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AKB48グループの楽曲が海外フランチャイズできる(受け入れられる)理由はなぜだろう? ~ JKT48ステフィ&BNK48モバイル「狼とプライド」

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2018年9月半ばから10月半ばにかけてインドネシアとタイから日本の芸能界に短期留学中のJKT48のステフィとBNK48のモバイルが、AKB48グループの公演の前座で披露している「狼とプライド」についてです。

耳にした瞬間、「Wow!!フィル・スペクター歌謡!」と感じました。脳みそが溶けそうな位スイートでロックンロールな1980年代のジャパニーズアイドル歌謡ポップスです!

 

トラック(伴奏)はフィル・スペクターサウンド特有の『音の壁』(ウォール・オブ・サウンド)を省いたバンドアプローチで、つまりはジョン・レノンの「(ジャスト・ライク)スターティング・オーバー」風のロック。

 

原曲はSKE48チームS、作詞:秋元康さん、作曲:吉富小百合さん。すなわち「狼とプライド」は、2010年代によみがえった黄金のフィル・スペクターアイドル歌謡です。

 

日本の1980年代の女性アイドルであれば、フィル・スペクターサウンドロネッツ「Be My Baby」etc)とモータウンサウンドシュープリームス「恋はあせらず」etc)をモチーフにした楽曲はレパートリーにないとモグリと言われるくらいではないでしょうか。MajiでKoiする5秒前

 

1980年代日本の女性アイドル歌謡フィル・スペクターのオールディーズのサウンドエンジニアリングのエッセンスを再現した分厚いバックトラックの上に、10代の女性アイドル歌手のややたどたどしくも繊細なボーカルを載せ、脳みそが溶けそうなスイートなアイドルポップスを制作するのが大きなトレンドでした。

 

フィル・スペクター歌謡/フィル・スペクタークローンロックの名曲の数々、例えばシーナ&ザ・ロケッツ「ユー・メイ・ドリーム」、YUKI岡崎友紀)さん「ドゥ・ユー・リメンバー・ミー」、松田聖子さん「一千一秒物語」・・・。

 

後の女性アイドルグループの潮流に決定的な影響を及ぼした大人数女性アイドルグループ、おニャン子クラブメンバーのソロ楽曲群、ex.新田恵利さんの「冬のオペラグラス」、渡辺美奈代さん「ちょっとFallin'Love」・・・。

 

そして、大瀧詠一さんや佐野元春さん、杉真理さんらのナイアガラ・ファミリー(ナイアガラ・トライアングル)には、元来“オールディーズとフィル・スペクター研究会”の目的があります。

 

洋楽ロック(こっちはお兄さんやおじさんも多いのでアイドル歌謡とは呼びません)では、ジョン・レノン「(ジャスト・ライク)スターティング・オーヴァ―」、ビリー・ジョエル「セイ・グッバイ・トゥ・ハリウッド」、アラン・パーソンズ・プロジェクト「ドント・アンサー・ミー」等々、古今東西数えたらたぶん3桁の楽曲がありそうです。

 

ジョン・レノンビートルズ解散後、フィル・スペクターのプロデュースでオールディーズカバーアルバム『ロックンロール』用にロネッツの「Be My Baby」そのものを録音しています。(アルバムには収録されず、後に未発表テイク集『ジョン・レノン・アンソロジー』に収録されました。)

 

ビーチボーイズの「ドント・ウォリー・ベイビー(Don't Worry Baby)」は最も古いクローン曲(たぶん、タイトル・詞がロネッツ「Be My Baby」へのアンサーソング?)ですが、もともとフィル・スペクターサイドに提案してボツになったという経緯があるようです。

 

そういうわけで、JKT48ステフィ&BNK48モバイルの「狼とプライド」、直撃されると脳みそが溶けてアイスクリームとシェイクされるようなサイケデリック感覚に見舞われるほど甘ったるいこれぞフィル・スペクターアイドル歌謡のGood Job !でしょう!

 

 

そこで、AKB48グループの楽曲が海外フランチャイズできる理由、海外フランチャイズに対応できる理由はなんだろうとふと思いました。

 

一言だと、AKB48グループの楽曲には、アメリカンポップス/ロックンロールが多いことが効いているはずです。

 

具体的には、AKB48グループの職業作家さんによる作曲のアプローチが、洋楽ライブラリへのダイレクト参照であろうと感じます。この点は大きいはずです。

 

つまり、洋楽でフィル・スペクターのヒット曲のクローン、焼き直し楽曲群を作曲してヒットさせたジョン・レノンビリー・ジョエルブルース・スプリングスティーンアラン・パーソンズと同じ目線で、洋楽ヒット曲のライブラリを参照して作曲されているように感じます。

 

洋楽の影響が二次、三次となってくると、ソングライティングの作風に占めるそのバンドやシンガーソングライター固有の癖が大きくなってきます。その癖がバンドやシンガーソングライターの固有な魅力になるわけです。

しかし、独自性が強い楽曲は、市場が受け入れるまでには固有の癖に馴染んでもらう時間、教育が必要になってきます。数年かけた地道なライブツアーでファンベースを増やしていくことだったり、CMのタイアップで繰り返し聞いてもらうことだったりです。

 

その点、直近50年間位の洋楽ヒット曲、特に繰り返し用いられてきたヒット曲の必勝パターンをダイレクトに参照する作曲法だとどうでしょうか?

 

世界中で聞きなれたリズム、メロディー、コード進行、伴奏等が基になっているので、海外で受け入れられるのに時間がかからなそうです。

 

 つまり、市場に浸透する時間の効率化が実現する。

 

AKB48の海外姉妹グループインドネシアJKT48、タイのBNK48がそれぞれ大ヒットさせた「恋するフォーチュンクッキー」がまさにそのタイプの楽曲です。

1970年代にアメリカで流行ったフィラデルフィアソウル(フィリーソウル)のエッセンス、ヒットパターンをちりばめた楽曲は、世界中どこでも、「昔聞いて(ディスコのフロアで踊った)アメリカのソウルのヒット曲のような」親しみやすい感覚、既聴感を感じさせます。

 

海外、特に東南アジア圏の地場のアイドルグループの楽曲をちらほら見ると、ここ直近(5年間~10年間は)K-POPを目標にしてきたグループが殆どなので、K-POP風の楽曲を作るノウハウは蓄積されてきた感があります。

 

しかし、現時点では、ジャパニーズスタイルのアメリカンポップス/ロックンロール(=アイドル歌謡曲)の制作力は手薄かもしれません。そして、地場のシンガーソングライター、ロックバンド出身のライターは、おそらくメロディ―ラインに(それぞれの成功パターンの)独自の癖があります。

 

これは、タイで、BNK48の大人気の影響、余波としていくつか登場してきた大人数アイドルグループの音源を感じて感じたことです。

 

衣装やポーズや背景、小道具の演出やMVが日本のアイドルを意識しているものの、楽曲が日本のアイドルポップス風ではないなと感じるものだったのです。

 

しかし、おそらく2~3年位、最短で1年で、地場の音楽家は、ジャパニーズスタイルのアイドルの楽曲の構造や方法論を解明してクローンを作ることができるようになると想像します。

 

タイで数年前に人気だった女性アイドルグループ、キッス・ミー・ファイブは、私には、(TWICEやBLACKPINKもリスペクトしカバーした)レジェンダリーガールズK-POPグループ、ワンダーガールズのクオリティの高いフォロワーに見えます。

 

K-POPを研究してクオリティの高いクローン楽曲を作れるということは、J-POPを研究してクオリティの高いオリジナル楽曲を制作できるようになるのは時間の問題のはずです。 

 

匿名の裏方、ポップス職人に徹して、普遍性の高いアメリカンアイドルポップス/ロックンロールを書ける作曲家を確保できるかどうか、このポイントは結構大きいはずだと、脳みそ溶ける系のアメリカンジャパニーズ80‘sアイドルポップスを聴きながら考えました。

 

 

 

アラン・パーソンズ・シンフォニック・プロジェクト(Alan Parsons Symphonic Project ):「Don't Answer Me」 (Live in Colombia)  

アラン・パーソンズ・プロジェクトの大ヒット曲「11月のアンクレット」じゃなかった「ドント・アンサー・ミー」。(「11月のアンクレット」を初めて聞いた時に想い出したのは佐野元春さん「Downtown Boy・ダウンタウンボーイ」のオリジナル・アレンジのシングルバージョン)。

ビートルズのエンジニアリングを務めたアラン・パーソンズフィル・スペクターの『音の壁』(ウォール・オブ・サウンド)をライブで再現!

アラン・パーソンズ、ルックスが結構、ミートローフ(1970年代アメリカで人気のあったハードロックシンガー)風に・・・。

ビートルズ関係では、アラン・パーソンズは、ELO(エレクトリック・ライト・オーケストラ、ジェフ・リン)と並ぶポップス職人道を極めた名工です。

この曲を聴いて大瀧詠一さんの『A LONG VACATION』(ア・ロング・バケイション)や「幸せな結末」のパクリですか?と感想を言った方がいました。そうではなく、アラン・パーソンズ大瀧詠一さんもブルース・スプリングスティーンも、トップクラスの熱意と技術と予算(DTMやサンプリング使用によるレコーディングのコストダウンが実現する以前)を投じてフィル・スペクターサウンドの再現に挑戦し、成功したということです。そして「11月のアンクレット」とは現代(2017年)の技術でこの方法論による音楽制作を再現しようということではないかと思います。

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The Beaches:「Be My Baby」(The Ronettes Cover)

オルタナ、ガレージ風カバーも、コーラスパートになると、1960年代ガールズグループの伝統の継承が感じられます。

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◇ステフィ(JKT48)&モバイル(BNK48):「狼とプライド」(from Learning from AKB48 in Japan)

往年(1980年代)の女性アイドルグループ(おニャン子クラブetc)メンバーのソロ楽曲風の王道アイドルポップス、フィル・スペクターアイドル歌謡

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