2019年9月26日、アメリカ・ニューヨーク『Gramercy Theater』にて、「BAND-MAID WORLD DOMINATION TOUR 2019【激動】~gekidou~」と銘打ったワールドツアーの米国編初回のお給仕(ライブ)が行われました。
このお給仕は、アニソン、ゲーム、CMソング、J-POP界のビッグな作曲家・歌手・ピアニストのしほりさんがご帰宅され、パフォーマンスを激賞されました。
◆アニソン界代表としてNHKFM放送で講師を務められるしほりさん
午後2時から「アニソンアカデミー」スタート!進行役は作曲家の田中公平さん&あべし!講師にしほりさん、ゲームミュージックでもおなじみの伊藤賢治さんをお迎えします!お楽しみに♪ #aniaca
— NHK-FM アニソンアカデミー (@nhk_anison) August 6, 2016
楽曲面では、新インストゥルメンタル曲(歌の入らない楽器のみの曲)が演奏されたことが話題を呼びました。
BAND-MAIDのインストゥルメンタル曲は、「onset」、「Without Holding Back」に次ぎ3曲目。
新インストゥルメンタル曲(正式曲名不詳)の特徴は、フロントの弦楽器3人のアンサンブルの変化・成長に見えます。
小鳩ミクさんのギターのボリュームが絞られていた(?)2016年当時は、MISAさんのベースがリズムギターの役割も担い、時にはリード楽器としても前に出てきていた感がありました。
小鳩ミクさんのリズムギタリストとしての急激なスキル向上・ブレイクスルーが、一時は(2018年~2019年前半頃か)、リズムギターが全面的・前面的にバンドアンサンブルをけん引し、ある種アグレッシブでパンキッシュなサウンドの感触がありました。
小鳩ミクさんのリズムギターがバンドアンサンブルで突出していた時期の役割分担は、
小鳩ミクさん = 『打楽器型ギタリスト』
遠乃歌波さん = 『弦楽器型ギタリスト』
でした。
小鳩ミクさんのギタリストとしてのスタイルは、ミック・グリーン(ジョニー・キッド&ザ・パイレーツ)→ウィルコ・ジョンソン(ドクター・フィールグッド)→アンディ・パートリッジ(XTC)→布袋寅泰さん(BOØWY)→MIYAVI→小鳩ミクさんの系譜のように聴こえました。
一方の遠乃歌波さんのギターは、ジャズ・フュージョンやクラシック・ロックを基礎とする堂々たる伝統的なスタイル。
ラリー・カールトンとカルロス・サンタナに最大の影響を受けた遠乃歌波さんは、BAND-MAIDでハードロックの演奏を追求するにあたって、スティーヴ・ヴァイやリッチー・コッツェンやポール・ギルバートらのモダンハードロックのテクニカル派のギタリストの影響を消化されているのでしょう。
もちろん、ワウペダル(足でペダルを踏んで、「ほにゃらか♪ ほにゃらか♪」とギターの音を揺らす装置)の多用に表れるように、HR/HMギターの基本のジミ・ヘンドリックス(そしてその影響を強く継承するギタリスト)についてはかなり研究されたはずです。
HR/HM(ハードロック・ヘヴィメタル)の2本のギターの役割というと、ウィッシュボーン・アッシュ、シン・リジィの影響を受けたアイアン・メイデンに代表されるツインリードギター(ハモリ)等を連想される方が多いはずです。
註)NY公演を、シン・リジィを手掛けた大物プロデューサー、トニー・ヴィスコンティが観戦し、写メを撮っています。
BAND-MAID!!!! You've heard of J-Pop. They are J-Prog Rock! They shred! Saw them last night. They play #HOB Dallas tonight and #Echoplex Los Angeles 9/30 and 10/1. Seeing is believing. pic.twitter.com/H2d3VoaGsf
— Tony Visconti (@Tonuspomus) September 28, 2019
もとい、バンドアンサンブルにおけるクラシカルなスタイルのツインリードギターについては、得意とする他のバンドに任せた方が良いと思っています(例えば、博多出身の嬢メタルバンドのBRIDEAR等)。
時間という資源には限りがあるからです。
20歳代の半ばになってから、『HR/HMギター虎の穴』、『大リーグギター養成ギブス』のような方法で、速弾きやタッピング等のテクニカルな奏法を毎日10時間練習するというのは現実的ではありません。
2018年頃のBAND-MAIDが、パンキッシュ×クラシカルといった革新的で、他のバンドにはないスタイルの2本のギターアンサンブルを追求した方向性は正解だったと思います。
2019年9月のNY公演では、小鳩ミクさんが爆発的なギタースタイルから一歩引いてバランスを再構築することも可能になり、フロント3人の弦楽器のバンドアンサンブルが成熟した感があります。
『一本でもニンジン』ならぬ『一本でもオーケストラ』なのがギターという楽器。二本のギターを活用すると表現の幅が飛躍的に広がります。
◆神鬼(シンキ)「SHINKI 神鬼芸術」(LIVE in Blue beat. 2011.06.22)
途中(05:30~あたり)で(おそらく)『走る汽車』を表現するのにギターを叩いていますね。
デヴィッド・ボウイと組んでいた時のブライアン・イーノが、ステージでシンセサイザーを用いて機関車のサウンドのパフォーマンスをしていましたが、生身でギターで演るほうが難易度高そう。個人的には、デヴィッド・ボウイはブライアン・イーノとのベルリン3部作(『Low』、『Heroes』、『Lodger』)と、ナイル・ロジャースと組んだディスコ・ソウルの『レッツ・ダンス』の方向が好みかも。
◆Thin Lizzy「The Boys Are Back In Town」 (Live)
from『Live and Dangerous』(トニー・ヴィスコンティ プロデュース)
https://www.youtube.com/watch?v=UBnPENxup0I
◆Thin Lizzy「Waiting For An Alibi」from『Black Rose』(トニー・ヴィスコンティ プロデュース)
https://www.youtube.com/watch?v=xYmwCH_oFiw
◆(たぶん)「クラシカルなツインリードギターなら私たちにお任せください」とおっしゃるBRIDEAR。
<関連エントリー>
T.REX、デヴィッド・ボウイ、アダム・アントら往年のグラム・ロックを手掛けたトニー・ヴィスコンティなら、ある意味現代版グラムロックでもあるBAND-MAIDのお給仕に大喜びするのはよくわかる気がします。