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BAND-MAIDの「start over」が重要な理由(2)覆水盆に返らず、さよならクラッシュ?

 

 

2018年7月に発表されたBAND-MAIDのメジャー3作目シングル「start over」MVの主演ヒロインの(元?)恋人役の男性を演じているのは、モデルのMITSUGIさん。

 

ストーリー、シナリオは、ラストの破壊のショットから解釈すると、『覆水盆に返らず』です。

 

投げつけられたビール瓶で破壊される水槽、(プレゼントされたであろう)ネックレスやブレスレットを引きちぎって投げつけ床に叩きつけるシーン、男性を叩きつけるクッションから飛び散る羽毛、投げられた吸殻入れから散らかる煙草の吸い殻、割れた食器、転がった椅子・・・・・・。

 

これらの描写は、ヒロインと(元?)恋人役の男性の関係を表現する演出です。

 

MVの途中、そして冒頭とエンディングには、荒れ果てた部屋で独り茫然とへたり込むヒロインのショットが挿入されます。

 

これらのMVの描写から、ヒロインと相手役の間にDVや共依存の関係を感じる方もいらっしゃるでしょう。

 

 

若いアメリカ人のYouTuber・音楽リアクターのLivさんは、BAND-MAID「start over」MV本編中の、関係の破滅から元の蜜月関係へとの時間の逆回転映像の演出から、2人は関係性をやり直し(start over)、ハッピーエンドを迎えたと解釈されたかもしれません。

 

私は、エンディングで再び、破壊され尽くした部屋(2人の関係性を表している)で茫然としてへたり込むヒロインのショットが挿入されることから、別な受け止め方をしています。

 

ヒロインにとっての「start over」は、関係性を再構築しやり直すことではなく、「もし、あの時、私がああしていたら、こうしていたら・・・」という元カレへの追憶を断ち切り、決別することではないかと解釈しているのです。

 

そして、ヒロインは、独り再生と自立への道に向けて歩みだしたのではないでしょうか。

  

 

ここで、注目するのは、ヒロインの相手役、元カレ、DV男を演じるMITSUGIさんのスタイリング(衣装、髪型、メイク等)です。

 

短髪に半袖シャツ、鋭い視線・・・。

 

DV元カレのルックスが、セックス・ピストルズと並ぶロンドン・パンクを代表するバンド、クラッシュの初期の外見を連想させるのです。

 

元カレ役の俳優のスタイリングのモチーフが、パンクを代表するクラッシュだとすると、BAND-MAIDは「start over」の歌詞とMVからどのようなメッセージを発していることになるのでしょうか?。

 

それを探るためには、「start over」発表当時、BAND-MAIDというバンドが歩んできたキャリアや置かれていた立場、直面していた問題等はどのようなものであったか考える必要があります。

 

BAND-MAIDのルーツは、アイドル系のマネージメントから産まれた企画です。

 

その後、BAND-MAIDは、アイドルやガーリーなガールズバンドシーンを離れ、ハードコア畑出身のマネージャーがブッキングするラウド系バンドとの異種格闘技戦の対バンを繰り返しました。

 

このことが、BAND-MAIDが強靭なバンドアンサンブル(ハードロックサウンド)を獲得した背景だというのが私の見立てです。

 

そして、ハードコア・ラウド系のシーンを背景に育ってきたことから、ライブでは、クラウドサーフ、ダイブ、モッシュ等のハードコア出自のカルチャーが持ち込まれていました。

 

ハードコアシーン出身のマネージャーがプロジェクトを離れ、BAND-MAIDのマネージメントの体制が変った当時、BAND-MAIDは、方向性、進路を定めるにあたって問題や迷いを抱えていた可能性があります。

 

その一つは、バンドとしてのさらなる集客の拡大、若年層・女性層の開拓、ホールへのステップアップ等を目指す上で、クラウドサーフ、ダイブ、モッシュ等のハードコア出自のカルチャーとどう向き合っていくかということだったかもしれません。

  

自らを育んでくれた(かつて蜜月だった?)カルチャーと決別することの迷いや、独自の姿勢で独自の道を歩みを始めることの決意。 

 

そのような背景を前提に、BAND-MAIDの「start over」MVのDVを連想させる演出や、傷つきながら独り再生と自立を覚悟するヒロインの描写を観ると・・・。

 

小鳩ミクさんによる物議を醸したBAND-MAIDの「start over」の歌詞の一節とジャケットのアートディレクションの受け止め方もまた違ってくるかもしれません。

 

『 掲げた ピースサイン

  I don't give a f**K

  Be born again. 』

 

(  BAND-MAID「start over」)

 

 

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The Clash - Train in Vain (Live at the Lewisham Odeon)  

クラッシュは、労働者階級のアイデンティティや文学左派的姿勢等のパンクのアイコンのようなバンド。「Lost In The Supermarket」(『LONDON CALLING』)の抒情性、文学性にクラッシュの特徴が見える派。

Helsinki Lambda Club(ヘルシンキ ラムダ クラブ)という、昔BASEMENT-TIMES(旧地下室タイムズ)が一推ししていた邦ロックバンドは、同名の「Lost in the Supermarket」を発表しクラッシュへのリスペクトを表明していました。また、AKB48の舞台「マジすか学園」~Lost In The SuperMarket~とクラッシュの『LONDON CALLING』の関係は解りません。 

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◆BEFORE MY LIFE FAILS - "SHEEPS" Farewell Show (Official Live Video)

2016年のBAND-MAID異種格闘技戦時代に何度も対バンしているBMLF。

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BAND-MAID / start over 

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◆トラブル等の紆余曲折を経てBAND-MAID主催公演ではダイブ・サーフ・リフトなどの禁止が徹底されるようになっていった。

bandmaid.tokyo

 

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