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個人の実力と市場・組織の評価、ビジョンとリーダーシップ~BNK48ドキュメンタリーは社会に出る時や転機を迎えた時に参照したい映画。『Girls Don't Cry』(2)

 

かつて日本の政党、自由民主党の派閥の領袖を務めた大物政治家が、おそらくまだそれほど“大物”でなかった頃、サル山のサルを観察し、ある『法則』に気付いたといいます。

 

それは、ボスになるサルは、『毛並みがよく、動作が俊敏で、真っ先にエサを獲得し独り占めした後で下位のサルにエサを配る』こと。つまり、『人間社会、特にトップに立つ政治家と共通である』ということでした。序列のある社会を形成して生活する動物(サルと人間)に共通の『法則』を観察により発見したということです。

 

サル山のサルを観察し法則を見出す学問が生物学の動物行動学なら、人間を観察し法則を見出す科学が人間行動科学です。

サル山のボスザルに人間社会で相当する人の例をあげるとのような人でしょうか?

ボスとは、例えば『政治家』や『企業経営者』や『ムラオサ』や『長老』や『家父長』等でしょう。

つまり、人間行動科学を構成する要素には、ボス個体とその属するグループを観察し法則を見出すことを領域に含む政治学経営学、人類学、心理学、社会学等が含まれます。

 

『リーダーシップ』とは、サルやヒトの群れ(集団、社会)を一定の方向に向け動かす力です。ですから、外敵(オオカミ等の大型捕食者)や天災・気候の変動によりエサ場を離れ新たな地に向かわされることもまぎれもなく『リーダーシップ』です。 

 

実際には、リーダーシップを備えた特定の個体とその属する集団の関係性に焦点を当て研究することが、一般的にはリーダーシップ論と認識していることが多いのです。

 

 

ドキュメンタリー 『BNK48: Girls Don't Cry』はこれから社会に出る、または転機を迎えている人に薦めたい映画

 

 

タイの人気アイドルグループBNK48AKB48グループの海外フランチャイジーの一つ)を対象に撮影されたドキュメンタリー 『BNK48: Girls Don't Cry』の鑑賞後のSNSを通した感想の中で、印象に残ったものは、『子供が中学生(ティーンエイジャー)になったら見せたい映画。』というものです。

 

映画中、複数のメンバーが、「もしBNK48のメンバーになっていなかったら、何をしていただろうか?」と自分に問いかけています。

その答えは共通して、「きっと(アイドルとしての厳しいレッスンに朝から晩まであけくれることもなく、他の学生と同じように)学生生活を送っていただろう。」という趣旨でした。

 

映画の撮影期間は、フィルム中に収められているイベントから、BNK48の一期生最終オーデイションが行われた2016年12月下旬から、二期生が決定する2018年3月頃までのはずです。実際に集中的にインタビュー撮影がされたのはそのうちの約一年間程度と推測します。

 

この間、一瞬映った初期(2017年第二Qあたり?)の商業施設でのフリーミニライブ等では百人に満たない(40人~50人程度)観観客を前にパフォーマンスしたこともありました。

第二弾シングル「恋するフォーチュンクッキー」の起死回生の大ヒット後(2018年第一Q以降)は、大型ショッピングモールのフリーライブ会場等では、入場規制しても数千人の動員をするようになっています。

40人→4,000人とすると100倍の動員。つまりBNK48は、0(ゼロ)が100になるような急激な成長を約8カ月から1年間ほどで実現したことになります。(以下『一年間』と切り上げて表現します。)

 

一般社会で長い時間(ex.10年以上)要す成長が、一年間に濃縮された経験から得た気付きとエッセンス。

この『一年間で0(ゼロ、スタート)から100になるような急激な成長』がドキュメンタリ―の背景として決定的に重要です。

 

普通の社会人が数年以上、場合によっては10年以上から数十年かけて経験するような、事業・仕事と組織と個人の成長が濃縮された一年間を通し、メンバー達は何を感じ、考え、試行錯誤し、どのような結果を得たのでしょうか?

その経験と知見が、ドキュメンタリー『BNK48: Girls Don't Cry』のメンバーインタビューの中に濃縮されているのです。

 

これは、若者(ティーンエイジャー)が社会に出て試行し、手応えを得て、成功や不満足な結果を経て、成長するという普遍的なプロセスにも共通するものです。

 

個人の組織(チーム)への影響力の源泉とリーダーシップのスタイル

 

BNK48: Girls Don't Cry』では、グループのメンバーの成長と成功へのストーリーの中、『リーダーシップ(ビジョン、チームビルディング、ファシリテーション等)』、『マネジメント(組織と市場からの評価、目標の設定と実行等)』、『セルフブランディング』等の要素を浮き出しています。

 

 

インタビューから最も強力な印象を受けるのは、キャプテン、チャープランの発言です。

チャープランの発言からは、次の①②③の三点についてのイメージ(ビジョン)を持ちその実現に向け注力しているように感じました。

それは、①短期(今、現場で市場=ファン・オタとマネジメント=運営から求められていること、具体的には歌やダンスのスキルやSNSを通したファンとのコミュニケーション等で高評価と定量的な支持・評価を得ること)、②全体(グループ全体をどうしていきたいかということ、そのためのプロセス)、③中・長期(数年後に自分がどうなっていたいか、グループ全体をどうしていたいかということ)の3点です。

 

他のトップクラスのメンバー、ミュージック、ジェニス、オーンらの発言からも、各要素についての濃淡差はありますが、①②③の三つのポイントが含まれているように感じました。

 

ここで痛感させられるのは、①の短期、今まさにここの【現場をリードしていく水準のスキルと人気】(歌・ダンス・ファンコミュニケーション等)がトップクラスに秀でていることが実現できていないと、②【全体】、③【中・長期】に影響を及ぼすことが難しいという点です。

集団の中で、人気が下位のメンバーが、中・長期や全体がこうありたい、こうしたいと思いを持っていても、集団やファン(市場)に影響力を及ぼすことはなかなか難しいのがインタビューを通し露わになってしまっていて、この点は非常に身につまされました。

集団、組織等で『頭角を現していく』とはまさにこういうことを言うのではないかと感じたのです。

 

『これから社会に出るティーンエイジャーに薦めたい』というのは、例えばこの点にあります。まず『今、ここ』の現場で通用する、さらには牽引するスキル、技術を磨くことが、自分の将来のためにも、他者をサポートしていくためにも重要だという気付きがあるのです。

 

チャープランとパン(Pun)、二人のリーダーの全く異なったリーダーシップのスタイル

 

キャプテン、チャープランは、自分自身の実力と人気をベースに、『グループ全体はこうありたい』ということの実現に向けて、グループ全体に影響力を及ぼしたり、他のメンバーをサポートしたりしています。

 

そして、非常に驚いたのは、トップクラスのダンススキルと高い人気を誇るパン(Pun)の発言とその考え方でした。

 

『私は、センターになりたいというのはないの。』

 

『私が望むのは、カッコいいパン(Pun)でいたいこと。』

 

実力・人気ともトップクラスで、誰もが一度はなりたいと熱望するはずのセンターの座を射止めるのに最もふさわしいはずのパン(Pun)は、センターの魅力・魔力を公然と退けているのです。

 

パン(Pun)には、自己のイメージの演出としても、運営からの信頼やナワポン・タムロンラタナリット監督との信頼関係からも、本心を隠したり否定する必要性は無く、この発言はパン(Pun)の本心と思ってよいでしょう。

 

パン(Pun)は、以前、TV番組のインタビューで、「メンバーの誰に感謝したい?(パンがオタだったら、誰にハンドシェイクカードを使いたい?)」との質問に対し、二人のメンバーの名前をあげています。

 

1人目はジェーン(Jane)で、1曲目、2曲目のシングルで選抜外であったのに、「RIVER」での選抜入りした努力を称える発言でした。

 

2人目はジップ(Jib)で、他のメンバーが疲れて休憩しているときでも、一人練習を続ける不屈の向上への意思と不断の努力を称え、努力がかなって欲しい、認められて欲しいと称えました。

 

これらの発言からは、人気・実力トップクラスのパン(Pun)は、日頃から、選抜から外れたメンバーに気を配い、心理的、技術的サポートに意識を向けていることが判ります。

 

人気・実力トップクラスでありながら、他者との比較や評価等の相対的な上昇志向・競争・野心には価値を置かず、自己の価値観に沿った自己実現を重んじ、グループ(組織)の中で弱い立場のメンバーを親身になってサポートするパン(Pun)。

 

キャプテン、チャープランのビジョン型リーダーシップ、マネジメント型リーダーシップと、パン(Pun)のファシリテーター型リーダーシップ、サーバント型リーダーシップがかみ合い、組織(グループ)の車の両輪、コインの表裏のように機能していたであろうことが見て取れます。

 

このポイント(チャープランとパンの全く異なるリーダーシップのスタイルが共に成立しチームに影響を及ぼしていたこと)はかなり大きいと感じました。

 

チャープランの『父性』とパン(Pun)の『母性』が共に組織(グループ)の中で機能していたと言い換えても良いでしょう。

 

パン(Pun)がサーバント、ファシリテートするメンバーの『努力』とは?衝撃的な一瞬のハイライトシーン !

 

パン(Pun)が努力を称え、心理的にもサポートしていたであろうジップ(Jib)。

 

なぜパン(Pun)は最大限にジップ(Jib)を称えるのか、その理由が判る衝撃的なワンシーンが映画の中に挿入されています。

 

ジップ(Jib)の組織内での相対的人気が下位であることによる苦悩と試行錯誤は、人気中位(選抜線上)のプーペ(Pupe)の語りとともに映画内の時間配分としては『BNK48: Girls Don't Cry』の『主役』の位置づけです。

 

そのジップ(Jib)にフォーカスされた一瞬のシーンから受ける衝撃は、ドキュメンタリー『BNK48: Girls Don't Cry』の一つのハイライトの一つと感じました。

 

  

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□左からBNK48のチャープランとパン(Pun)

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□左からBNK48のジップ(Jib)、ジェーン(Jane)、パン(Pun)

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□『Girls Don't Cry』プレミアショーでのBNK48メンバー

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□2018年10月20日、日本からバンコクを訪れたHKT48AKB48グループ)の指原莉乃さんとBNK48のパン(Pun)

 

ドキュメンタリー映画BNK48: Girls Don't Cry』あらすじ。

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