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「ポップコーンをほおばって」~「港からやってきた女」

 

2016年11月12日(土)付朝日新聞別刷「be Saturday」-もういちど流行歌 HERO- より。

ヒット当時(1979年)も現在も、ファンからの「HERO」の急な大ヒットに対しての複雑な心境が聞かれるとのこと。

 

-----(以下引用)-----

「もっと名曲がある」

「一般受けする感じになった」

「『裏切りの街角』が好きでした。『地下室のメロディー』『漂泊者(アウトロー)』『氷のくちびる』など、仏映画のワンシーンを思わせる印象的な曲があった」等々。    -----(引用終わり)-----

 

うーん、「HERO」散々な言われ方ですね。                                       

なにより、甲斐バンドの初期の代表曲の話題なのに、「きんぽうげ」と「ポップコーンをほおばって」が上ってないではないですか!

 

甲斐よしひろさんは、記者に対して次のような趣旨を答えています。

「日本一のスタジアムバンドに」という目標のもと、ステージ映えするエネルギッシュな曲を増やしつつあり、この路線の決定打の曲が「HERO」であったとのことです。

なるほど、1979年の甲斐バンドは、日本で、スタジアム・ロックを目指していたのですね。

そういわれると、確かに「きんぽうげ」のような初期の曲なら、ライブハウスで百人の観客を前にしたタイトでシャープな演奏も素晴らしいはずですが、「HERO」は、球場で一万人の会場で盛り上がるのにより向いている気がします。

 

1980年代にアメリカ(と世界のヒットチャート)で流行したロックのスタイルに、スタジアム・ロック、アリーナ・メタル、スタジアム・メタル等と呼ばれる音楽があります。名前のとおり、球場等の大規模な会場で万単位の観客を対象にして演奏されるロックのことです。簡単に言うと、「ロックンロールの感動・盛り上がりを同時に大量生産する形式」だと思っています。

会場が球場ですから当然音は大きく、ハードロックの流れや影響はありますが、あくまで会場と観客の規模に着目した分類で、音楽性にはあまりこだわらなくてよい用語だと思っています。

 

最近、facebookグループの「Band-Maid Fans Worldwide」に、「アリーナ・メタル」って何のこと?というスレッドが立っていました。

 

-----(以下引用)-----

・(バンド)メイドの写真を検索していたら、こんな記事(2015年11月27日付のteamrock誌サイト)に出くわしたんだけど、「アリーナ・メタル」って何のこと?

【BABYMETALは、日本で最も奇妙なバンドなのか?】

(答)おそろしいことにそうではない。日本にはもっとたくさんの奇妙なロックバンドがある。例えばフリルの付いたメイドの服装を着た5人の女性によるアグレッシブなアリーナ・メタルバンドだ。   -----(引用終わり)-----

 

facebookグループのメンバーには、趣味としてロックを半世紀以上聞いてきた方も少なからずいそうです。なので、約100件のコメントの中に、1980年代の商業ロックの全体像を把握する見取り図として適切なコメントがありました。(サブカテゴリ毎に具体例として上げているバンド名が的確。)また、別な機会に引用しようと思います。

 

2016年の現在、アリーナ・メタル(ロック)は、海外では、ロック音楽のスタイルの一つとして定着しているようで、そういう音作りをしているバンドは複数あります。例えば、スウェーデンのクルーズ(Cruzh)というバンドの曲がFMラジオから流れてきた時、「1980年代のヒット曲かな?それにしては、聞きなれない声のボーカリストだな。」と感じたものでした。

 

もとい、甲斐バンドの名曲について。

 

「ポップコーンをほおばって」。

 

『映画を見るなら、フランス映画さ』という歌詞で始まるこの曲は、まさに、映画のような情景と心理を描写した曲です。フランス映画でなく、ダスティン・ホフマン主演のアメリカ映画の「卒業」がモチーフの一つなのかなと感じていましたが。

 

そして、「港からやってきた女」。

 

最近では、甲斐バンドの音楽とは、日本の演歌とブリティッシュ・ロック(ローリング・ストーンズ等)とのハイブリッドだという説も言われています。

だとすれば、「港からやってきた女」、演歌ロックの最高峰だと思うんですよね。

ライブで、クリスタルのエレキギターを持った中島みゆきさんが客演し、甲斐よしひろさんと「港からやってきた女」をデュエットする映像は今見てもとてもカッコ良いです。

「カーテン」「港からやってきた女」等々、甲斐よしひろさんの書く詞は、きわどいロック的なダブルミーニングの技術をふんだんに使われています。凄みと迫力を感じさせるフレーズが繰り出され、詞が刺さってこそロックであるというような基本姿勢を感じるのです。

 

ロック・モードの中島みゆきさんを聞いていて、ふと、椎名林檎さんって、中島みゆきさんや浅川マキさんの影響を受けているように感じたことがあります。どうなんでしょうか。あるいは、ロック歌手として共通する資質を持たれているということなのかもしれません。

最近、BAND-MAIDの小鳩ミクさんや侘寂~wasabi~の詩織サキヲさん(鮮やかな紫のリッケンバッカー!)のような、椎名林檎さんの影響を受けた女性ロッカーの曲を好んで聞くことが多いもので。

 

ロックは、バンド/パフォーマーの立ち姿がカッコいい方が良いのはもちろん、言葉の使い方も鋭くあると決まるものですね。

 

 

・黒葛原りつ「港からやってきた女」

https://www.youtube.com/watch?v=YxtmXuw2wsQ

シンガーソングライターの黒葛原りつさんによる甲斐バンドのカバー。ロックバンド編成(Le2 Band)での演奏の際は、元リンドン、ARB甲斐バンドの田中一郎さんがエレキギターを弾きバックアップされています。

・黒葛原りつ「それはスポットライトではない」( It's not the spotlight )

https://www.youtube.com/watch?v=jhLvTlukUvc

ロッド・スチュアートの歌唱で有名になった原曲に、浅川マキさんがオリジナルの詞を付けた日本語バージョンのカバー(浅川マキさんは、ロッドの「ガソリン・アレイ」の日本語詞バージョンも歌っています。)。

この時の黒葛原さんの髪型と弾き語りのたたずまいは、少し「American Fool」(アコギの演奏が印象的なロックの名曲「Jack & Diane」!)、「Uh-Huh」の頃のジョン(・クーガー)・メレンキャンプを思わせるものがあります。いや、女性ですからジャケ写を撮影したメグ・ライアンの方でしょうか。

・黒葛原りつ「崖っぷち」~「イナヅマ」

https://www.youtube.com/watch?v=TUSCRqs-5j4

ジョン・メレンキャンプ「ピンク・ハウス」

https://www.youtube.com/watch?v=qOfkpu6749w