先日のエントリーで、少しばかりアメリカのバンド、アラバマについてふれました。
アラバマというバンド、日本では、キンプリ(King & Prince)、あいみょん、King Gnu(キングヌー)、欅坂46等の人気者と比べたら、人気・知名度ともに0(ゼロ)といっても過言ではないでしょう。
日本のラジオ(FM、AMとも)かかることもおそらくほとんどないはずです。
アラバマは、アメリカではまぎれもなく”超”のつくスーパースターの存在です。
レコード売上は7,500万枚以上(数値は米と日のwiki記述から引用)。この売上はロックだとヴァン・ヘイレンとかアイアン・メイデンとかデフ・レパード等のクラスです。
もちろん、2019年の現在、フィジカル(CD)売上でバンドの規模を計る時代ではありません。1960年代から1970年代にデビューしたバンドの、数年前までのフィジカル累計売上のおおよその目安の数字です。
アラバマの音楽性は、カントリー、ロック(サザン・ロック)、ポップとされ、主な成績はカントリーチャートです。
試しにアメリカのBillboardの「Chart History」-「Top Country Albums」で検索してみると、『11 No. 1 Hits』『26 Top 10 Hits』と成績が載っていました。
https://www.billboard.com/music/alabama/chart-history/country-albums
一曲単位(ヒットソング)を示すシングルチャート(country songs)だと
『33 No. 1 Hits』『 51 Top 10 Hits』です。
https://www.billboard.com/music/alabama/chart-history/country-songs
33曲のナンバー1ヒットがあるということは、人気が落ち着いても強大な音楽資産をベースに数十年間は活動することができそうです。実際にはアラバマも多くのベテランバンドと同様、解散、再結成を経て、再び活動を活発化するというキャリアをたどっています。
アラバマの1988年のヒット曲「Song Of The South」のMVを観て、そのテーマに考えさせられるものがありました。
アラバマも、観た人に考えさせよう、何か訴えようとして作っているのでしょう。
「Song Of The South」のMVは、冒頭2分間を使って、ダストボウルについて描写しています。
ダストボウルとは、1930年代のアメリカ中西部を襲った砂嵐です。原因は、開拓・耕作による地表の露出によるものでした。ダストボウルによりアメリカのグレート・プレーンズと呼ばれる肥沃な農業地帯の農業が壊滅的打撃を受けたのです。
グレート・プレーンズとは、アメリカ合衆国(US)の面積の約1/6を占める農業地帯です。
州で言うと、テキサス州、オクラホマ州、ニューメキシコ州、コロラド州、カンザス州、ネブラスカ州、ワイオミング州、モンタナ州、サウスダコタ州、ノースダコタ州の全域およびミネソタ州とアイオワ州の大部分です。
テキサス、アーカンソー、オクラホマ等の3州から農業の壊滅により離農し新天地を求めた移住者は約350万人に達するといいいます。(日本語wiki数値)
2011年(平成23年)3月11日に発生した東日本大震災での避難者数は、平成23年12月時点で約33万3千人にのぼりました。直近の平成31年2月時点でなお、約5万2千人の方が避難中です。(復興庁発表数値をもとに1,000人未満を四捨五入。)
アメリカがダストボウルに見舞われた当時の人口は、1930年が約1億2千万人、1940年が約1億3千万人です。
(アメリカの人口は、Googleで『US POPULATION 19**』と入力するとGoogleがアメリカ合衆国国勢調査局、世界銀行のデータから引いてくれます。)
日本の総務省統計局(国勢調査結果)より引くと、平成23年(2011年)10月の人口は約1億2千8百万人。一千万人以下を繰り上げて1億3千万人。ちょうど丁度アメリカの1940年の人口と同じです。
アメリカ o r カナダの音楽業界関係者(誰だか忘れた!)がインタビューで次のように話していました。曰く、ロックに必要な条件について。その中で印象に残っているのが次2点です。
(あくまでその彼が関わる音楽を判断する基準でしょうけど。)
それは、
①『鉄の音がするか。』
②『カントリー(ミュージック)のノリを持っているか(あるいは、理解しているか)。』
の二つの条件。
1930年の当時人口約1億2千万人のアメリカで、約350万人が天災による農業の壊滅によって職を失い、新天地を求めて移住する。
このことは、当事者の生活はもちろんですが、アメリカの社会、経済、政治、文化全般に与えた影響は極めて大きかったことが想像されます。
アラバマの「Song Of The South」MVには、世界恐慌に直面した当時のフーヴァー(フーバー)第31代合衆国大統領の選挙ポスターらしき映像も挿入されています。
また、看板には、『JOBLESS MEN KEEP GOING 』『WE CAN'T TAKE CARE OF OUR OWN』との文字が読めます。これは、英語の情報を見ると、世界恐慌を象徴するサイン(看板)のようです。
アメリカやイギリスには、常に怒っている感じのバンドやミュージシャンは多く存在します。
下にリンクしたトム・モレロ(レイジ・アゲンスト・ザ・マシーン、RATM)は怒っているミュージシャン、ロックバンドの典型でしょう。あるいはアイルランド出身のU2は、あんなにビッグになっても一体何に対して怒っているのでしょうか?
ここのところが、言語と歴史を共有しない日本からだと非常にわかりにくいところです。
と同時にどうもロックという音楽を理解するために避けて通れないツボのようにも感じます。
アラバマは、決して『怒っている』芸風のバンドではありません。淡々と人々の暮らしを応援する系の芸風に見えます。
と同時に、落ち着いた音楽性ながらアラバマの「Song Of The South」は明確に何かを主張していることもわかります。
アメリカの国民的バンド、アラバマの訴えていることは何なのか?ロックに必要な鉄の音とは何なのか?カントリーのノリとはどういうものなのか?
そんなことを考えさせられるアラバマ「Song Of The South」のMVでした。
◆アラバマ「Song Of The South」
https://www.youtube.com/watch?v=lHdXQAQHjd8
◆Elvis Costello and Mumford & Sons「The Ghost of Tom Joad & Do Re Mi Medley」 (Acoustic Cover)
https://www.youtube.com/watch?v=-Idt8wqSSeE
◆Bruce Springsteen「The Ghost of Tom Joad」 (Live Video Version featuring Tom Morello)
https://www.youtube.com/watch?v=B-c6GphpAeY
10代に人気のシンガーソングライター、あいみょんは、竹原ピストルさんを対バン相手に選ぶセンスはすごいですね。