【渾身の一撃】岡崎体育「式」は認知症の哀しみと永遠の別れを正面から表現する意欲曲(2ndアルバム『XXL』)!!【目標必達】

 

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岡崎体育さんの2ndアルバム『XXL』からは、ダブルリード曲「感情のピクセル」と「Natural Lips」のMVが先行して発表され、計算しつくされた仕掛けにより、ねらいどおり話題を呼んでいます。

 

次いで2ndアルバム『XXL』のラスト11曲目、「式」のMVが発表されました。大変な意欲作のバラードです。

6月14日のリリース日に、タワーレコード渋谷店で行われた岡崎体育さんのサイン入りチェキ会(握手もしてくれたそう)は大盛況だったようです。私は、当日、恵比寿LIQUIDROOMでのBAND-MAIDのお給仕にご帰宅していましたので(凄いバンドになってきました)、東京で岡崎体育さんご本人にお目にかかる機会は逃しましたが、CD店で『XXL』を無事購入。ブックレットの歌詞カードを見ながら、「式」について書こうと思います。

 

最初にお断りしておかなくてはならないのは、楽曲とは、アーティストがリリースした途端からアーティストの手を離れ、聴き手のそれぞれの経験や認知の型を通して解釈されていくものだということです。

「式」の歌詞を読み、曲中のキーワードから、「式」は認知症の当事者の感情や症状を描写していると感じる人が、おそらく何割かいるのではないかと感じ、このエントリを書きました。もちろん、別な解釈をされる方もいると思います。どのような解釈が正しいということではなく、作品とは、リリースされた瞬間から、聴き手それぞれの解釈、受け止め方をされていくという考え方をもとに、私の感想を書かせていただきます。 

 

岡崎体育さんの「式」は、愛する人との生活の積み重ね(人生の四季)、朝から夜(誕生から死の訪れ)、永遠の別れ(死期)を、認知症の症状と当事者の感情を描写しながら歌う作品です。

 

 「式」の歌詞中では、時間経過として、朝(鈍色の朝)、夕(柿色の夕)、夜(雪色の夜)と、一日の流れが描かれます。それは、同時に、春夏秋冬の四季でもあり、厳しい冬は死期を暗示しているようです。

”鈍色(にびいろ)”とは、平安時代に”喪に服す”時の色です。鈍色(にびいろ)というキーワードが、”式”とは、死期が近いこと、そしてお葬式(しめやかなお通夜から告別式)を連想させます。お別れの式における主人公の意識を連想させるのです。

”保育園で~(中略)~帰ってくるように”という描写からは、東北地方で高齢者を指し、認知症のお年寄りを示すこともある「二度童(にどわらし)」という言葉を連想します。

”絵具を脳みそに塗っていく”、”鉄棒の香り”という表現は、アルツハイマー認知症かあるいは脳血管型認知症の当事者の感覚描写に思えます。 

名前が思い出せなく、ご飯を口からこぼし、テーブルを汚すという描写、”年老う”という表現。そして、”先に呆けてしまえば”という決定的なキーワード、キーセンテンスが歌われていきます。 

”言葉に血の通った話がしたい”というのは、認知症の当事者の想い、そして認知症の方と接する人にとって、最も重要な姿勢です。

  

サブ・カルチャー、ポップ・カルチャーの分野では、小説、映画、演劇等では、認知症を真正面から取り上げた作品は多数あります。 

映画の分野では、直近2年間だけをとっても、認知症の当事者を主人公としたフィクション、ノンフィクション(ドキュメンタリー)映画は軽く2桁を越しています。 

ところが、ポップ・カルチャーの中でも、ポピュラー・ミュージック、ロックで、認知症をテーマにした楽曲は、少ない。探せばあるかもしれませんが、すぐには思いつかないというレベルです。 

映画ではポピュラーなのに、ポピュラー・ミュージック、ロックでは取り上げられることの希少なテーマ。 

 

当たりまえですが、人は誰でも年をとります。ハードコア・パンクのミュージシャンも、ヘヴィメタルのミュージシャンも、高齢まで生きれば、認知症になる可能性は高いのです。

若い頃は、ジム・モリソン(ドアーズ)やカート・コバーンニルヴァーナ)、江戸アケミさん(JAGATARA)のように、太く華やかに散るのがロックの正しい生き方と思っていた。気付いたら80歳を過ぎ、洟を垂らして、ご飯を口からこぼしてテイブルを汚し、迷惑をかけて生きながらえているということはあるかもしれません。

それでも、できれば幸せでありたい。迷惑をかけても、できれば、皆に感謝して、人生をしめくくりたい。

 

30年後、40年後、岡崎体育さんが現役で歌手を続けていたら、真っ白な髪になって「式」を歌っているかもしれません。

 

「なんだ、今度の曲はネタ曲じゃないのかよ!」と肩透かしをくらって嘆く、14歳中学生男子は、30年後、40年後になって、親を看取った時に、岡崎体育さんの「式」の歌詞の意味を初めて身に染みて理解することになるのかもしれません。

 

高齢化と認知症の哀しさと永遠の別れを、真正面から表現する岡崎体育さんの「式」(2ndアルバム『XXL』ラスト曲)、ロックの表現領域を拡げようとする意欲作です。  

 

岡崎体育 「式」Music Video  

https://www.youtube.com/watch?v=EGjT1XqMQn4