数年前、インディーズで活動していたロックバンドのメンバー(男性)から、「俺たちの演ってる音楽はAKB48に負けてるんですかねぇ?」という発言というかボヤキを聞かされたことがあります。
比較とは『基準』を何に、どこに置くかによりますので、回答はしませんでしたが、時々、ロックやメタルのミュージシャンやリスナーの方で、『アイドル』に複雑な感情や距離感を持たれている方いらっしゃいますよね。
ものごとを語るとき、『定義』の認識がお互いに共通していないと話が通じません。「俺たち(のバンド)が勝ってる or 負けてる or 引き分けてる」(つまり勝負している?)『アイドル』とはそもそも一体何なのでしょうか?。
- 1.狭義のアイドルとは、『握手券収益特化型組織』!
- 2.広義のアイドル~プレスリー、ビートルズ、レッド・ツェッペリンはアイドルだった!?
- 3.ローリング・ストーンズは『作られたアイドルグループ』だった!?
- 4.絶対倶楽部 ZETTAI CLUB
1.狭義のアイドルとは、『握手券収益特化型組織』!
ロック、メタルのバンドやファンが意識する『アイドル』とは何でしょうか?
おそらく、昭和のアイドル御三家(橋幸夫さん、舟木一夫さん、西郷輝彦さん)のことではないでしょう。子役時代の美空ひばりさんのことでもたぶんなさそう。
つい先ごろ35年ぶりの新曲を収録したアルバム『マイ・アイドロジー』をリリースした昭和を代表する女性アイドル、桜田淳子さんの名前を出しても、「ちょっと違う」と思われるかもしれません。
ずばり、ロックやメタルの人が複雑で微妙な距離感を感ずる『アイドル』とは、『握手券・選挙投票権(=CD)による収益モデルに組織的に特化した女性アイドル集団』のことなのではないかと思います。
この【握手券収益特化型組織】を『狭義のアイドル』とします。こう定義すると、アイドルとは、何か『音楽文化を滅ぼそうとする悪の秘密結社』みたいですね。
そうすると、正しい音楽を守り広める使命に基づき活動する正義の味方=ロックバンドは、アイドルに対し正義の闘いを挑まなくてはいけなくなってしまいます。
しかし、平成仮面ライダーは、もはや『正義の味方』対『悪の秘密結社』という単純な二項対立構造ではなかったりするのです。
2.広義のアイドル~プレスリー、ビートルズ、レッド・ツェッペリンはアイドルだった!?
以下は、『広義のアイドル』についてです。
広義のアイドルの定義は、『幼児・子供から同年代の同性、異性が強い憧れを抱く10代~20代の芸能人』です。
歴史上、重要なロック歌手、ロックバンドの最盛期って、ほとんどアイドルなんです。エルヴィス・プレスリー、ビートルズ、レッド・ツェッペリン・・・。
「クレオパトラの鼻があともう少し低かったら歴史は・・・」とはよく聞く表現ですが、エルヴィス・プレスリーがもしブサ面(この表現は非常に嫌いなのですが)でカッコ悪かったら、ジョン・レノンもロバート・プラントもロックをやっていなかったかもしれません。
影響を与える以前にスターとして世に出ることができなかったでしょう。
1980年代の主要なハードロック・ヘヴィメタル(HR/HM)のバンド、イギリスのデフ・レパードやアメリカのモトリー・クルー等は、キッズからハイスクールにかけて、同性であるレッド・ツェッペリンのアニキ達のあまりのカッコよさに痺れてしまって、道を誤ってそのままロックンローラーになった連中なんですよね。
実は、ロックバンドって、キッズからティーンの異性はもちろん、同性が感じる視覚的なカッコよさが絶対的に重視される職業なんです。
(例外はおそらくプログレシッブ・ロック位でしょう。)
3.ローリング・ストーンズは『作られたアイドルグループ』だった!?
2018年の現在は、70歳代の高齢のロックバンドなので想像しにくいと思いますが、1960年代のローリング・ストーンズは、アメリカはじめ世界中でティーンの女性達からアイドル的人気を誇っていました。
これには重要な裏話があります。
バンドのマネージャーは、ローリング・ストーンズのプロデビューにあたって、創業メンバーのスチュ(Stu)ことイアン・スチュワートを、『ブサ面だから』という理由で解雇し、バンドのルックスをより『10代の女性に受けるように』整えました。
つまり、ローリング・ストーンズは、マネージメントにより作られた(整えられた)『アイドルロックバンド』という側面があるのです。
このことに対して言いたいことはありますが、どうもこうもない、芸能界とはそういうところであり、ロックバンドとはそういうものなのです。
4.絶対倶楽部 ZETTAI CLUB
ガールスエモーションラウド『GEL』(ゲル)の2ndシングル「Quiet Starry Night / LIFE OR DEATH CRISIS」のレコ発ライブで、女性5人組のヘヴィメタルバンド、絶対倶楽部 ZETTAI CLUB(略称:ゼックラ)のライブを観戦しました。
(出典 : 絶対倶楽部WEBSITE https://www.zettai-club.com/ )
このバンドは知っている!
”川越の残虐王”ことデスラッシュメタルバンド兀突骨のボーカル/ベースの高畑さんが、絶対倶楽部のメンバーが脱退した時に、Twitterで呟いていたのを覚えています。
兀突骨は、高畑さん以外のメンバー全員が入れ替わってもバンドを存続させたキャリアがあります。絶対倶楽部がメンバーチェンジの危機を乗り越え、バンドを存続させていくよう、先輩としてエールを送られていた気がします。
ライブ観戦の勢いで、メンバーがパーソナリティを務めるラジオ番組「ゼックラジオ」を拝聴。
絶対倶楽部 ZETTAI CLUBは、メンバーを「幹部」、ファンを「部員」、ライブを「倶楽部活動」と呼んでいます。
幹部(メンバー)構成は(敬称略)、部長・
フロントマン(ボーカリスト)の天鶴部長の強気のキャラクターとMCは入念に作り込み鍛錬された芸風です。
ラジオ中の発言で分かったことは、絶対倶楽部(ゼックラ)の天鶴部長は、(狭義の)『アイドル』(≒悪の秘密結社)に対して全面肯定という姿勢です。
ロック畑、メタル畑で、アイドルをポジティブに全面肯定する方はなかなか珍しい気もして、潔さを感じました。
絶対倶楽部(ゼックラ)の強気の天鶴部長、ルックス面では、1970年代~80年頃のクラウス・マイネ(スコーピオンズ)やロブ・ハルフォード(ジューダス・プリースト)のかぶり物姿と2016年の欅坂46のかぶり物姿をミックスしたようなミリタリー風制帽がトレードマーク。
しかも帽子には左右にバイソンのような角が2本生えてます!。
鮮やかな金髪と派手めのメイク。コスチュームは、ヘヴィメタル風のレザーをモチーフにしています。ハッキリ言って、昼間のオフィスや学校や地域生活では、ちょっどインパクト強すぎるコスプレでしょう。
アーティスト写真で、ドラマーの桐子さんは、この系統のバンドに高い頻度で存在されるゴスロリ風衣装+ツインテールのヘアスタイルの扮装をされています。
これらは全て、バンドのインパクトのある外見で惹きつけ、関心を持ってもらうことが(演奏の実力でアピールする自信があっても)スタートだという、エンターティナー、ショービジネスの現実的な認識がベースにあるということなのでしょう。
天鶴部長は、デスボイス・グロウルとクリーンボイスを一人で使い分けるボーカルスタイル。
音楽的には、たぶん、1980年代、1990年代のパワーメタル、メロスピ、メロデス、デスメタル、デスコア、V系(ヴィジュアル系)等がルーツのように思います。
楽曲によっては、往年のJ-POPのJITTERIN'JINN(ジッタリン・ジン)やWhiteberry(ホワイトベリー)をメタル/ラウドロック化したような親しみやすさも感じます。
個人的には、やや守備範囲を超えてる系の音楽という気もしましたが、部長を筆頭に幹部の押しの強いキャラクターと芸風はユニークで、心意気やよしと感じるところあるバンドです!。
◇絶対倶楽部 ZETTAI CLUB -【突進】
◇Ben Waters - Boogie 4 Stu Teaser
一番有名なスチュ(イアン・スチュワート)のピアノは、Led Zeppelinの"Rock And Roll”。『モテたいためのロックンローラー♪♪』山口百恵さん、中森明菜さんから2018年の BAND-MAIDにいたるまでの、ジス・イズ・ザ・ルーツ・オブ・歌謡ロック!!。(https://www.youtube.com/watch?v=qyivczZI5pw)
レッド・ツェッペリンには「ブギ―・ウィズ・スチュ」(スチュと一緒にロックしたぜ!)という曲もあります。
◇Queen & Robert Plant - ”Crazy Little Thing Called Love”
エルヴイス・プレスリーの真似(コピー)をしたらロバート・プラントが一番上手いかも!
絶対倶楽部の『ハラキリ』の最後の転調するパートがお見事!素晴らしい!小室哲哉がプロデュースしてるのか!?と思う程にナイス転調です。兀突骨にも同名曲がありますが、それは仲代達矢先生の映画『切腹』からインスパイアされて書いた曲でございます。 pic.twitter.com/TZHQhUm9sr
— 高畑治央/兀突骨(GTK) (@GotsuHaru) February 7, 2018