昨年あたりから、竹内まりやさんのFutureFunk/VaporWaveムーブメントに乗った「Plastic Love」大ヒットや、大貫妙子さん、山下達郎さん、杏里さん、角松敏生さんらの往年のレコードが、幕末から明治にかけての浮世絵同様海外に流出していることを、「シティポップが海外で大人気」とマスコミ・メディアがいまひとつとんちんかんな解説をすることを耳にすることが増えている気がしますがいかがおすごしでしょうか。
ソフト&メロウ、AOR(最近はヨットロックと呼ばれます)、ブラコン(ブラック・コンテンポラリー)、シティポップ等々、これらの音楽は、レコードガイド小説『たまらなく、アーベイン』(田中康夫さん著)をリスト・ガイドブックとして踏まえないと見えてきにくいのです。
必ずしも私が田中康夫さん支持者というわけことではありません。
日本映画だったら黒澤明監督、日本のロックフェスだったらクリマン(クリエイティブマン)、SMASH、ロキノン等、その業界に大きな貢献をしたプレイヤーを否定してしまったら、事実を見過ごしてしまいます。
批判的な立場をとるとしても、先達の大きな業績は認めたうえで建設的な批判をしないと始まりません。
経済、文化・風俗そして政治等の第一線、ど真ん中で、上述の音楽(ソフト&メロウ、AOR、ブラック・コンテンポラリー等)を日本の社会に紹介し、定着させる旗振り役をしてきたのが田中康夫さんです。
そのため、田中康夫さんにインタビューするか、著作を研究しないと、『海外で大人気』なるシティポップブームを語ろうとしたときに、今一つ焦点が合わないのではないでしょうか。
『たまらなく、アーベイン』で紹介されている音楽を聴き、今日『海外で大人気』なる日本の1970年代、1980年代の『シティポップ』に該当する楽曲群を聴いて、初めて、当時の開拓者たる日本のポピュラー音楽家たちが、何を目指そうとしたのがはっきり見えて来るように思います。
前置きが長くなりましたが、タイのブラコン(ブラック・コンテンポラリー・ミュージック)です。
時系列で言うと、ソウル(いろいろ種類があります) → ブラコン → R&Bです。
今のR&Bが数十年前はブラコンだったわけですね。
平井大さんやブルーノ・マーズがパク・・・じゃなかったオマージュしたベビーフェイス(BABYFACE、エリック・クラプトンとのデュエットでも有名)や岡崎体育さんのレコーディングに参加したレイ・パーカー・ジュニア等はブラコンの代表的アーティストです。
タイのソウル・ブラコンのバンドThe Parkinson。
新曲「แค่นี้...พอ (Present)」のMVにタイの国民的アイドルグループBNK48のモバイル(Mobile)を起用しました。
MVヒロイン(モバイル)が、現代のノートPC位の大きさの1970年代半ばのカセットテープレコーダーを肩から下げていることやブラウン管TV等は、1970年代末位から1980年代にかけてのソウル、ブラコン調の音楽のヴィンテージ感を演出する小道具です。
ちなみに、The ParkinsonのKarn(MVヒーロー、そんな言い方ありますかね?)はBNK48のモバイル推しであるとタイポップス探検家の山麓園太郎さんがPOLYCATのNaのインタビューで聞き出しています。
<引用>
>Na : モバイルだね。僕のファンだって言ってる。あ、SPICY DISCのアーティストでThe Parkinsonって知ってる?
>山麓 : うん。大人のソウル、って感じで好きだよ。
>Na : 彼がモバイルの大ファンでさ。僕、彼に嫉妬されて「なんでお前だ~!」って首絞められたんだよ(笑)
>山麓 : あんな渋い曲演ってるのに!(笑)BNK48って、本当に社会現象なんだね・・・。
<引用終>
実際の年代でいうと1970年代半ごろのポータブルカセットテープレコーダーがヒロインの小道具(カラオケ練習用機材)として用いられています。時代考証はズレてますが、細かいことは気にしない。10代、20代に、『ノスタルジック感』を感じてもらえればOKです。Can NayikaのMVでは、1980年代半ばのポータブルカセット(ウォークマン式)が使われていました。
基本的にMVでは、テレビはブラウン管、オーディオはカセットテープというのがデフォで、ヴィンテージ(現代ではないいつか)感を表現しています。
◆The Parkinson - แค่นี้...พอ (Present) | (OFFICIAL MV)
◆Prince「Do Me, Baby」
1981年の『殿下』の名曲。1986年のメリッサ・モーガンのカバーも有名。ブラコンによくある曲調で、『型』みたいなものでしょうか。男声ファルセット(裏声)ボーカルは、ソウル(アメリカの黒人音楽)に典型的な唱法です。
https://www.youtube.com/watch?v=MXvhLakjMqo
◆Can Nayika - สุดท้ายก็เธอ [Official MV]
元BNK48一期生のCan Nayika。タイ・バンコクのポップスのMVでは音楽再生環境小道具はカセットがデフォ?
◆เพ้อ (YOU) - Jetset'er [Official MV]
Jetset'erもソウル、ブラコン。芸能人の等身大カンバン(タイの芸能人応援文化?のようです。)を脇に抱え持ち運ぶ演出が共通していますね。
台湾タイハーフの人気モデルEmmaはMV出演後、タイの新世代アイドルグループCmCafeの人気メンバーとなり実際にアイドルとして活躍しています。