令和元年も残り少なくなった師走、新年のヒットが期待される演歌・歌謡曲のカテゴリで話題の楽曲といえば、市川由紀乃さんの「懐かしいマッチの炎」。
和装の歌手、市川由紀乃さんの楽曲ということで、「演歌・歌謡曲」のカテゴリに位置づけられますが、「懐かしいマッチの炎」は、歌謡曲というより、シャンソンや中島みゆきさんのニューミュージックの世界観に近い感触を受けます。
それは、ジャケット写真によく表現されています。
日本の歌謡曲の歴史を代表する作詞家である阿久悠先生の歌詞は、素晴らしいの一言につきます。
カラオケで市川由紀乃さんの「懐かしいマッチの炎」を歌うには、阿久悠先生の歌詞の世界観をいかに表現するかが問われるのでしょう。
市川由紀乃さんの「懐かしいマッチの炎」で想い出した曲は、日本ではほとんど無名のアメリカのロック歌手、マイケル・スタンレーによるビートルズ「エリナー・リグビー」のカバー。
マイケル・スタンレーが率いたマイケル・スタンレー・バンド(MSB)は、1970年代、80年代にアメリカで全国レベルで中ヒットも何曲か出し、ライブでは高い人気を博したオハイオ出身のロックバンド。
感触としては、ブルース・スプリングスティーンやボブ・シーガーやジョン・メレンキャンプ等のロックンローラーをよりポップにした感じです。
マイケル・スタンレー自身は基本的にフォーク、カントリー、ブルース、リズム&ブルースを基にした泥臭いシンガーなのですが、ケヴィン・レイリー(Kevin Raleigh)というもう一人のリードボーカル兼キーボード奏者が、MSBにマイケル・マクドナルド的AOR(ヨットロック)要素を持ち込み、多彩な音楽性を実現していたのです。
後年のケヴィン・レイリーのソロ作品を聴くと、プリンス・ファミリーのSt.Paul(セント・ポール)並みのポップ・ファンク・ナンバーもありました。
ポール・マッカートニーは、万に一人というより、人類の歴史に名を残し、歴史を書き換えた天才です。一方、マイケル・スタンレーは、歴史に残るような天才ではないかもしれません。
しかし、名もなき庶民の晩年を哀愁を込めて歌うことにおいて、ロックンローラーであるマイケル・スタンレーの「エリナー・リグビー」の表現は非常に秀逸です。
それはまるでシャンソンのようであり、フランス映画のワンシーンのようもあります。
あるいは黒澤明監督の『生きる』。
名優、志村喬さん演じる主人公が、夜の公園で独りブランコを漕ぐ名シーンで、BGMとしてかけるのにふさわしいロック、あるいはシャンソンでも、演歌・歌謡曲でも、カントリーでも、ルークトゥンでも、呼び方は何でもかまいませんが・・・そんな楽曲が、晩年のマイケル・スタンレーが歌う「エリナー・リグビー」。
おれは、ポール・マッカートニーのような天才ではなかったかもしれない。眼を閉じれば、若い頃はロックンローラーとして愉しい、華やかな想い出もあった。齢を取って、大成功こそしなかったが、今もまだこうしてロックを歌うことができている。
庶民派の感情表現を歌(ロック)に乗せるという点で、マイケル・スタンレーの「エリナー・リグビー」には、暖かく、懐かしく、光るものがあります。
懐かしいマッチの炎のように・・・。
全くBRIDEARのニュー・アルバム『Expose Your Emotions』に届いていませんが、今までの作品と何が違うのでしょうか?
歌詞の表現が大きく違います。
大幅なメンバーチェンジを経て、ソングライティング面で、ボーカルのKIMIが歌詞の世界観を全面的にグリップした。
ミキシングも歌唱に焦点を当て、歌詞を浮き出すことに注力しています。
夢、希望、ままならぬ人生の障壁、挫折、絶望、出合いと別れ、再起、再生・・・同時代に生きる等身大の若者の感情、人生観を、明快に聴き取れ、届く歌詞と歌唱に載せ歌っています。
『Expose Your Emotions』、感情の吐露。発露。
BRIDEAR『Expose Your Emotions』の世界観は、ヘヴィメタルにとどまらず、J-POP、ロック、シャンソン、演歌・歌謡曲、フォーク・ニューミュージック等に通ずるポピュラーミュージックの普遍的な言葉の力を重視するものです。
◆BRIDEAR /「Ghoul」
◆浜崎あゆみ /「Depend on you」
https://www.youtube.com/watch?v=l7HnrBXHGIM
◆Every Little Thing /「For the moment」
https://www.youtube.com/watch?v=ji_sPBr00cI
◆『ZARD Forever Best ~25th Anniversary~』MEDLEY
https://www.youtube.com/watch?v=RTIPC56Vjfc