1996年当時、LOTTEのチョコ・アイス等のブランド『ZERO』のテレビコマーシャルシリーズに安室奈美恵さんが出演していました。
CMソング「ゼロから歩き出そう」を担当していたのが、阿久津健太郎さんと阿久津愛さんの兄妹デュオZERO。
ZEROはLOTTE『ZERO』シリーズのタイアップ曲を引き続き担当しヒットを連発、テレビやカラオケでおなじみの存在となりました。
BAND-MAIDのリードボーカリスト彩姫さんは、音楽はもちろん、姿勢・生き方等全般にわたって、安室奈美恵さんの強い影響を受けたいわゆる『アムラー』です。
安室ちゃんが引退宣言したってってゲネ中にかなみちゃんから聞いて崩れ落ちた
— BAND-MAID SAIKI (@saiki_bandmaid) September 20, 2017
明日もゲネ頑張ります
ツアー頑張ります
楽しみですから頑張ります
彩姫:私は歌を始めるきっかけが安室奈美恵ちゃんで、小学4年生のころに聴いて、好きになりました。そこが基盤で中学、高校でバンドが好きになって、黒猫チェルシー、毛皮のマリーズ、挫・人間を聴くようになりました。
彩姫さんが(安室奈美恵さんの)「Put 'Em Up」を買ったのは、小学生時代。「その頃ダンスをやっていたので、ダンスの曲として知った。ミュージックビデオもカッコよくて、そこからどんどん安室奈美恵さんを好きになっていった」と当時を振り返ります。
1990年代、沖縄の芸能音楽スクール、マキノ正幸代表率いる沖縄アクターズスクールは、平哲夫代表率いる東京の芸能事務所、ライジングプロダクションとタッグを組み、次々と沖縄出身のアーティストを日本の全国区でスターにしていきました。
↓ 写真は、DA PUMPのISSA、三浦大知さん(ex.Folder)、MAX(前身は安室奈美恵さんも在籍したスーパーモンキーズ)。安室奈美恵さんがいないのは引退しているからでしょう。
阿久津健太郎さんと阿久津愛さんのデュオ、ZEROは、ライジングプロダクションに在籍していました。シュガーレスな『ZERO』シリーズのチョコとアイスのCMで「ゼロから歩き出そう」(ZEROのヒット曲)をはじめとするタイアップ曲に起用された背景です。
阿久津健太郎さんは、1999年のZERO解散後、ライジングプロダクションに所属するアーティストに楽曲提供していきます。そして、その中には沖縄アクターズスクール出身のアーティストが多く含まれます。
例えば、MAX(ルーツは安室奈美恵 with SUPER MONKEY'S)には、2001年から2002年にかけて「Lovin' All Night」、「Spring rain」(シングル曲)等の楽曲を提供しています。
BAND-MAIDのボーカルの彩姫さんは、自らの生き方に信念を持ち、主張もする自我の確立したタイプです。
彩姫さんは、10代の頃から、自分の信念にそぐわないこと、納得がいかないこと、あるいは、口は達者でも、実力やセンスや人格に疑問を抱かせるような大人達には、決して流されず、毅然と『No』と言ってきたはずです。
自身が一貫してそのアティテュード(姿勢・態度)に見合う努力と生き方をしてきているからです。
彩姫さんは、年齢からすると、『ZERO』シリーズのCMとタイアップヒット曲を憶えている世代より下です。
それでも、自身が尊敬し、最大の影響を受けた安室奈美恵さんと同じ時代・空間で仕事をし、実績を積み上げてきた音楽プロデューサーの阿久津健太郎さんが、音楽活動を開始するにあたりキーパーソンだったことは、非常に幸運だったはずです。
大金を積んで、BAND-MAIDをクリス・タンガリーディス(Chris Tsangarides)やロイ・トーマス・ベイカー(Roy Thomas Baker)のようなHR/HMカテゴリでの実績ある大プロデューサーに任せれば良いレコードが出来たということはおそらくないでしょう。
プロデューサーは、特にバンド初期においては、バンドメンバーが内に持っているものをどう引き出し、それにカタチを与えるかどうかです。
だから(洋楽はもちろん)、当事者として歌謡曲やJ-POPに通じている阿久津健太郎さんとBAND-MAIDの組み合わせはベストマッチだったのではないでしょうか。
音楽面でBAND-MAIDにラッキーだったことは、阿久津健太郎さんが、ロックの系譜(白人音楽)と、ダンスミュージック、ブラックミュージック、歌謡曲の系譜(黒人音楽)の両側の音楽に通じていることでした。
どちらかというと軸足、出身はロックのように見えますが、メロディーの商業音楽としての競争力が高いので、編曲がロックでもダンス・ミュージックでもどちらでもいけます。多種多彩なポピュラー音楽とその流行に目配せしているのがわかります。
阿久津健太郎さんは、元々はロック系楽曲しか作れなかったものの、職業作家として活動するにあたって、ダンスミュージック、ブラックミュージックを必死に勉強し、作家としての幅を広げたことをインタビューで答えています。
阿久津 「今、PASSPO☆でやるようなロックは、本当に10代の頃から好きだったから自然と作ってたし、ZEROっていうアーティストをやってたときも、基本的にはロック的なものだからそれは作れてた。でもZEROの活動が終わって、作家をやりましょうってなったときに、ロックだけじゃ決まんないわけよ、曲が」
根岸 「ロックだけだと」
阿久津 「特にダンスを基本とするアーティストが多い事務所だったから、ダンス曲を作れないとっていうのがあって。本当そこが一番暗黒期だったんだけど、2年ぐらい毎日曲を出しても決まらなくて」
(中略)
好きな曲だけじゃなくて、いろんな人の曲をめちゃくちゃ聞いた。ジャズからR&Bから、とにかくオールジャンル。それからいろんなジャンルの曲が作れるようになっていったんだよね」
阿久津健太郎さんが手掛けた白人音楽・ロック系の仕事の系譜に、ガールズロックバンドの中ノ森バンドがあります。中ノ森バンドで培った実績の延長がロック系のアイドル/バンドのPASSPO☆とBAND-MAIDなのです。
後者(黒人音楽、歌謡曲系)の系譜が、MAXや知念里奈さんやFolder5等の沖縄アクターズスクール勢をはじめとするJ-POPです。prediaはこの路線の延長で、BAND-MAIDの楽曲でも「愛と情熱のマタドール」だけはこの系列になります。
阿久津:得意というか、それがたぶん“中ノ森BAND感”なのかもしれません。PASSPO☆は「アメリカンガールズロック」を謳っていますが、これって細かく言えば「カナダロック」なんですよ。僕が個人的にサム41やシンプル・プランのようなバンドが好きなので、中ノ森BAND時代からそういう曲ばかり作っていたんです。
(中略)
阿久津:すごく当たり前のことですけど、音楽はなんでも聴いたほうがいい。僕も10代のころは「自分はロックだから」と、ほかのジャンルを聴こうとしなかったから、なおさらそう思います。コンペばかりの時期にダンスものを聴いて、曲の幅は広がったし、通る曲も増えた。
阿久津健太郎さんは、2019年には、ダンスミュージックの本場K-POP出身のジェジュン(ex.東方神起)へも楽曲提供しています。
いいなぁ。阿久津さん。いいなぁジェジュン。
— BAND-MAID SAIKI (@saiki_bandmaid) March 8, 2019
ここのところは、10代~20代を中心とする女性層へのメッセージとして結構重要かも。
あいみょんが人気爆発した後、あいみょんが10代半ばの頃アルバイトで稼いだお金で、東方神起のコンサートに通っていたことを初めて知った東方神起のファンの女性層から、「あいみょん、まさかのトンペン?!」と好意的な反応がありました。
BAND-MAIDの彩姫さんが、プレイリストにジェジュンの楽曲を挙げていることも、ジェジュンの日本のファンダムが好意的に受け止めている例が散見されます。
ガールズロックバンドが長く続けられるかどうかは、同性のファンをつかめるかどうかです。
音楽的なポテンシャルやセンスに光るところがあっても、高齢男性層のみのファンコミュニティから飛躍することができず、沈んで(解散・活動停止等)いったガールスバンドをいくつも見てきてしまいましたので。
◆Mystica Girls(ミスティカ・ガールズ)「Abre Bien los Ojos」 (Live)
BAND-MAID「Dice」が好きな方にはフィットするかも?。
メキシコのベテラン嬢メタルミスティカ・ガールズ。
昨年、たしかヘッドライナーがディープ・パープルとスコーピオンズ(もしかしたらヘッドライナーの片方はジューダス・プリーストだったかもしれません)だったメヒコの大型フェスに、ミスティカ・ガールズのメンバー全員が仲良く観にいっていました。
メヒコのHR/HMファンはSNSのアイコンがアニメキャラ、つまり若い層が多いです。もちろん、50歳代でアイコンがアニメという男性もいるかもしれませんが・・・。
https://www.youtube.com/watch?v=_wxTVaQoAJY
◆Mystica Girls(ミスティカ・ガールズ)「Viejos Tiempos」En El Garage Pro
(説明不足で)誤解されることを承知で言えば、こういう歌謡曲に聴こえる南米の嬢メタルは良いですね。
ちなみにBAND-MAIDはメキシコで人気が高くて、2018年に人気テレビ番組『Venga la Alegría』に出演し、「Choose Me」を歌っています。ファンカムと違ってラインでミックスしているフロント2人のハモリは聴きどころありました。
https://www.youtube.com/watch?v=IQezWhBLoII
◆もちとちーず「BABY KISS」LIVE
オリジナルはpredia(作詞・作曲:阿久津健太郎)。BAND-MAID「愛と情熱のマタドール」に通じる歌謡曲な曲調。
https://www.youtube.com/watch?v=sz69zERvMIU
◆predia「カーテンコール」
https://www.youtube.com/watch?v=scrB1XJdxnw
◆predia「Re-Make」(Live Lyric Video)
https://www.youtube.com/watch?v=wIwbiUAuzWQ
◆MAX「Spring rain」
MAXナナさんりっちゃんライブ最高でした!今もパワフルなステージを見て本当に力貰えました。 何より2人の楽しんでもらいたいという気持ちが終始溢れていて素敵な空間だったね。 Spring rainを今こうしてギターを弾いて一緒に披露出来たことが感慨深かったです PASSPOメンバーも来てくれて心強かった! pic.twitter.com/jXF2bPjpbH
— 阿久津 健太郎 (@kentaroakutsu) April 14, 2018
https://www.youtube.com/watch?v=_GQCRDd-tXI