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”THE TOMBOYS”『トムボウイズがやって来るヤァ!ヤァ!ヤァ!』~リバプール発ザ・ライヴァ―バーズからガールズバンドの歴史50年超~

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1970年代の日本で大スターだったスージー・クアトロとザ・ランナウェイズ

 

2016年7月、渋谷の地下のライブハウスで、最近急激に人気上昇中のガールズバンド、BAND-MAID(バンドメイド)の結成2周年お給仕(ライブ)を観ました。ライブ会場で、海外から来日した”ご主人様”に70’sのロックについて聞き(『おれは、ハートの前身のバンドでキーボードを弾いてたんだ。』って、聞き間違いですかね?)、白いサイリウムを振って応援した帰り、無性に見逃していた映画『ランナウェイズ』を見たくなりました。

 

そんなわけで、BAND-MAID(バンドメイド)のお給仕から戻って、早速、映画『ランナウェイズ』のDVDを注文しました。原作はボーカルのシェリー・カーリー、製作総指揮はギタリストのジョーン・ジェットです。ザ・ランナウェイズの元メンバーが映画の製作に関わっており、それなりに史実を反映しているように思います。

 

映画では、バンドのプロデューサーがいかにもな感じのやりての業界オヤジに描かれています。ギタリストのジョーン・ジェットは、女性ロックスターのスージー・クアトロに強く憧れていました。プロデューサーも、バンド企画時に、大スターであった女性ロッカーのスージー・クアトロを強く意識していたはずです。

  

ガールズバンドとは、文字通り、バンドメンバーが全員女性のロックバンドのことです。そのはしりが、1970年代半ばに日本で爆発的な人気となったザ・ランナウェイズです。そして、ザ・ランナウェイズの企画にも影響を及ぼした存在が、女性ロック歌手のスージー・クアトロスージー・クアトロも複数のTVCMに出演する等、日本で大人気でした。

 

スージー・クアトロが始めた(?)”黒の革のジャンプスーツをジッパーを開けて着こなす”、”女性ロッカーの正装”は、40年以上経た2018年でも定着し続けています。

 

海外の女性へヴィメタルバンドには、1970年代のスージー・クアトロと同じような衣装の女性ロッカーが今でもたくさんいらっしゃるのです。

 

スージー・クアトロ自身は、メンバーが全員女性のガレージロックバンド、プレジャー・シーカーズを経て、男性ミュージシャンをバックバンドにしてから成功したのですが。)

  

それ以前の1960年代にも女性シンガーソングライター、女性ロック歌手は存在しています。ザ・ランナウェイズとスージー・クアトロの画期的だった点は、女性がエレキ楽器を演奏しながらロックを歌ってパフォーマンスするという点です。

 

「エレキ」+「女性」+「尖ったファッション」でロックというスタイル、コンセプト、パフォーマンスが、スージー・クアトロとザ・ランナウェイズによって切り開かれたのです。

  

スージー・クアトロとザ・ランナウェイズが『女性のロックバンドはカッコいい』と音楽ファンの意識を変えた

   

世界的に人気を獲得した全員女性のロックバンドは、1970年代半ばに活躍したザ・ランナウェイズが最初です。特に日本ではティーンエイジャーのアイドルとして爆発的な人気を得ました。

 

実は、ザ・ランナウェイズはアメリカでは商業的な成功に至っていません。しかし、ザ・ランナウェイズ解散後、元メンバーのジョーン・ジェットやリタ・フォードはロック界で成功を収めました。それによって、アメリカでもザ・ランナウェイズは女性ロックバンドのパイオニアとして注目され、再評価されるようになりました。

 

日本では、映画のシーンで描かれるようにザ・ランナウェイズは大成功しました。ザ・ランナウェイズによって、女性のロックミュージシャン、女性のロックバンドはカッコいいということが、日本の音楽業界とロックファンの意識に、強くインプットされたのです。

  

1980年代になり、日本では、ZELDA(ゼルダ)、SYOW-YA(ショーヤ)、PRINCESS PRINCESS(プリンセス プリンセス)等、メンバー全員が女性のロックバンドが、メジャーな音楽シーンで活躍することになります。その背景には、音楽業界と音楽ファンの”ザ・ランナウェイズ体験”があります。

  

“ザ・ライヴァ―バーズ”~ ビートルズ、サーチャーズの時代に活躍したロック史上最初期のガールズバンド~

  

時代はさらに遡り、1960年代前半のイギリス、ビートルズに代表されるリバプールサウンド(マージ―ビート)の時代です。

  

ビートルズに代表されるリバプールサウンド(マージ―ビート)勢の音楽面の革新的、画期的な点に、ドゥワップや女性コーラスグループグループと、ロックンロールバンドを統合した点があります。

3声・4声コーラス(メンバー全員が歌手としてリード歌唱またはコーラスを担当する)と、楽器演奏の両立です。

 

全員が歌い、全員が楽器を演奏する。このスタイルによって、飛躍的に音楽の表現力が増しました。

  

そして、この革新的な演奏スタイルは、音源制作(レコーディング)と音楽興業(ライブ演奏)面の画期的なコストダウン、機動力の向上も実現しました。

従来だったら、コーラスグループの3人ないし4人が、バックの演奏バンドを従えないと出来なかったレコード録音も、ライブ演奏(興業)も、メンバー4・5人だけで実行できてしまいます。

 

ビートルズの場合、さらに、それまで外部の職業専門作家が担っていた作詞・作曲(ソングライティング)まで内製してしまうというトレンドを作りました。

  

1960年代のイギリス発のリバプールサウンド(マージ―ビート)~ブリティッシュインベイジョン(イギリスのロックバンドのアメリカ市場への侵攻)の潮流というのは、20世紀のポピュラー音楽を代表するイノベーション(技術革新)だったのです。

自動車産業でいえば、化石燃料使用エンジンで動く自動車が、全部電気自動車に置き換わる位のインパクトがあったのかもしれません。

  

ビートルズが強烈なライブバンドとして実力を身に着けたのが、ハンブルクへの出稼ぎ時代です。クラブ(箱)で酔客を前に一日複数回(3回)のライブを繰り返したこの時期に、ビートルズは、いかなるトラブルも乗り越える強靭な精神力、演奏力、チームワークと変動対応力を身に着けました。

  

そのビートルズが演奏したドイツ・ハンブルクのクラブの一つが「スター・クラブ」です。音源も今に伝わっています。偉大なロックンロールのスタンダードの一つと言っていいでしょう。

  

このハンブルク時代の、”革ジャンにリーゼントで喧嘩っ早いコワモテ”のビートルズこそが”最強のロックバンド”であると信奉するロックバンドとロックファンは世界中に何千万人といます。一つの確立したロックバンド、ロック音楽のスタイルとなっています。矢沢永吉さんやジョニー大倉さんが組んでいたロックンロールバンド「キャロル」がその典型です。

  

ドイツ・ハンブルクの「スター・クラブ」は当時、イギリス・リバプールのビートグループ(マージ―ビートのバンド)を招聘して長期間演奏させるルートを持っていました。

  

スター・クラブで、ビートルズやサーチャーズと入れ替わりに、イギリス、リバプールからドイツ・ハンブルクに渡ったバンドに、ザ・ライヴァ―バーズがあります。メンバーは4人の女性です。音楽性は典型的なリバプールサウンド(マージ―ビート)。

  

この、”ザ・ライヴァ―バーズ”こそが、メンバー全員が女性のロックグループとして、おそらく最初期のバンドでしょう。

 

イギリス、リバプール出身のザ・ライヴァ―バーズは、ドイツで人気が出たため、ドイツに定住し、イギリスに帰ることはありませんでした。メンバーの中にはドイツ人と結婚された方もいます。

  

”THE TOMBOYS”『トムボウイズがやって来るヤァ!ヤァ!ヤァ!』 神戸発ロックンロールを演奏するガールズバンドが英・欧にやって来る!!

  

マージ―川のほとりから、ザ・ライヴァ―バーズが海を渡ってドイツ・ハンブルクに渡ってから半世紀(50年)以上経った2016年に、ユーラシア大陸の東の端の日本から、リバプールサウンド(マージ―ビート)の音楽性を強く受け継ぐバンドが、イギリスに演奏に訪れています。

  

そのバンドは、”THE TOMBOYS”(トムボウイズ)。神戸出身の4人組のガールズバンド。

  

イギリス、ヨーロッパでは、直近の数年間、BABYMETAL(アイドル+メタル)、BAND-MAID(ハードロック)、MUTANT MONSTER(パンク)、BRIDEAR(パワーメタル)、G∀LMET(デスメタル)等の現地でのライブに通う音楽ファン層が育っています(カッコ内は各バンドの音楽の代表的なカテゴリ名)。ここから判ることは、彼らは、日本人の女性が中心のロック周辺音楽という点に強く反応するものの、ロック・メタル下位のサブカテゴリ分けにはあまりこだわっていないということです。そして、彼らは、SNSを通して現地公演等の情報を積極的に発信しています。

 

”THE TOMBOYS”(トムボウイズ)の情報も、現地の音楽ファンが発信するSNS情報で知りました。

  

イギリス、リバプール発祥の音楽であるリバプールサウンド(マージ―ビート)。しかし、本国イギリスでは、ザ・ライヴァ―バーズがリバプールからドイツに渡ってから50年以上、伝統的なリズム&ブルース、ドゥワップ、リバプールサウンド、ロックンロール等を消化しモダナイズして演奏するタイプのガールズバンドの存在の出現を見ることはできませんでした。

 

もちろん、オールディーズやロックンロールをレパートリーとするアマチュアレベルでのコピーバンドは各地で存在していたのではないかと想像します。しかし、積極的に公演活動を行っているイギリスやヨーロッパのガールズバンドは、パンク、ガレージ、オルタナティブ、メタル等の1970年代以降のロックのスタイルがほとんどなのです。

 

イギリスには、1950年代のスキッフル、1960年代のリバプールサウンド(マージ―ビート)、1970年代のパブロック、パワーポップ、1980年代のネオロカビリー等々の音楽スタイルが存在していました。これらは、アメリカの伝統的な大衆音楽、黒人音楽を、イギリス独自に消化して演奏するポピュラー音楽、ロックの歴史です。

 

日本にはあまり情報が伝わってきませんが、ヨーロッパでは、現代(2010年代)でも、ロカビリーの流れをくむサイコビリーのバンドが積極的に活動しています。

 

リズム&ブルース、ロックンロール、リバプールサウンド(マージ―ビート)等のイギリスで長く親しまれてきた伝統的なポピュラー音楽を咀嚼し、モダンなロックンロールを演奏するガールズバンドが存在したら?

 

日本のガールズバンド”THE TOMBOYS”(トムボウイズ)が、イギリスとヨーロッパ各地で歓迎される背景には、このようなポピュラー音楽嗜好の伝統と土壌があるのかもしれません。 

 

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■”THE TOMBOYS”(トムボウイズ

1950年代、1960年代の米英のロックンロールの影響を受けながら、楽曲によっては、クリープハイプ等の現代日本のギターロック(邦ロック)のテイストを感じる瞬間もあります。邦ロックのルーツには、1990年代のイギリスのギターロックであるブリットポップ(オアシス、ブラー等)があることがあり、不思議ではないかもしれません。

このバンド、THE TOMBOYS(トムボウイズ)が、THE HOLLIES(ホリーズ)の「JUST ONE LOOK」(ジャスト・ワン・ルック、1964年全英2位) 等、往年のブリティッシュインベイジョンのヒット曲をカバーするのを聴けたらすごく楽しそうですね。

 

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■The Liverbirds(ザ・ライヴァ―バーズ) 「 Peanut Butter 」

 

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