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【イサーンからの】『ルークトゥンアイドル』はK-POP(PRODUCE101)や日系アイドル(BNK48)を意識しているのか?【カウンター?】

 

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タイ・サバイバルオーディション番組『ルークトゥンアイドル』が話題に

  

タイで放映された新サバイバルオーディション番組『ルークトゥンアイドル 』が現地のSNSや報道で話題になっています。

 

どこが話題になっているかというと、『ルークトゥンアイドル』の演出が、アジア各国で人気の高い韓国のMnetのオーディション番組『PRODUCE101』に似てるのでは?という点です。


◇ลูกทุ่งไอดอล - เปิดตัว 100 คนสุดท้าย [Official MV]

こちらが、タイで話題の『ルークトゥンアイドル』のMV。

https://www.youtube.com/watch?v=MsZWh4ANhlY

 

 ◇この件を報道するタイの報道。

www.khaosod.co.th

www.dailynews.co.th

 

タイの固有事情『イサーン』と『ルークトゥン』について

 

まず、サバイバルオーディション番組『ルークトゥンアイドル』が『PRODUCE101』に似ているとの話題、報道について見ていく前に、知っておいたほうが理解しやすい現地の固有事情があります。

 

それは、タイ(とラオス)の固有事情、ルークトゥンとイサーンについてです。

 

以下順に説明していきます。

 

タイ・イサーン地方とは何か ?

 

箇条書きで列記させていただきます。詳しくは章末の参考文献(サイト)をごらんください。

 

・まず、現地に関係する言語(タイ語ラオス語、フランス語等)では、ラオ=ラオス=ラオ人・ラオ民族の意味である。

・歴史上、現在のタイのイサーン(またはイーサーン、東北)地方と現在のラオス国は、同一の民族、生活、文化、風習を持つラオ人が住んでいた。

・歴史的に現在のタイのイサーン地方と現在のラオス国の地域を統一した領土として支配していた王権が存在した。

・このラオ(人、民族)の住んでいた地域が、タイ(シャム)による支配、フランスによる植民地化等により、現在のタイのイサーン地方とラオス国の二つの地域に分かれた。

・タイ政府は、もともとラオだった地域の住民にタイ人としてのアイデンティティを育てるために、ラオという呼称からイサーン(東方)地方という呼称に改めた(同化政策)。

・そして、タイ政府はイサーン地方に標準タイ語教育を進め、ラオス文字の替わりにタイ語文字を導入し、標準語化した(公文書等)。

・そのため、現在もイサーン地方では、標準タイ語と生活言語である元のラオ語の二つの言葉が使われる。イサーン地方で話される元のラオ語をタイ国内では(タイ語)イサーン方言と呼ぶ。

ルークトゥンとは、タイのイサーン地方の生活に根差した大衆音楽、文化である。(バンコクの音楽、文化とは異なる)

・それに対して、一般にタイポップとして知られるポピュラー音楽は、バンコクで発展した音楽のことである。

 

詳しくは、タイ、ラオスの現地事情に精通されているタイ語翻訳者の方が、歴史的経過をまとめられた以下の記事が参考になります。

sripasa.com

 

イサーン地方の生活・文化と密接に結びついた大衆音楽『ルークトゥン』とは何なのか?

 

ルークトゥンについては、東京都写真美術館で開催された『爆音映画祭2019 特集タイ/イサーン VOL.3』の解説文『イサーンとは』がコンパクトに記述されていて参考になります。

www.bakuonthai2019.com

 

上記記事の概要から抜き出した要点が以下です。

 

・タイの人口6,178万人のうち、バンコク圏の人口は約1,456万人(バンコクのみは約825万人)である。

・それに対し、イサーンの人口は約2,000万人(※タイの全人口の約1/3)。つまりバンコク圏の人口を数では上回っている。
・イサーンの食文化はバンコクとは異なる。ソムタム、ガイヤーン、ガオニャオ(もち米)等が有名である。
・イサーン人は痩せた土地での農業従事により低所得であることが多く、生活のためにバンコクへ出稼ぎに出る者が多い。バンコクでは中央タイ人が敬遠する職に就くことが多く、バンコク住民から蔑視されがちである(人種差別がある)。
・イサーン地方は伝統的に娯楽が盛んで、イサーン住民を対象とした音楽、映画が1960年代より大量に作られるなど、(バンコク圏とは異なる)『独自の大衆文化』『大衆芸能』が発展してきた。

 

『PRODUCE101』とはどのような番組?

 

今回似てると話題になった『PRODUCE101』とは、 韓国系音楽専門チャンネル『Mnet』が放送するサバイバルオーディション番組で、Wanna One、JBJ、RAINZ等の人気グループを産み出してきました。

 

そして、『PRODUCE101』のシーズン3に当たる企画が、日本のAKSAKB48グループの運営)とMnetがコラボレーションした『PRODUCE48』で、ここから日韓混成のアイドルグループ『IZ*ONE』が誕生しています。

 

IZ*ONE(アイズワン)には、タイで2017年のデビュー以来国民的人気を獲得しているBNK48姉妹グループの日本のAKB48グループ(HKT48AKB48)から、宮脇咲良さん、矢吹奈子さん、本田仁美の3名がメンバーになっています。

 

ルークトゥンアイドル』はK-POP(PRODUCE101)や日系アイドル(BNK48)を意識している?

  

番組の演出を見る限り、大いにしている、あるいは刺激を受けているのではないかと思います。

 

ここでは、タイ・イサーン地方発祥の大衆音楽であるルークトゥンとモーラム(両者は密接な関係のもと発展してきました)の定義には触れません。

 

アメリカ、イギリスを例にとると、リズム&ブルースとブルースのそれぞれの定義と境界は?とか、ハードロックとヘヴィメタルのそれぞれの定義と境界は?とか、フォークとカントリーのそれぞれの定義と境界は?とか、ジャマイカとイギリスなら、スカとサウンドシステムとレゲエの定義と境界は?というような命題になって短い字数では踏み込みにくいのです。

 

ざっくりルークトゥンの音源を聴いても、非常に柔軟に東アジアの大衆音楽(日本の歌謡曲や韓国のK-POP等)、西側の大衆音楽(ジャズ、ラテン、ロック、カントリー、スカ、リズム&ブルース、R&B、ヒップホップ、ドラムンベース・・・)等を吸収して発展してきているのがわかります。

 

ルークトゥンの雑食性というか間口の広さは日本の歌謡曲並みかそれ以上のような気がします。日本の歌謡曲は一時期ハワイアンとかマンボの影響も強かったですね。中華系の大衆音楽、例えば中国のマンダリンポップ等の影響についてはわかりませんでした。

 

バンコクを発信源として日本発祥のモデル・コンセプトを導入したアイドルグループ(BNK48)がタイ芸能界を席巻したことは、ルークトゥンのプロデューサーやレーベルや歌手やミュージシャンは、注視していると思います。

 

なので『ルークトゥンアイドル』は、日系スタイルのアイドルブーム勃興は当然背景として踏まえた企画であろうという印象を持ちました。

 

みなさんは、『ルークトゥンアイドル』ลูกทุ่งไอดอล - เปิดตัว 100 คนสุดท้าย [Official MV] をご覧になってどう感じられましたでしょうか?

 

日系新世代タイアイドルBNK48切れ者の”運営”は、バンコクエスタブリッシュメントによるルークトゥン批判をどう見ていたのか?

 

ルークトゥンでは、伝統的に露出度の高い衣装を着た両サイドの女性ダンサーが踊るスタイルが多いです。また、歌手自身も露出度の高い衣装や演出を行うことも少なくありません。

 

独自の文化、伝統、生活を踏まえた芸能文化ですので、外部から一概に批判できるものではないのですが、バンコクの豊かな層を中心に、この(元は異民族の芸能である)『異文化』に対してこころよく感じない人もいるようです。

 

例えば、タイ軍政トップのプラユット首相が、人気ルークトゥン歌手、ラムヤイ・ハイトーンカムの露出度の高い衣装・演出に対し、『なんだあの衣装(服装)は!』と口撃するという『事件』が起きています。

 

軍政トップの『ご意見』ですから、官僚組織がスルーするわけもなく、警察がラムヤイのステージに『監視』に訪れることとなり、SNS上と報道で、賛否両論喧々諤々の騒動となりました。

 

BNK48のフラチャイザーである日本のAKB48は、水着グラビア等も行っています。一方タイの海外フランチャイジーであるBNK48は、水着等露出度の高い衣装は一切NGとしています。

 

BNK48は、デビュー後比較的早いうちから、軍事政権トップのプラユット首相の『お気に入り』のポジションを獲得し、業容拡大にあたっての「お墨付き」を得ました。

 

この背景には、有能な(切れ者の)BNK48運営が、バンコクエスタブリッシュメント層とイサーン地方の芸能であるルークトゥン芸能の間に生じた文化的摩擦等に対する冷静な観察から得た知見もあるいは活かされているのかもしれません。

 

 ◆เพลงใหม่ l ผู้สาวขาเฟี้ยว - ลำไย ไหทองคำ(ラムヤイ・ハイトーンカム)【Official MV】
おそらくイサーンの市場を背景に屋外ロケされたMV。
ルークトゥンに使われているスカ(ジャマイカ、イギリス由来のリズム)っぽいリズムはなかなかノリが良くていいですね。

https://www.youtube.com/watch?v=iziuDVIquMM

 

◆ห่อหมกฮวกไปฝากป้า - สายแนน 【Cover Version】

歌唱もうまいし、バックのリズムの刻みもいいですね。

https://www.youtube.com/watch?v=9gVq4-lBtBk

 

  

popmusic.hatenablog.com

 

<参考>

 

◆本件に関する連続ツイートを貼ります。

 

◇◇◇Twitter引用開始ーーー

 

映画の「イサーンとは」の説明がわかりやすいです。>バンコクでは(中略)中央のタイ人の差別対象として見られることも少なくない。(中略)都会と地方だけなく人種問題も混じった格差が存在する。(中略)非常に豊かな娯楽文化を持っている。

 

差別はする側は、いじめと同じで決して公には「差別してますよ」とは言いません。しかし実際に入る、暮らしてみると、あることがわかります。日本のポップ音楽が英米だとありえない組み合わせに簡単に踏み込めることは、刷り込まれたタブーがないことが背景にあるのでしょう。https://t.co/vmXAg8Ehde

twitter.com


ルークトゥンは伊東妙子さん型の泥臭さがあります。タイ・新世代アイドル第一世代(ex.BLACKPINKのリサetc.)は韓国に練習生として渡り、第二世代(ex.BNK48)はバンコク在住で東アジア(日韓)型先進消費文化・生活を謳歌することで高人気に。ルークトゥンからのカウンターに期待です。

 

◇◇◇Twitter引用終了ーーー 

 

<参考資料>

タイ(特にイサーン地方発祥)の大衆音楽、ルークトゥンとモーラム(両者は密接に関連し発展してきました)に関する専門の研究者の方の知見です。

lookthungmolamfanclub.com