タイの国民的人気を誇る女性アイドルグループBNK48(日本のAKB48の海外姉妹グループ)の第一回の選抜総選挙(『BNK48 6thシングル選抜総選挙』)は、蓋を開ければ、下馬評通り、キャプテンのチャープランが2位を約2万5千票近く引き離し圧倒的多数で1位となりました。
1位(センター)は番狂わせ、伏兵が出現せずチャープランで丸く収まった感もあります。
しかし、それ以外、2位以下の順位においては大きな番狂わせとなる結果もありました。
ことさら衝撃的だったのは、現時点では、BNK48全体の組織的序列としてはチャープランに次ぎ2位のチームBⅢキャプテンのPun(パン)と、3位のチームBⅢ副キャプテンのジェニスの選挙結果です。
Pun(パン)とジェニスは、BNK48加入の10年以上前の幼少期から、芸能(子役)活動経験があり、またダンス(ジェニスは歌も)のレッスンを積んできています。
そして、K-POPやヒップホップのアマチュアカバーダンサーとしては、バンコクでも抜きんでて名の知られた存在だったことが、アマチュア時代の動画や映画『Girls Don't Cry』のシーンから判ります。
Pun(パン)とジェニスの2人は、日本のアイドルのような素人っぽいかわいらしさを訴求するタイプというより、プロフェッショナル志向のスキルとカッコよさを訴求する、いわば『パフォーマンス派』なのです。
このことが、BNK48の大きな特色となりました。
BNK48の台頭は、タイ地場の女性アイドルグループがK-POPに一掃されていた2016年までの状況から、再びタイ人による女性アイドルグループが市場を奪還することにつながりました。
タイ人アイドルグループの再興にあたって、Pun(パン)やジェニスらのパフォーマンス志向のメンバー達による『K-POPに見劣りしないパフォーマンス』を見せる意地とスキルが果たした役割は非常に大きいと見ています。
ジェニスは2018年の『第10回AKB48世界選抜総選挙2018』の時から、金権選挙に対して一貫して批判的な発言を続けてきました。
ジェニスは、「一人一票の本来の趣旨の人気投票なら抵抗はないが、一人複数票投票可能なシステムのもとでファン(ヲタ)に過剰に経済的な負担をかけたくない」という趣旨の正論を言い続けていたのです。
ジェニスは、2018年12月12日の選挙速報発表および2019年1月12日の最終速報ともに6位の結果を受け、1月15日に事前のスケジュール予告なく突然動画配信ライブを実行します。
ジェニスは自分が上位(1位~3位)の後列で踊ることになることに対する不安、上位にランクしたいという希望とファンに対する配慮の葛藤等の感情を涙ながらに訴えます。
この浪花節的な選挙活動が功を奏したのか、おそらくジェニスのファン(ヲタ)達は奮闘し、選挙結果は2回の速報(ともに6位を記録)を大幅に上回る2位の結果となりました。
君子は豹変するのです。
これからジェニスは、日本のかつて宰相、田中角栄さんのように『選挙に強いジェニス』の称号で呼ばれることになるかもしれません。
一方、Pun(パン)は、2018年なかばには、SNSのファロワー数でキャプテンのチャープランを追い抜き、若者、そして10代とそれ以下の子どもの人気では、キャプテンのチャープランを上回ったのではないかと報じられていました。
私が、TwitterでPun(パン)に関する情報を発信した際に、ファボあるいはRTしてくれるアカウントのアイコンを見ると、タイの地方の中学生なんだろうなと見える素朴そうなこどもの姿だったりして、Pun(パン)の支持層の実際の姿を目にすることがありました。
Pun(パン)は、驚くべきことに、『他者からの相対的な評価、順位付け』に一切の価値を置きません。
『私は、センター(1位)になりたいというのはないの。私がなりたいのは、カッコいいいPun(パン)でいること。』
(BNK48のドキュメンタリー映画『Girls Don't Cry』のインタビューシーンより)
Pun(パン)は、『カッコいいPun(パン)』という自らの内部に存在する価値基準によって常に自らのパフォーマンスを絶対評価しているのです。
Pun(パン)は、自らの価値基準に従い、一貫して他者評価である選挙、特に投入する額の多寡で順位が決まる選抜総選挙に対しては、距離を置き続けてきました。
選挙活動(集票活動・発言)を一切行わず、『日常のパフォーマンス(がどうみられるか)が全て』という姿勢を貫き通したのです。
オーンやジェニスは、中間発表の結果に対して(不本意だと感じ)涙を流しました。それに対して間違いなくファン(ヲタ)は奮起したことでしょう。
Pun(パン)は、速報の7位、最終速報の8位、そして選抜選挙結果が9位と、じりじりと1位ずつ順位を落とす結果となりました。
大方の見方は、Pun(パン)の実力と人気をもってすれば、妥当な順位は上位5位以内というもののようです。
逆の見方をすると、一切の集票活動、選挙活動を行わずとも、日常のパフォーマンスだけを訴求してトップ10にランクできることが、Pun(パン)の実力を示しているともいえるかもしれません。
私は、Pun(パン)がこの先、選抜総選挙に距離を置き続けたとしても、運営からの信頼はゆらがないと見ています。
理由は、選抜総選挙も第2回、第3回と回数を重ねると批判も出てくると推測するからです。
例えば、投票資金に回すために、食事を削って、空腹のあまり倒れて救急車で病院に運ばれるヲタが何名か出るような『事件』が起きたら、BNK48は厳しい批判を受けるかもしれません。
実力、人気がトップクラスでありながら、実力本位、パフォ―マンス本位を貫き、選挙に距離を高くPun(パン)の存在は、この先にBNK48に対する『金銭選挙批判』が起きた時に緩衝となり、BNK48全体に対する批判を緩和させるのではないかと推測します。
◇BNK48 Pun(パン)
◇BNK48 ジェ二ス
◇『BNK TYO』さんと『BNK48 fanですよ』さんの記事を参考にさせていただきました。
<参考エントリー>