〔2019.06.27オリジナル、2019.06.29修正〕
海外で高い人気で全米ツアーに臨むメタルダンスユニットBABYMETALの新曲「PA PA YA!!」への客演が”噂”されているタイの人気ラッパーF.Hero(Fucking Hero,Nattawut Srimhok)。
タイのヒップホップシーンとはどのように成長してきたのでしょうか?
タイのディープ、へヴィな音楽の知識を得るには、イサーン(タイ東北部)地方の音楽を日本に紹介する活動をされているDJのコンビであるSoi48が発信されている情報を読むのが一番だと思います。。。
1/25~27に東京都写真美術館にて「爆音映画祭2019 特集タイ|イサーン VOL.3」開催!モーラム映画『花草女王』、プムプワンの伝記映画『ザ・ムーン』、『カンボジアの失われたロックンロール』などOMKなラインナップ。さらにスリン・パークシリ先生も来日してトークショー!https://t.co/jKIxqYxR1B pic.twitter.com/EAY8b0YCEh
— soi48 (@soi48blog) January 23, 2019
しかし、多くのポップスファンにとっては、イサーン(タイ東北部)、ラオ、モーラム、ピン・プラユック・・・等々の用語はおそらくなじみが薄いのはずです。
なじみのある歌手・・・私は、日本のアイドルグループAKB48のタイ・バンコクを拠点とする姉妹グループであるBNK48の派生ユニットやOG等から、タイポップス界の関連する音楽家を聴いていきました。なんといっても、BNK48は日本の2018年の『紅白歌合戦』に出演したことによって日本でも知名度を得た存在です。
BABYMETAL「PA PA YA!!」では、タイのヒップホップアーティストF.Heroがフィーチャーされました。そこで、タイのヒップホップシーンにおけるF.Heroの存在やポジションについて述べてあるテキストを読んでみたいと思います。
タイのポピュラー音楽、特にイサーン地方の音楽を日本に紹介されているDJユニットSoi48は、宇都木景一さんと高木紳介さんのお二人です。
そして、タイ在住のstillichimiyaのプロデューサー/DJであるYOUNG-GとSoi48は、2018年5月末から6月頭にかけて、共同でタイヒップホップ界の重鎮であるラッパーJUUを日本に招へいしました。
その際、編集者の大石始さんが、JUUおよび一緒に来日した(JUUが引き立てている)若手女流ラッパーG.JEEの2人にインタビューしている内容が以下のサイトに掲載されています。
このインタビューの中で、タイのヒップホップの歴史、そしてその中のF.Hero(Fucking Hero)について述べられています。
【引用】
>YOUNG-G「90年代はJOEY BOYの時代だったと思いますね。世代的にはそのJOEY BOYの下にTHAITANIUMやJUUさん、昔からJOEY BOYとやってるFUKKING HEROっていうMCがいた。
>JUU「やってました。TKOやJOEY BOY、THAITANIUMのKHAN(カン)とか。その下の世代が私やFUKKING HEROですね」
【引用終】
◆Soi48とはこういう人たち。
【引用】
「そもそもイサーンは(バンコクと)人が違いますからね。やさしいし、ファンキー」
「イサーンの人たちにとってモーラムは魂であって、すべてなんです。娯楽の王様というか」
「イサーンでモーラムの関係者にインタヴューすると、自分のことを〈タイ人〉という人はまずいないんです。〈ラオ(族)〉か〈イサーン〉という。それはなぜなんだろう?というところから始まってくるんですよね」
【引用終】
イサーン(タイ東北部)、ラオ、モーラム、ピン・プラユック・・・等々の用語はおそらくなじみがほとんどないはずです。
カッコいい音楽として聴くことはできますが、もう一歩踏み込もうとすると、”背景”を知る必要がでてきます。
インドシナ半島への欧米列強の進出(フランス)が背景としてあるのです(ミャンマーはイギリス)。
フランスの統治の影響によって、”ラオ”という同一のアイデンティティ(民族、文化)持った集団が、現在はタイ・イサーン(東北地方)とラオスという別な国に分かれているという歴史的背景があります。
このあたりのポピュラーミュージックへのアプローチ方法は、ロック、ブルース、R&B、ソウル、ファンク、ヒップホップ、スカ、レゲエ等、アメリカ大陸発祥の(もともとは)黒人音楽にアプローチするのに近いかもしれません。
なぜ、北と南のアメリカ大陸に黒人(アフリカンアメリカン)が生活し、彼らのポピュラー音楽を産み、それが発展し現代にいたるのかを追求すると、大西洋三角奴隷貿易等の歴史にたどりついてきます。
◆現代のタイ音楽紀行ともいうべきテキスト。とてもユニーク。はじめてタイのルークトゥンという大衆音楽を聴いたとき、「なんだこのスカのような音楽は?」と関心を持ち、その成立の背景に関心を持ちましたが、参考になる知見が豊富です。
◆タイ・イサーン(東北)地方とラオスの伝統音楽、モーラムに使用されるケーン(笛)を通して現地の音楽の事情・背景について述べられたテキスト。
◆ฟักกลิ้ง ฮีโร่(F.HERO) Ft. SIRPOPPA (Prod. By STAYGOLD) - ยับ (YUP) [Official Lyrics Video]
BABYMETAL「PA PA YA!!」への客演の”噂”がタイでも報道されている人気ラッパーF.Hero(Fucking Hero)。タイ・イサーン地方の音楽モーラムに使われる楽器がサンプリングされている?
◆「爆音映画祭2019 特集タイ|イサーン VOL.3 プレイヴェント」 〜ピン・プラユック・スペシャル〜
◆Monaural mini plug - Live@KAMIKANE 3000
動画のコメントが全てタイ語ですが、実は日本のピン・プラユック・バンドMonaural mini plugが日本で演奏しているシーン。
◆ケーンの吹奏をめぐる「男らしさ」の創成 - ラオスのラム歌謡と性別役割分業の一考察1)
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjcanth/82/3/82_290/_pdf
◆奴隷航路:抵抗する魂 国連広報センター (UNIC Tokyo)
https://www.youtube.com/watch?v=JUFv272CzzU
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