2019年10月下旬、2020年度より予定されていた大学入試への英語民間試験導入の問題点の提起、批判が噴出し、延期論が急速に拡大しています。
百家争鳴状態となっていますが、一番の問題点は何でしょうか?
それは、プロセス(学校英語教育)の質の向上を後回しにして、入試というゴール(結果)をいじろうとしていることです。
さらに、ゴール(入試)の改革の重要なパーツを、民間に丸投げし、その費用は受験生(家計)に負担(ツケ回し)させようとしていることにあります。
現状の学校英語教育で、21世紀の社会人に必要な水準の英語が身につかないという問題があるのであれば、学校英語教育というプロセスの質を向上させるのが最も重要な解決策です。
何事も「筋が間違っている」、「筋を正すべき」というのは正論で、説得力があります。
2019年10月下旬に、急激に英語民間試験導入延期論が拡大した理由は、「筋が通っていない」、「筋がおかしい」からです。
以下の2名のオピニオン・リーダーの英語民間試験導入問題点についての意見は、いずれも、根本的な問題は、プロセス(学校英語教育)を正すべきところを、ゴール(大学入試)の民間丸投げで対応しようとしている点にあると指摘されています。
1人目は在米の文筆家、冷泉彰彦さんです。冷泉彰彦さんは、英語教育の専門家ではありませんが、アメリカの政治を中心にバランスの取れた意見で定評あります。
私は、1頁目の意見には賛成しませんが、2頁目の「プロセス(教育カリキュラム)の改善が間に合わないのに、ゴール(入試への英語民間試験導入)の改革が断行される状況が問題」という見立てには全面的に賛成です。
2人目は、日本の英語教育界の大家で、長年ラジオ英語講座の講師を務められたことでもおなじみの鳥飼玖美子先生です。
鳥飼玖美子先生は、機会の平等やテクニカルな面等、問題点を6点列挙されています。
そして、(具体的にあげた6点の問題を発生させている)根本的な問題として、文部科学省が定めた学習指導要領に従うはずの高校英語教育が、民間英語試験対策に変容してしまう(学習指導要領の軽視、無視、逸脱等)という問題点について言及しています。
これこそが、学校(高校)英語教育というプロセスの破綻であり、英語民間試験導入の問題点が指摘され、延期説が急速に拡大している大きな背景でしょう。
重要なので、鳥飼玖美子先生の主張の最後の部分を引用します。
最後に、根本的な問題があります。高校は大学入試を無視できないので、高校英語教育は民間試験対策に変質します。授業をつぶして模擬試験を受けさせる高校もすでに出ています。民間試験は学習指導要領に従うことを義務付けられてはいないのですから、民間試験対策に追われることは公教育の破綻につながります。かつては、受験勉強が高校教育をゆがめていると批判されましたが、民間試験対策が高校教育をゆがめることになります。
そして、芸能界で、日米ハーフのバイリンガルや帰国子女ではなく、日本語ネイティブとして生まれ、ネイティブクラスの英語を習得された歌手についてです。
20世紀というか昭和のポップス界では、高校時代のAFS交換留学を経て慶応義塾大学の英文科に進学された竹内まりやさんと、浦和高校卒で東京外語大に進学されたゴダイゴのタケカワユキヒデさんの英語力が最強とされていました。
竹内まりやさんはアメリカンイングリッシュ、タケカワユキヒデさんはキングスイングリッシュを話されます。
実は、実戦的な英語ができるのが矢沢永吉さん。
矢沢永吉さんの英語はブロークンなところもある感じもしますが、アメリカの音楽界でビジネスでトラブった場面も突破してきた実戦英語です。
命運をかけて制作に取り組んでいた(全米発売を念頭に制作していた)3rdアルバムのリリースが暗礁に乗り上げた背景には、パートナーとして組んでいた大物ミュージシャンとのビジネス上のトラブルがあったと伝えられています。
矢沢永吉さんはそれについて多くを語らず「ボビーはフェアじゃなかった。」とだけ言っていたのが印象に残っています。
『ヤザワの英語』というと、
「ロスでさ、スタジオで収録終わってから、通訳抜きでさ、あいつら(ドゥービー・ブラザーズやリトル・フィートの面々)と、バーに飲みにいったりするわけよ。で、いい女がいるぜとかなって、おい、ヤザワ行けよとかなって、いっちょ口説きに言ったりするわけ。そうするともう仲間よ、仲間、ファミリー、わかる?ヤザワ、そうやってイングリッシュ、そう、英語身に着けたの、ユー、シー?」(全部創作です。念のため)
とか言いそうですけど、実際には、アメリカで仕事をするにあたり、水面下で、大変な努力をして英語を学習されています。
矢沢永吉さんの”砂をかむような英語学習の苦労”については、活字化されているインタビューの断片に記されてきています。
本人が語っている映像では、エンターテイナーとして、英語学習のプロセスも面白おかしいエピソードになっているのです。
矢沢永吉は何でも気合を込めて打ち込むタイプだ。全米制覇を狙った時はあのドゥービー・ブラザーズのメンバーさえバックに呼んだ。米国で矢沢が一番苦労したのが英語のレッスンだったと教えてくれたのはかって多くの仕事を共にした名カメラマン三浦憲司 。とにかく矢沢は英語レッスンが嫌いだった。
— 岩田由記夫 (@IWATAYUKIO) June 28, 2013
◆矢沢永吉NEW ALBUM『いつか、その日が来る日まで...』初回限定盤 特典映像 未発売BEST LIVEセレクション ダイジェストver.2
https://www.youtube.com/watch?v=oTHttYOuDzo
◆Andrew Gold - Lonely Boy
矢沢永吉さんの『E'』、『YOKOHAMA 二十(ハタチ)まえ』、『東京ナイト』等の傑作アルバムで、プロデューサーとしてコンビを組んできたアンドリュー・ゴールド。
自身の西海岸の内省的なシンガーソングライターのイメージとは正反対の矢沢永吉さんのアルバム『P.M.9』での爆発的なハードロックのスライドギターが衝撃的です。
https://www.youtube.com/watch?v=boAv-Bu4MrI
◆Elvis Costello - Alison (Live)
クローバーはアメリカで大きな成功を得られずイギリスにわたり、シン・リジィのOAを務めるなどの活動をしていました。そして、パンクムーブメントのど真ん中で、ニック・ロウのプロデュースによるエルヴィス・コステロの『マイ・エイム・イズ・トゥルー』に、バックバンドとして録音に参加します。
帰米後のクローバーは、ヒューイ・ルイス&ザ・ニュースとして大ヒットを飛ばし、ジョン・マクフィーはドゥービー・ブラザーズや矢沢永吉さんのバックバンドの要として大活躍します。
https://www.youtube.com/watch?v=17RrTNgYV4k
中華圏や東南アジアの若者でも誰もが英語ができるわけではありません。パン(Pun)の英語は上手い。タイのAKB48の姉妹グループであるBNK48のキャプテンと副キャプテンの2人が英語ができるのは偶然ではないでしょう。