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【Bubble】なぜ、ガールズバンドBAND-MAIDは海外とベテランロックファンが支持する強力なハードロックサウンドを獲得できたのか?【パーフェクトクライム】

 

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2016年7月末、さいたま新都心のライブハウス「HEAVEN'S ROCK さいたま新都心VJ-3」。

BAND-MAID『Brand New MAID』リリースツアー、主催バンドのBAND-MAID(トリ)直前に出演したのは、メタルコアのBEFORE MY LIFE FAILS。

 

BEFORE MY LIFE FAILSが演奏を開始した瞬間、どよめきとともに観客が密集していたはずのフロアの中央に半径2.5メートル位の空間が空きました。

 

円の中心で若い男性が、高速で手足を振り回しています。その動きは格闘技のようでもあり、『空間』は周囲の観客が、振り回し暴れる手足を避けて生じたのです。

 

「カンフーモッシュだ!」 

 

BEFORE MY LIFE FAILSは、2016年当時、BAND-MAIDと何度も対バンしているラウドロック系(メタルコア)のバンドです。

ハードコアシーン出身の当時のBAND-MAIDのマネージャーがブッキングをしていたのは間違いないでしょう。

 

 

1.モッシュクラウドサーフ・ダイブ等のハードコアの文化はクラシック・ロックファンにはなじみが薄い

 

当時BAND-MAIDがたびたび対バンしていたBEFORE MY LIFE FAILSの解散前最後のライブの様子が以下のMVに収められています。

時期は2016年9月で、上記のBAND-MAIDとの対バン@さいたま新都心の翌々月ですので、バンドの性質は変わっていません

 

◆BEFORE MY LIFE FAILS - "SHEEPS" Farewell Show (Official Live Video)  

https://www.youtube.com/watch?v=le5_tgtYnZ0

 

思わず、「飛んでいる」(ダイブ・サーブしている)観客の中に当時のBAND-MAIDのマネージャーの姿を探しました。

 

こう言う感じが、いわゆるラウド系(ハードコア、メロコア、ポストハードコア、スクリーモメタルコア、エモetc.)のバンドのライブの光景です。

 

視覚から得られる情報の通り、これは、日本にも昔からある、若い衆が激しく身体をぶつけ合う暴れる系・けんか系の祭りの現代版です。(世界中に暴れる系の祭りはあります。)

 

2.モッシュ、サーフ・ダイブは暴れる系の祭り文化

 

文化人類学や宗教社会学等のアプロ―チからモッシュモッシュ、サーフ・ダイブ等のハードコア系のカルチャーを分析すれば、怪我人が出るような激しい祭りの一種として分類するでしょう。

 

岸和田のだんじり祭りであるとか、灘のけんか祭りであるとか、野沢温泉道祖神祭りであるとか・・・・日本各地に数百年の伝統を持つ奇祭、激しい祭り。

 

ロックバンド=神輿、観客=男衆、若い衆。

 

クラウドサーフィンは、観客一人ひとりが神輿になれるわけですから、スリルありますが、一度やるとハイになってやらずにはいられない魅力がありそうです。

 

次の、三重県尾鷲に古くから伝わる(数百年伝わるとされる)「ヤーヤ祭り」の報道をご覧ください。

 

◆男衆激突「チョウサじゃ!!」、三重県尾鷲市の奇祭「ヤーヤ祭り」

※「練り」と呼ぶ、白装束の若い衆数百人による激しいモッシュが最大の見せ場の三重県「ヤーヤ祭り」。和太鼓によるドラミングもあります。

https://www.youtube.com/watch?v=Oq6T_Fz5Zgk

 

YouTubeを自動再生にすると、「ヤーヤ祭り」の動画が次々と再生されます。「ヤーヤ祭り」の「練り」(モッシュ)と、BEFORE MY LIFE FAILS の「SHEEPS」ライブの音声を一緒に再生しても全く違和感がありません。ノリ、ビートがシンクロするのです。 

 

笑顔で激しく身体をぶつけ合う若い衆のノリ、ビートは、三重県の奇祭「ヤーヤ祭り」と「BEFORE MY LIFE FAILS 」(ラウドロックメタルコア)で全く同じです。これが日本の農耕民族固有のノリなのかどうかはわかりません。

 

3.BAND-MAIDは「次のステージ」に上がるために、モッシュ、サーフ・ダイブを封印した

 

モッシュクラウドサーフ・ダイブ・・・etc.は、シニア層の音楽ファンには不評です。

まぁ、それはそうでしょう。クラシック、ジャズ、クラシック・ロック(ハードロックやプログレシッブ・ロック)等はコンサートホールで着席して『鑑賞』する音楽です。

若い衆の『暴れ祭り』=ラウドロックのライブで暴れるのとは目的が違います。

 

1969年のウッドストックにも出演した往年の名ギタリスト、魚住有希さんも大好きなジョニー・ウィンター師匠は、晩年の日本公演は、着座姿勢でした。

時々、立ってギターを演奏すると観客から歓声が沸き起こったそうです。

基本、クラシック・ロックは演者も観客も座ったままでOKなのです。

 

上の三重県尾鷲市の奇祭「ヤーヤ祭り」を見ると、若い衆が「練り」を行うエリアは観客エリアと仕切りで区切られ、ラウド系ライブの『モッシュピット』化しています。

 

女性や子供(そしてシニア層も)は、「練り」の威力が及ばない、安全に区切られたスペースから、若い衆の益荒男ぶりを観戦しています。

 

本稿は、『日本民族の伝統的祝祭と現代ラウドロック文化人類学、宗教社会学的考察』でなくて、『BAND-MAIDはなぜ強力なハードロックサウンドを獲得できたのか?』という題ですので、奇祭で競う男衆の益荒男ぶりについてはこのくらいで。

 

ある時期(2018年半ば頃?)から、BAND-MAIDは、モッシュ、サーフ・ダイブ等のハードコア系のカルチャーを封印するようになっていきます。

あるいは、2016年の頃のような、ハードコア系のカルチャーが混じった路線のまま、”ラウド系のガールズバンド”として進む選択肢もあったかもしれません。

 

観客の主流であったシニア層男性のクラシック・ロックファンを保持しつつ、TVタイアップの露出等により新たに10代、20代の女性ファンを増やし、商業的により上のステージを目指すための総合的な判断を下したのでしょうか。

 

4.BAND-MAIDはなぜ強力なハードロックサウンドを獲得できたのか?

 

BAND-MAIDは、デビュー時はアイドル性のあるパワーポップバンドでした。

 

初期は、対バン相手は、どちらかというとアイドルだったりポップ系のロックバンド、ガールズバンド、女性ボーカルのバンド等が多かったようです。

 

ところが、ある時期から、『電気の鳴り物・太鼓にのって、奇声を上げ、飛び降り、身体をぶつけあい、益荒男ぶりを競う勇壮な男衆の祝祭』も発生するような空間(=ラウド系のシーン)に飛び込んで、そこでサバイバルしていった。

 

時期としては、活動中期(インディーズ末期からメジャーデビュ1年目にかけて)の頃です。

 

パワーポップバンドの音楽性でスタートし、ポップ系のガールズバンドシーンで活動してきたBAND-MAIDにとって、ライブハウスで活動するラウド系ロックバンドとその観客(若い衆)は、当初は全くの異文化、アウェイであったはずです。

 

しかし、音楽的・芸能的出自がなんであれ(最近はBAND-MAID=ジャズ説が強くなっています)、ロックバンドとしてサバイバルするために、暴れるバンドとそれを見に来ている(暴れに来ている)若い衆の観客に対しても爪痕を残さなくてはなりません。

 

勢い、音も大きく、ビートも激しく、煽りも腹をくくった真剣勝負にならざるをえません。

 

いわば、ライブハウスで、やかましい系のバンドや暴れる系のバンドとその観客達との異業種格闘技戦を重ねて、サバイバルしてきたのです。

  

BAND-MAIDが海外、国内問わず、シニア層のベテランロックファンから20代のラウドロックファン、10代の邦ロックファンの男女にまで届く音楽性、そしてバンドとしての地力を身に着けた理由の一つは、ここにあるのではないでしょうか。

 

 <関連動画>

 

BAND-MAID 「Bubble」 

https://www.youtube.com/watch?v=T_PWQtc7zVw

マイルス・デイヴィス「Burn」(Gt.カルロス・サンタナ、ロベン・フォード)
BAND-MAIDの本来の性質は、どうもこっち側(ジャズ、フュージョン、ファンク、ブラックミュージック)のように聴こえます。ラウドなロックバンドと対バンを繰り返してハード/ラウドに進化したのでしょうか?

https://www.youtube.com/watch?v=h4X3rAg6lhY

◆PANIC in the BOX「さよならGood-bye」

2016年のBAND-MAIDとの対バンツアーの様子がロードムービー的に挿入されているライブMV。ブッキングを担当したであろう当時のBAND-MAIDのマネージャーも写ってます。

https://www.youtube.com/watch?v=hxfZ79efy0M

 

 

 <参考エントリー>

popmusic.hatenablog.com

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