はじめてラジオ(FM NACK5)で、スガシカオさんの曲を聴いた時、「日本のボズ・スキャッグスだ!」と強く連想しました。
月日は流れ、ラジオ(今度は、InterFM)で、Suchmos(サチモス)をはじめて聴いた時、「超久しぶりに、ボズ・スキャッグス来た!」と感じました。
ボズ・スキャッグス、スガシカオさん、Suchmos(サチモス)、楽曲や歌声が似ているのではないのです。楽曲を制作するにあたっての、方法論に共通したポイントがあるのです。
それは、黒人音楽・ファンクの重く粘るリズム、グルーブを楽曲の基礎構造に据え、誰でも親しめるポップスを楽曲の上部構造に持ってくるという楽曲制作の構造が共通していることです。
ボズ・スキャッグスといえば、バックは、スティーブ・ルカサー、ジェフ・ポーカロ、デヴィッド・ハンゲイト等のTOTOのメンバーという印象が強いものです。実は、代表曲「ハードタイムズ」、「JOJO」等で聞かれるギターのバッキング(カッティングと呼ばれるテクニック)は、レイ・パーカーJr.が弾いています。
ボズ・スキャッグスのAORサウンドは、ステレオ録音の左右で、レイ・パーカーJr.とスティーブ・ルカサー、あるいはジェイ・グレイドンがギターで呼応するという豪華な演奏なのです。ボズ・スキャッグスの楽曲に”ファンク”の要素を感じさせる要素として、レイ・パーカーJr.のギターの占める割合は大きいのです。
レイ・パーカーJr.は、「ウーマン・ニーズ・ラブ」等のヒット(レイ・パーカーJr.&ザ・レイディオ名義)で知られる1980年代のブラック・コンテポラリーを代表する歌手であり、その前はレイディオ(後にレイ・パーカーJr.&ザ・レイディオ)で、ディスコ、ファンクヒットを飛ばしていました。さらにその前、1970年代半ばは、スティーヴィー・ワンダーに見初められるほどの腕っこきのセッション・ギタリストで、多くの一流歌手のバックで弾いていました。
レイ・パーカーJr.は1970年代から1980年代初頭にかけて、順調すぎるほどのキャリアを積んできたのです。レイ・パーカーJr.は、”例の曲”の大ヒットと、”例の曲”にまつわるトラブルがなければ、今(2017年)でも、アメリカの音楽業界で大物歌手のポジションでいたはずだと思っています。”例の曲”騒動後、レイ・パーカーJr.は自身のヒットから見放されてしまったのです。
岡崎体育「Natural Lips」
岡崎体育さんのセカンドアルバム『XXL』からは、既に「感情のピクセル」が先行MV公開され大きな話題を呼んでいます。うんぱっぱーのぶんぶん。おなかぽんぽんぽんのやっほー!。
そして、『XXL』からの第二弾、ダブルリード曲として、「Natural Lips」のMVが発表されました。
初聴では、楽曲制作のコンセプトとしては、桑田佳祐・サザンオールスターズ、あるいはトニー谷、タモリ(四カ国語麻雀)、ルー大柴らに連なる日本演芸の伝統芸のように感じました。
桑田佳祐さんの未発表曲をカバーしたと言われたら信じてしまいそうな楽曲です。
この曲のファンクらしさ。
マーク・ロンソンが「アップタウン・ファンク(UpTown Funk!)」(フィーチュアリング・ブルーノ・マーズ)で、大々的にリバイバルさせた、80年代ファンク、ミネアポリスファンク(プリンスファミリー)を連想させるギターのカッティング。
キレ、ネバリ、タメとも充分なギター。
このカッティングを弾いているの誰やろ?
と思っていたら、岡崎体育さんご自身が、レイ・パーカーJr.にギター演奏を依頼したことをツイートされていました。
「本家本元かい!」
それは本物っぽく聴こえますわ。本物ですから。
ジャミロクワイのジェイ・ケイも、マーク・ロンソンも、Suchmos(サチモス)も、Nulbarich(ナルバリッチ)も、アマチュア時代、熱心に勉強したはずなんですよ。レイディオ、そしてレイ・パーカーJrがバックでギターを弾いている1970年代の大物歌手・グループ達のレコードを。
岡崎体育さんが、「Natural Lips」のMVで演じている女装コスプレは、悪夢としかいいようがありません。しかし、音楽を聴く上で、向き合うべきは音源であり、視覚情報にあまり惑わされないようにしないとなりません。
現在(2017年)、世界的に、1970年代、1980年代のファンクをベースにした音楽が再び流行ってきています。このトレンドを視野に、怪しいMVで、一見すると偽物(フェイク)っぽく見せかけて、本物中の本物を持ってくるところが、岡崎体育さんの戦略かもしれません。
もちろん、メジャー契約を活かして、レーベル(Sony Music)つながりで、レイ・パーカーJr.の起用が実現したのだと想像します。予算の一点集中投下で一点突破、ブレイクなるでしょうか?
今のところ、岡崎体育さんの「Natural Lips」、日本国内でしか注目されていないようですが、海外のDJが気付いてかけてくれると面白いことになりそうです。
「Natural Lips」は予算少なくて僕が自分で監督したよ!映像合成して女装しただけのクソ低予算MVになったよ!
— 岡崎体育 (@okazaki_taiiku) 2017年5月26日
ちなみにギターはあのレイパーカーJr.が弾いてくれています!すごすぎ!ギター界のレジェンドにオファーした結果、MVの予算にしわ寄せ来てる!すごすぎ! pic.twitter.com/vsRHQdMZlG
岡崎体育 「Natural Lips」Music Video
https://www.youtube.com/watch?v=Qs9C5sVJuVs
レイ・パーカーJr.&ザ・レイディオ「ウーマン・ニーズ・ラブ」
https://www.youtube.com/watch?v=QvBmtqyaijI
ボズ・スキャッグス「JOJO」
白いスーツ姿のルー大柴さんのような外国人男性がボス・スキャッグス。アメリカ人なのでもちろん歌詞は英語。
https://www.youtube.com/watch?v=xi-GDD8yFyo