【レビュー】FEVER「Start Again」
2018年12月16日(日)タイの新アイドルグループ、FEVERが初のMV「Start Again」を公開しました。
楽曲を通してメンバーのファルセット(裏声)コーラスで歌われる中、エンディングに2回、合わせてもほんの数秒ですが、歌唱が得意であろうメンバー(歌メン)による芯の通った声(裏声でない声)によるフェイクが入ります。
フェイクとは、メロディーの音階を変化させ(アレンジ)させ、即興(アドリブ)のように聞こえる歌い方です。歌唱メンバーがその都度変わるような大人数グループだと、事前録音音声と(リップシンク・口パクによる)パフォーマンスがフィットしなくてサマにならないので入れることは少ないはずです。
シンセポップに乗ったファルセットコーラスという楽曲全体の構成に対して、このわずか数秒のフェイクが、ずいぶんと楽曲にソウルフルな印象を加えることに成功してる感があります。
イギリスのシンセポップバンド・ユニットが音楽的ルーツの一つであるソウル、リズム&ブルースを取り入れた時のようなテイストですね。イギリスのシンセポップ×ソウル、リズム&ブルースのユニットとしては、ユーリズミックス(ボーカルはアニー・レノックス)が有名です。
【背景】シンセポップとは
FEVER「Start Again」MV公開翌朝12月17日(月)の400強のコメントのうち、英語(アルファベット)のコメントで目についた単語は、『Synth Pop』(シンセポップ)2件『Keyakizaka』(欅坂46のことでしょう)3件。
翌日以降のトレンドは、『TELEx TELEXs』(タイのエレクトロポップ、シンセポップバンド)が新たに増え、『Keyakizaka』(欅坂46)関連のコメントはどんどん増えていったという感じです。
英語(アルファベット)コメントからは、FEVER「Start Again」は、『1980年前後のシンセポップ風の音楽に乗った日本の欅坂46に影響を受けた装い、演出、アティチュードの女性アイドルグループ』と解釈されていそうです。
シンセポップ(SynthPop)とは、1970年代末から1980年前後にかけてイギリスのロックミュージシャンが全米ヒットチャートを席巻した『第二次ブリティッシュ・インヴェイジョン』の中心的な音楽の一つです。
代表的なミュージシャンは、ソフト・セル、ウルトラヴォックス、ジョン・フォックス、ヴィサージ、ヒューマン・リーグ、チューブウェイ・アーミー、ゲイリー・ニューマン、デペッシュ・モード等があげられます。
2019年4月に19年ぶりに来日するエレクトロポップ、ハウス等の踊れる系音楽の重鎮、ペット・ショップ・ボーイズのスタートもシンセポップデュオとしてでした。
日本のYMO(イエロー・マジック・オーケストラ)も影響を受けたかあるいは意識したであろうO.M.D.(オーケストラル・マヌーヴァーズ・イン・ザ・ダーク)もここに入るはずです。私は、O.M.D.はインダストリーかと思っていたのですが、そうではなくシンセポップのようですね。
イギリスのシンセポップ(SynthPop)は、アメリカのポピュラー音楽、例えばプリンス一派のミネアポリスファンク等のサウンドにも大きな影響を与えました。
アメリカのホーンセクション含め8人から10人以上の大編成の黒人ファンクバンドが、シンセサイザーやシーケンサーによるサウンドがベースの4、5人のユニットにリストラクチャリングしてしまうような影響すらありました。
弦楽器をフューチャーしたプログレッシブロックバンド、エレクトリック・ライト・オーケストラ(ELO)が、実質ジェフ・リン一人のユニットになったのもこの流れです。
◇FEVER
photoリンク先:http://music.trueid.net/detail/P3E8kWvMBgzK
◇FEVER 「Start Again」Official MV
◇シスター・スレッジ「オール・アメリカン・ガールズ」
リードボーカルのキャシー・スレッジが、3:06からガンガン入れている唱法がフェイクです。ソウル系の女性歌手の多くはアレサ・フランクリンから影響を受けています。