- あいみょんの「マリーゴールド」と「メダロット2」ゲーム音楽が相似していると話題に
- やはり邦楽(歌謡曲、J-POP、邦ロックetc.)に洋楽の「パクリ」ってあるの?
- チャック・ベリーの著作権者がビートルズ側(ジョン・レノン)を訴えた件
- ロックの歴史、ex.ピンクフロイドの『ザ・ウォール』を知っていれば、ナチス衣装・小物を知らずに着用して”炎上”は防げる?
- 結局、あいみょんの「マリーゴールド」は、ゲーム「メダロット2」のBGMのパクリなんですか?それともパクっていないんですか?
- <関連音源>
- <関連エントリー>
あいみょんの「マリーゴールド」と「メダロット2」ゲーム音楽が相似していると話題に
2018年紅白歌合戦に初出場したシンガーソングライターのあいみょん。
紅白歌合戦で歌われ大ヒット中の楽曲が「マリーゴールド」です。(アルバム『瞬間的シックスセンス』収録)
早くも名曲の呼び名も高い「マリーゴールド」は、既存の楽曲に相似しているのではとの話題が浮上したと報じられています。その楽曲は、ゲーム『メダロット2』のBGM。
実際のところどうなのでしょうか。聴いてみました。
「似てる」と感じるか「似ていない」と感じるかは、人によって差があります。
例えば、被験者50人に2曲を聴き比べてもらって結果を表にするなどする必要があります。
そして、判断するには、音楽のプロが、譜面の上で分析する必要があります。今は譜面を書き起こせるソフト・アプリがありますから譜面による分析はしやすいですね。
私は、洋楽、邦楽ともにたくさんの組み合わせの似ている曲を聴いてきてしまっています。そのため、「第一印象でこれはそっくりだろう」と感じる曲でも、10回、20回と聴くうちに、だんだんと2つの曲は違う曲(それぞれ独立した顔・表情を持つ曲)と認識できるようになってくることが、体験上分ってしまっています。そのため何ともいえません。
いや別に、2019年3月の夕方の時間帯のドトールコーヒーのプレイリストでヘビーローテーションされているロビー・デュプリーの曲とドゥービー・ブラザーズ(マイケル・マクドナルド)の曲について言っているわけではありませんよ。
極端な話、1980年代の歌謡曲、シティポップ、ニューミュージック、アイドルポップスの3割ぐらいは、ドゥービー・ブラザーズ(マイケル・マクドナルド)のパクリ(じゃなかった、インスパイア・オマージュ)系なんじゃないかと思ってます。
2019年、国民的バンドに駆け上ろうとしているKing Gnu(キングヌー)は、1980年代の歌謡ロックポップヒットメーカー「安全地帯」へのリスペクトを公言しています。それは、このツボ(ドゥービー・ブラザーズ/マイケル・マクドナルド経由の邦楽・歌謡曲へのブラックミュージック要素の影響)を押さえているということだろうと解釈しています。
直近50年程度の邦楽(歌謡曲、ニューミュージック、J-POP、邦ロックetc.)の楽曲に、他の曲(洋楽だったり映画音楽だったり他の邦楽だったり・・・)に似ていると感じる曲は、実は、ものすごくたくさん、あまりにもたくさんあります。
なので、「マリーゴールド」と「メダロット2」BGMの2曲については、「似ている」と感じる人もいるだろうし、「別に似ていない」と感じる人もいるだろうという印象を受けました。
そんなわけで、本日はロックンロールの歴史について、ロック検定で学べるのか?ロック検定は実生活や仕事に役に立って履歴書に書けるのか?それともネタ資格なのかについて考えてみました。
やはり邦楽(歌謡曲、J-POP、邦ロックetc.)に洋楽の「パクリ」ってあるの?
よく、日本の歌手やバンドの曲が洋楽や過去の曲のパクリだと指摘が盛り上がっているケースは多いのものです。
しかし実際に聴いてみると、「これはパクリだ!」と話に乗れる例はあまり、というかほとんどありません。
昭和の歌謡曲等で、9割がた、特定の洋楽ヒット曲のパクリだろうという水準の楽曲は存在します。(残りの1割は曲名と歌詞が違う位)
洋楽の音楽家にとって、売上を念頭に置いていない外国(アジア)でパクられても(自分の曲の売上が減る等の)被害が生じないので、問題になることはまずなかったのです。
むしろ、洋楽のオリジナル楽曲と似た曲調がマーケットに馴染むことによって、洋楽の原曲が広まる土壌を耕してくれればいいや位の感覚が、元曲の洋楽を扱う日本のレーベルにもあったのではないでしょうか。
「万一、問題になったら、作曲者クレジットに追加すればいいだろう。」くらいの双方の感覚があった感じです。
チャック・ベリーの著作権者がビートルズ側(ジョン・レノン)を訴えた件
洋楽の歴史で有名な著作権侵害(盗作)訴訟に、双方ともロックのレジェンドであるチャック・ベリー対ビートルズ(ジョン・レノン)の訴訟があります。
チャック・ベリーの著作権管理者が、ビートルズの「カム・トゥゲザー」は、チャック・ベリーの「ユー・キャント・キャッチ・ミー」の盗作だと訴えたのです。
本件について、『MTVロック検定公式問題集』の記述から引用すると、
『これが盗作だと言われるとロックの歴史はまるごと盗作の歴史になってしまう』
とあります。
まったくその通りで、立場・見方によっては、ロックの歴史はまるごと盗作の歴史なのです。
レッド・ツェッペリンの作曲法で有名なアレ。
古いフォークソングやブルースに作詞者・作曲者不詳という楽曲は多いものです。
ブルースやジャズの黎明期から時代が下って、20世紀半ばになっても、「良いフレーズはみんなのもの、良いメロディーはみんなのもの、良いリフはみんなのもの」という「ユルいのり」はまだあったようです。
そのカルチャーは、音楽的土壌を引き継いだロックにも引き継がれた面があったようです。
「著作権意識」が未発達であったため「著作権」で囲い込まないコモンズ的なノリは、反面、優秀なミュージシャンを収入の面で圧迫し、二束三文で楽曲の権利を手放してしまい、貧しい中、酒びたりの暮らしの中、生涯を終えるというような、絵に描いたようなジャズメン、ブルースメンの悲劇的一生とも表裏一体でした。
ロックの時代になって、ビジネス感覚、権利意識の発達したロック世代がガンガン業界の風習を近代化させ、アーティストの収入面も向上させていったという流れでしょう。
もとい、「パクリ」と呼ぶか、「盗作」と呼ぶか、「模倣」と呼ぶか、「パロディ」と呼ぶか、「オマージュ」と呼ぶか、「影響」と呼ぶか、「リスペクトしている」と呼ぶか、その曖昧な(グラデーションのような)差をどう区分するか、どう呼ぶかというのは悩ましい問題です。
面倒なので私は、「引用」と呼んでいます。
これはモロだろ、あるいはこれはあんまりだろという水準のパクリは、『強引用』(強い引用)等と呼んでいます。
完全アウトだろ、という水準は、『超強引用』(極めて強い引用)ですかね。
チャック・ベリー側がビートルズのジョン・レノンを訴えた件は、金銭的に和解しています。
ロックの歴史の生き字引であるDJの小林克也さんが、FMラジオで話していた内容はこんな感じでした。
和解条件の中に(ビートルズは既に解散していたので)、ジョン・レノンがソロでチャック・ベリーの楽曲をカバーし、リリースすることがあったらしいというような内容です。
曖昧な言い方なのは、公表しない条件で和解したからなのでしょう。
本件に関する情報は、業界内外、音楽ファンの憶測しかないということかなと。
ロックの歴史、ex.ピンクフロイドの『ザ・ウォール』を知っていれば、ナチス衣装・小物を知らずに着用して”炎上”は防げる?
「ロック検定」、当初は、趣味系のネタ資格的な注目のされ方が多かったようです。実際に受験者の体験記を見てもネタ資格な感じもします。
尚、「ロック検定」を話題作りのために、履歴書に書いた時の面接官の反応についての投稿はないようですね。
数年前、「ロック検定」のテキストと問題集を書店で手に取ったことがあるのですが、結構ちゃんとした高度な知識を求められる印象を持ちました。
「ロック検定」は冠がMTVですので、必然的にMTVでかかる楽曲やMTVの発展に沿った傾向になりそうな気がします。
中立的な立場で、20世紀のポピュラー音楽の歴史を学べるカリキュラムをベースとした、WEB上のe-ラーニングやテストがあれば、職業教育の一環として役に立つかもしれませんね。
表現を巡って、例えば、ナチスの意匠を歴史的経緯を知らずに用いて国際的な批判される芸能事故は後を絶ちません。
そういう時、ピンクフロイドの『ザ・ウォール』を巡る論争や立場、見解等の歴史を知っておくことは参考になるのではないでしょうか。
ピンクフロイドの中心人物であったロジャー・ウォーターズは、一貫して歯に衣着せない発言と攻撃的な姿勢で有名で、そのエピソードの一端は、『”ロジャー・ウォーターズ”、”イスラエル”』等のワードで検索するとでてきます。
あるいは、これもたびたび批判を受ける表現に「ブラックフェイス」があります。
アメリカの公民権運動の歴史、それと密接に結びついて発展したロック(ニューロック)、ソウル、ファンク等の歴史を知っておくことは、海外で問題視される表現を避ける役に立つのではないかと思います。
結局、あいみょんの「マリーゴールド」は、ゲーム「メダロット2」のBGMのパクリなんですか?それともパクっていないんですか?
まず、ものごとを判断するためには、定義、そして基準というものが必要です。
『パクリ』の、定義、基準とはどうなっているのでしょうかと考えると・・・。
『パクリ』とは俗語(俗に言う表現)で、定義も基準もないことに気付きます。
それでは、『似ている』という言葉に置き換えてみるとどうでしょうか?
「そんなの明らかだろ」と思われる方もいらっしゃるかもしれません。
(私は、そう感じたあなたの内心に、あなた自身が持っている『イケメン基準』があるのに気付きましたよ。)
しかし、ちょっと待ってください、アジア人を見慣れていない欧米人やアフリカ人にとっては、アジア人の容姿の判断がつきにくいですし、美醜の判断基準も異なります。
この写真をごらんください。
ということで先程より盛大にお騒がせしておりますが…この度、岡崎体育さん(@okazaki_taiiku)とのコラボレーションで「鱗(うろこ)-岡崎体育 Remix-」が完成しました‼️ネ #秦基博 #岡崎体育 #まさかのリアルタイム検索1位 #兄弟ではありません pic.twitter.com/Br1Q2VO5Ik
— 秦 基博とスタッフ (@hata_official) August 4, 2017
かなりバスった写真なので、ご記憶にある方が多いと思います。
あなたは、この写真をごらんになる前までは、秦基博さん=イケメン、岡崎体育さん=准イケメン(?)等という内心の判断があって、両者は明確に区別できると思っていたはずです。
しかし、この2ショットを見てしまった後、あなたの判断基準は大きくゆらいだのではないでしょうか。
おそらく、アジア人を見慣れていない外国人にとっては、ペアルックを着た秦基博さんと岡崎体育さんを識別するのは極めて困難ではないかと思います。
『似ている』『似ていない』というのは、人や社会や取り巻く環境・状況によって、『揺らぎ』のある感覚なのです。
音楽において、『似ている』、『似ていない』を判断するのは、楽譜(音楽理論)の上での分析が必要です。
何人かの音楽理論に通じたミュージシャン(経験のある方も含め)が、解説されている動画が公開されていますので、是非、ごらんになって、判断の参考にされていただければと思います。
元ヴィジュアル系ロッカーのエンドウコウキさんによる、あいみょん「マリーゴールド」楽理分析3連発です。
マリーゴールドとメダロットBGMは似ているのかコードの理屈から検証◆ピアノ◆あいみょん◆似てる?パクリ?◆メダロット2 - YouTube
マリーゴールドとオザケンの曲は似ているのかコードから比較検証したらある曲にたどり着いた...◆ピアノ◆あいみょん◆似てる?パクリ?◆メダロット2◆小沢健二 - YouTube
メダロットなみにマリーゴールドに似てる曲があるらしいのでコードから検証してみた◆ピアノ◆あいみょん◆似てる?パクリ?◆小松未歩 - YouTube
ごらんになって、どう思われましたでしょうか?
それでは、また。
≪修正履歴≫2019.3.7 original
2019.3.12 チャック・ベリーとピンクフロイド(ロジャー・ウォーターズ)について補筆
2019.3.14 スライ&ザ・ファミリー・ストーンと小沢健二さんについて追加
2019.6.9 スライの音源リンクしました
<関連音源>
あいみょんは、「浜田省吾さんが世界で一番のアーティスト」であると同時に、「ビートルズも大事」と、子どもの時から大きな2本の柱としてビートルズを聴き込んできています。バンドアンサンブル、コーラス、アレンジ・・・、ビートルズによる音楽体験は、あいみょんのロックとしての足腰の強さの形成に役立っているのでしょう。
◆The Beatles 「Come Together」
https://www.youtube.com/watch?v=45cYwDMibGo
◆John Lennon「You Can't Catch Me」 (Remastered 2010) Chuck Berry Cover
チャック・ベリーのオリジナルはジョン・レノンの『ロックン・ロール』収録カバーよりテンポが速く印象がだいぶ違います。ジョン・レノンのカバーはテンポを落として、ビートルズの「カム・トゥゲザー」に似て聞こえるようにアレンジしています。つまり、ジョン・レノンは「カム・トゥゲザー」の作曲のプロセスを見せているのでしょう。
https://www.youtube.com/watch?v=gZ-3E5NU1MM
◆Aerosmith 「Come Together」The Beatles Cover
https://www.youtube.com/watch?v=BjoN2yXwmoc
◆Michael Jackson 「Come Together」The Beatles Cover
https://www.youtube.com/watch?v=ubR9cXWkXv8
◆Gary Clark Jr「Come Together」[From The Justice League Movie Soundtrack] The Beatles Cover
https://www.youtube.com/watch?v=r7imYeuAfkg
<参考>
J-POP(歌謡曲、シティポップ、アイドルポップス)は、アメリカのドゥービー・ブラザーズ(マイケル・マクドナルド)から影響を受けているんですか?。
<関連エントリー>
◆マイケル・ジャクソン、プリンス、ジャミロクワイ、ディアンジェロ、スガシカオさん、岡村靖幸さん、小沢健二さん、Suchmos(サチモス)等をはじめ世界中に熱烈な数多くのフォロワーを産んだファンクの巨星、スライ&ザ・ファミリー・ストーン。
小沢健二さんはアルバム『LIFE』で、スライ&ザ・ファミリー・ストーンのアルバム『LIFE』のアートワーク(ロゴデザイン)を強く引用し(ストレートにパクり?)ました。その趣旨とはあるいは、スライ&ザ・ファミリー・ストーンが音楽を通して実現しようとしたポップスとロック、ファンクあるいは異なる人種、性別、政治的主張や対立等の融和・統合という理想を、J-POPというフィールドで目指したもの?かもしれませんね。
つまり、あいみょんは小沢健二さん経由でスライ&ザ・ファミリー・ストーンの影響も受けています。
あいみょんの「愛を伝えたいだとか」のファンク歌謡、スライ歌謡のスタイルは、あいみょんが自身のルーツとして持つ小沢健二さんやK-POP由来のファンク、ダンスミュージック要素にカタチを与えたものでしょう。
よく言われる椎名林檎さんとあいみょんの類似というのは、椎名林檎さん本人はもちろんですが、長岡亮介さん、亀田誠治さん、椎名純平さんらの椎名林檎さんの周辺の手練れの音楽家達が、ジャズ、ソウル、ファンク、ブルース等に通じたプロ中のプロであり、楽曲にブラック・ミュージックの要素があるために見えます。
あいみょんの楽曲のアレンジのモチーフ(材料)がブラックミュージックでカブった時は、似てると感じられることもあるかもしれません。
・ビートルズと並ぶ現代ポピュラー音楽の基本がスライ&ザ・ファミリー・ストーン。聴いてみるとたくさんのアーティストの曲がスライをもとに作られているのがわかります。
◆Sly & The Family Stone - If You Want Me To Stay (Audio)
https://www.youtube.com/watch?v=gZFabOuF4Ps
◆Sly & The Family Stone - Family Affair (Audio)
https://www.youtube.com/watch?v=xag5RKD0VHk
あいみょんの「マリーゴールド」に関しては、小沢健二さんの「さよならなんて云えないよ」MVで小沢健二さんが花屋さんのスタッフに扮して、マリーゴールドらしき花も映っているので、ネタ元の一つはオザケン説が濃厚でしょう。
小沢健二さんの音楽(渋谷系)とは、いわば洋楽の『総合引用芸術』ですので、様々なネタ元・パクリ元・引用元研究サイトがあります。
この機会に小沢健二さんの音楽や小沢さんが引用した洋楽たちを探して聴いてみようと思う人が増えるといいですね。
◆好きなバンドや歌手がディスられた時どう対応したらよいのか・・・。エアロスミスはローリング・ストーンズのパクリと散々ディスられました。「唇の形がミック・ジャガーのパクリだ!。」
◆あいみょん、サニカ―(SUNNY CAR WASH)・・・、andymoriに影響を受けた20代前半世代のロッカー達のアメリカのCCR、ジョン・メレンキャンプらを思わせる乾いたロックンロール。
◆『あいみょんの〈生きていたんだよな〉は、すごい。女性シンガーの歌でピンと来ることは実はあまりないんだが、自分と同じDNAを感じてしまった。 俺がデビューしたくらいの時代だったら、この歌は放送禁止になるか、自主規制でリリースできなかったかもしれないな。』(シンガーソングライター 小山卓治)
◆J-POP、シティポップ、歌謡曲、ニューミュージック、アイドルポップス・・・、日本のポピュラー音楽に大きな影響を与えたドゥービー・ブラザーズについて。