を貸すな!と走り回って、私のような吹けば飛ぶような人間は、ふるえながらも頑張って発言していた。(湯川れい子氏)
ビートルズのファンの若い世代の女性達は、小汀利得さんの発言に憤懣やるかたなく、結局スタジオでファン代表と細川隆元さんと小汀利得さんのコンビが対談する『手打ち』が行われました。
細川隆元さんと小汀利得さんのお二人が、ビートルズの音楽を理解したのかは不明ですが、一連のビーフというかディスが、お二人の『ガンコ親父キャラ』としてのブランドを損なうことなく、むしろ、反対にブラッシュアップすることになったのではないかと推測します。
『ドント・トラスト・オーバー・サーティー(30)』
(30歳以上の大人は信じるな!)
シンガーソングライターのあいみょんが深く敬愛する日本のロックンローラー浜田省吾さんは、かつて、ロックンロールメドレーにおいて、「30歳以上を信じるなと言われたが、おれも30歳になってしまった!」とMCされています。
ロックが10代の音楽であり、「30歳以上の『大人』を決して信じるな!」というロックの憲法ともいうべき大原則に則った正しい若者であるためには、この世界観にかなった、正しい『敵役』としての大人の存在が欠かせません。
細川隆元さんと小汀利得さんの示した保守的な大人像は、現代ではすでに滅びてしまった貴重なロールモデルでもあるのかもしれません。
平成仮面ライダーの世界観はなかなかに多様性に富んでいるようなので、ここでは昭和仮面ライダーについて述べますが、ショッカーがいない世界では、仮面ライダーは失業してしまい、仮面ライダーの正義の闘いというミッションもアイデンティティーも否定されてしまいかねません。
それを、国際社会の安全保障における『脅威』の例えにシフトしようとすると、とたんに陰謀論めいてしまいますが、少なくとも、ヒーロー物のエンターテインメントの世界観において、強く憎々しい敵役の存在こそ、ヒーローを輝かせる最大の存在であります。
歴史の流れからすれば、ビートルズ来日騒時の細川隆元さんと小汀利得さんのお二人のご意見番は、若者が主役として活躍する物語の世界観における正しい敵役を演じられたように思います
そういうわけで、推し(アイドルであったり、バンドであったり、声優さんであったり、あるいはスポーツ選手であったり、いろいろあろうかと思います)が、ディスられた時、どのように対応するのが適切なのでしょうか?
激高し、憤怒にかられ、『やられたらやり返せ!』とばかり、インターネット空間上で反論、反撃し、結果、ベトナム戦争末期におけるアメリカ軍の如く出口の見えない泥沼に陥いる例が見受けられます。
結果、「あそこのファンは危険だ」と、推しのファンダム全体の評判を落とし、推しに迷惑をかけることとなる例が少なくありません。
新潟を拠点とする女性アイドルグループNGT48を取り巻く、運営の対応にも原因のある一連の混乱と、それに対するオタの対応を見ると、もはや、誰が味方で、誰が敵かわからないような状況の下、ひたすら破壊的、攻撃的なテキストの弾の撃ち合いが続いたように見えます。
一人ひとりのオタは、義憤にかられ、夫々の正義を掲げ悪と闘っているつもりでも、その光景たるや、もはや正義や悪を誰も判別することの困難な、終わることのない白兵戦、消耗戦の死屍累々たる光景。
清冽なイメージにお金を支払うスポンサーが関わることは極めて困難な状況ではないでしょうか。
Father's son 答えを探さないで
何も意味など無い
You're only Father's son Carry on
覗かないで
勝利も敗北もなく 横たわっている
心の奥の暗闇
(浜田省吾「Darkness in the Heart」)
推しに対する心無い言葉が投げかけられ、憤懣やるかたないとき、義憤にかられるまま、自ら正義と信ずる鉄槌を下すために、電脳空間へと参戦するのか?
その先に、正義も悪も、勝利も敗北ない、倒した悪の仮面を剥げば、それは、自分自身であったという、BABYMETAL「KARATE」やBNK48「Beginner」の世界観に描かれるゾロアスター教由来の善悪表裏一体論を思い知るまでに、泥沼の闘いを続けどれだけのものを失うことになるのか。
一つの方法は、ファンクラブ等を通じて『運営』(マネージメント)とコミュニケーションを取ることでしょう。
芸能事務所は、顧問弁護士と契約しており、必要と判断すれば当局と相談の上、被害届を出すことになります。違法・触法行為にいたらなくとも、イメージを損ないかねないと判断すれば、しかるべき手を打たざるをえません。
クラブやフェスで治安を維持するために、頑強なバウンサーを雇うように、ネット上のパトロール(書き込みェック)を業務としている会社等に発注することもできます。
クライアントの求めるゴールの設定、撤退のタイミング、落としどころ等、それで飯を食っているその道のプロは結果が求められるものです。
戦い疲れた兵士が今
帰ってきたよ 帰ってきたよ
愛はいつも悲しみだけを
君のもとに 残してきたけど
人はいつも 失したものの
重さだけを 背負ってゆくけど
愛はいつも悲しみだけを
君のもとに 残してきたけど
◆JOKER - Final Trailer
https://www.youtube.com/watch?v=foOygVE96C8
◆BNK48「Beginner」
https://www.youtube.com/watch?v=IptefJ9C4PY
◆Bob Dylan - Slow Train (San Francisco, CA - Nov. 16, 1979) (Audio)
https://www.youtube.com/watch?v=_GjKIh8_EPk