ロック・ドラマーのタイム感 ~ BAND-MAIDの 廣瀬茜さんとボン・ジョヴィのティコ・トーレス

 

2017年1月9日に赤坂BLITZで開催されたBAND-MAIDの(当時の)キャリア最大規模の単独お給仕(正式名称は、「1st Full Album『Just Bring It』Pre-Release One-man 〜新年 初お給仕はじめます〜」)から、数曲が新曲の初回生産限定盤の特典映像(DVD)として発売されます。

 

新曲のタイトルは、「Daydreaming / Choose me」(2017年7月19日発売)。特典映像(DVD)に収録される曲目は、「REAL EXISTENCE」「Before Yesterday」「Take me higher!!」「the non-fiction days」「Don't you tell ME」「alone」「YOLO」の7曲。

 

BAND-MAIDは、ライブパフォーマンスに定評があり、活動の初期(2014年頃)から、「Knockin' on your heart」「Thrill」等の曲のライブ映像を公開してきましたが、特典映像のような形でも、市販はされていません。また、それらは時間を経て、非公開になっています。

 

ライブ映像が、初回生産限定盤の特典映像の形でリリースされるのは初めてのはずです。 

 

以下は、実際の“赤坂BLITZ”のライブを観戦した印象です。

  

バンドのコンディションはベスト。全員のパフォーマンスが最高で、バンドとして(その時点では)過去最高の素晴らしさでした。

 

1月9日の赤坂BLITZの前のワンマンお給仕は、『Brand New MAID』リリース・ツアー・ファイナル(2016年10月1日、TSUTAYA O-WEST)がソールドアウトしたため、ワールドツアー中の一時帰国日程に、急遽追加された下北沢GARDEN(2016年10月23日)です。

 

BAND-MAIDは、この時、メキシコ(10/9)、ロンドン(10/12)、ケルン(10/13)、ハンブルク(10/15)、パリ(10/16)、ワルシャワ(10/19)、<“下北沢(10/23)”>、ルッカ(10/30)、バルセロナ(11/1)、香港(11/5)というワールドツアーの真っ最中(カッコ内は2016年の年月)です。移動距離を想像しただけでも、とてつもないハードなスケジュールに見えます。

 

ゆえに、下北沢GARDENは、気合がバンドのコンディションを上回っていた感と、いずれも初となる海外6ヵ国でのお給仕に成功したバンドの高揚感を感じさせるものでした。BAND-MAIDがブレイクするプロセスとして、このハードスケジュールを乗り切って成功した経験は大きな強みになったはずです。

 

赤坂BLITZで、特に強い印象を受けたのは、廣瀬茜さんのドラム。もちろん、メンバー全員のパフォーマンスが最高だったのですけど、自分の印象として。

 

ステージ上のさらに1メートル位高い位置で、ドラムセットがセッティングされていて、迫力あるドラミングが、視覚と音声の双方で脳に入ってくる点がツボでした。 

 

ドラマーのタイム感というのは、人の心臓の鼓動(脈拍)がそれぞれ違うように、その人それぞれに固有のもののはずです。

 

BAND-MAIDのドラマーの廣瀬茜さんのドラミングには、一聴してわかる固有のタイム感があり、それが、BAND-MAIDの独特のグルーブ感の大きな基となっています。そして、グルーブ感ある演奏が、BAND-MAIDのバンドとしての大きな魅力です。

 

廣瀬茜さんのドラミングには、メタルやエモのスタイルで演奏しても、“ロック”としかいいようがない音楽になる独特のタイム感があります。ちょっと、他のドラマーには見当たりません。 

 

アメリカのサザン・ロックという分野は、伝統的にバンドにドラマーが2人います(ツインドラム)。2人のドラマーが同じリズムをたたくと、プロでも必ず(計測できないレベルであっても)、“ズレ”が生じ、それがグルーブを生むとされています。

 

結構前ですが、打楽器のワークショップを経験したことがあります。初対面の数十人で、ボンゴやらジャンベやらマラカスやらカスタネットやら、さまざまな打楽器をてんでバラバラにたたき出すものです。そうすると、数分から10分ぐらいすると、不思議とグループ全体の出す音、リズムがシンクロ(共鳴)してきてきます。初対面のメンバーなのにグルーブが生じてきます。そして、プリミティブな高揚感が生じてきます。

 

演芸の世界でいうと、タモリさんのアフリカ民族音楽「ソバヤ」というパフォーマンスのグルーブのような感じです。(ちなみに2017年に人気が開花したSSWの岡崎体育さんは、音楽的にはタモリさんの系譜だと解釈しています。)

 

サザンロックに多い、ツインドラムによるグルーブ感というのも、打楽器ワークショップの高揚感効果みたいなものと同質のものかもしれません。

 

コンゴのエレクトリック親指ピアノ・原始テクノの “Konono Nº1”には脳天から痺れましたし、映画「ベンダ・ビリリ」(コンゴのバンド、スタッフ・ベンダ・ビリリ主演のドキュメンタリー映画)には感動しました。ポリリズム系やアフロ・ファンク音楽の破壊力・影響力は強力です。

 

もしかして、廣瀬茜さんのドラムは、「1人ツインドラム」効果を出しているのでしょうか?

 

ドラマーのタイム感というのは、練習によって向上させる技術と、その人が天性で持つ変えることができないリズム感をどうミックスして、活かしていくかというものだと思います。

 

なので、なかなか、比較というのができにくいものと思います。

 

廣瀬茜さんが大きな影響を受けたロック・ドラマー、マキシマム ザ ホルモンのナヲさんやディープ・パープルのイアン・ペイスといったドラマーを改めて聴いてみました。(廣瀬茜さんは、2014年、2016年とディープ・パープルの日本公演に行かれています。)

 

タイム感という点に注目すると、似ている、共通しているという感じはあまり受けませんでした。

 

タイム感のユニークなドラマーという点で、思いついたのは、ボン・ジョヴィのドラマー、ティコ・トーレス

 

ティコ・トーレスのタイム感、グルーブは結構、独特に感じます。どんなスタイルの曲をたたいても、アメリカンなテイストの強いボン・ジョヴィ節としかいいようのない音楽になります。

 

全曲、他のドラマーが叩いているジョン・ボン・ジョヴィのソロアルバムも聴いたことがありますが、ボン・ジョヴィとは明らかに違うサウンド、グルーブでした。つまり、ボン・ジョヴィのバンドサウンドのキモは、ティコ・トレースによるドラミングのタイム感、それが生み出すグルーブなのです。ソロアルバムでは、ティコ・トレースが叩くとボン・ジョヴィになってしまうので、あえて他のドラマーを起用したのではないかと想像しています。

 

そんなわけで、BAND-MAIDのドラマーの廣瀬茜さんには、是非、また、最近ずうっと封印されているカホンとスプラッシュシンバルとウィンドチャイムのセットでのパーカッション演奏も披露して欲しいものです。アンプラグド(アコースティック・セッション)やレコーディングで。

 

ラテンやアフロ・ロック、あるいはAORになってしまうかもしれませんが、コンガ、ボンゴ、ジャンベも絶対カッコいいと思います。

 

「愛と情熱のマタドール」は、ラテン曲ですしね。