ガールズバンド、CASPA(キャスパ)のライブを観戦~パワーポップとは何か?~( on BAND-MAID『Brand New MAID』リリースツアー )

人は誰しも、若いころは純粋で真っすぐであっても、年齢とともに、簡単には他人に打ち明けることのできないような、悲しみ、苦しみ、怒りといったネガティブな感情を背負いながら生きていかなくてはならないことがあります。

まだ世の中の矛盾や、人生の苦しみに直面せず、無邪気に未来を信じることができた10代の頃の明るさ、無邪気さ、純粋さ、甘い思い出の数々。聴いている間は、年を重ねるにつれ体験し自分の身体の一部となってしまった苦い思いや苦しみを忘れて、未来と可能性と時間は無限にあると信じて疑わなかった10代のポジティブな自分に戻ることのできる音楽。それがパワーポップの基底に流れる思想です。

音楽のスタイルとしては、1960年代前半に、イギリスのビートルズやアメリカのビーチボーイズが、過去のポピュラー音楽の様々なスタイルを統合して確立した、ポップなメロディーラインと魅力的なハーモニー、そしてロックバンドならではの力強いビートを持った音楽のことを指します。

パワーポップという単語(概念)がなかった1965年に、アメリカのロックバンド、ラヴィン・スプーンフルは、「魔法を信じるかい?」( Do You Believe in Magic )という曲を大ヒットさせました(全米9位)。この曲のタイトル、そして歌詞中で主張されているメッセージが、いわば、パワーポップの"教義"なのです。

楽しく、明るいこと、前向きなこと、そして、過ぎてしまったことではなく、未来に焦点を当てる姿勢。

ロックが音楽的に、形式的に複雑化していった1970年以降も、先祖返り、原点回帰による音楽の活性化の目的で、1960年代の前半の明るく楽しくパワフルな音楽を自らの音楽的基盤として取り入れるミュージシャン、バンド群がいました。イギリスでは、バッドフィンガーや、パイロットなどです。

そして、パワーポップを象徴する、代表するバンドが、後にソロ歌手として成功するリードボーカル、ギターのエリック・カルメンがフロントマンを務めるアメリカ、クリーブランド出身のロックバンド、ラズベリーズです。ポップなメロディ―ラインと、ギター、ベース、ドラムの楽器奏者がボーカルを兼務する2声から4声のコーラス、パワフルなギターリフというパワーポップの典型的なサウンドを持つバンドです。

ラズベリーズの代表曲、"Go All The Way"は、福山雅治さんのFM番組のテーマ曲としても長年かかっていました。また、KILLERSによるカバーもあります)。

多くのギターロックバンド、例えば、スミスやR.E.M.やオアシスは、ギターサウンドだけに焦点を当てれば、パワーポップと共通する面もあるのに、パワーポップと呼ばれることがまずありません。その理由は、これらのバンドは、明るく無邪気に青春や人生や将来を謳歌するだけでなく、人生や社会の影の面にも向き合う、"清濁併せ呑む"性格を持つロックだからだと思います。

人生や社会に、光と影があるとすれば、光だけに焦点を当て、光だけを観る音楽がパワーポップなのです。そして、その教義が「ロックンロールの魔法を信じようよ(ビリーブ イン ザ マジック オブ ロックンロール)」です。

 

ガールズバンド、CASPA(キャスパ)のライブパフォーマンスを、"BAND-MAID (バンドメイド)『Brand New MAID』リリースツアー"の対バンで観る機会がありました。

CASPA(キャスパ)の音楽は、ジャンルとしては、おそらく、グリーンデイ以降のポップパンクに位置づけられるものでしょう。日本では、青春パンク、メロコア(メロディック・ハードコア)等と呼ばれる音楽スタイルのようです。

1970年代後半のイギリスのロックシーンでは、1970年代初頭から続いているパブロック、パワーポップに、1976年に興ったパンク、ニューウェイブが接ぎ木されるような形で、この4つのカテゴリは密接に結びついて(人脈やスタジオ、演奏会場等のインフラ・資産を共有する形で)発展しています。ゆえに、ポップパンクのバンドをパワーポップととらえても間違いではないでしょう。グリーンデイは、パワーポップの音楽的特徴を備えたバンドです。

CASPA(キャスパ)のライブを観て感じたことは、ポップなメロディーとコーラスを重視したアレンジ等、ラズベリーズ以降のパワーポップの特徴を備えたバンドだということです。

Natsumiさんのエレキギターアルペジオで、曲をたたみかけるアレンジは、特にラズベリーズサウンドを強く感じました。

レフティのTokoさんのベース、とても上手いです。音程差のあるメロディアスなフレーズをブンブン弾いて曲を引っ張っていきます。MiyuさんのリードボーカルとTokoさんのベースギターの2本のメロディーが、一曲を通じて走っている感じです。

2016年2月にリリースされたCASPA(キャスパ)のデビューミニアルバム「さよなら世界」は、HAWAIIAN6の安野勇太さんが、全7曲のソングライティング、サウンドプロデュース、ディレクションを手掛けています。HAWAIIAN6は、日本のメロディック・パンクの草分けのバンドで、2014年には、セカオワSEKAI NO OWARI)が、HAWAIIAN6の"MAGIC"をカバーしたことでも話題になりました。

CASPA(キャスパ)のアルバム「さよなら世界」は、収録曲7曲とも気に入り、収録時間が約30分と短いこともありノンストレスでリピートできるので、70回~80回位再生してます。

歌詞の内容はパンクだけあって、平易なコトバを用いながらも深いです。

アルバム後半の④"見えない" ~ ⑤"Goodbye Sayonara" ~ ⑥"静寂と光" ~ ⑦"歌をうたえば"の流れ、構成は、「魔法が夜明けとともに溶け、過酷な現実の中に生身の身体と心で放り出されても、歌を歌って再び立ち上がり再生していこう」というストーリーと解釈しました。

見事なものです。

HAWAIIAN6の"Star Falls On Our Hands Tonight"等の楽曲群から引き継がれている世界観ですね。
 
CASPA(キャスパ)のライブは、ボーカルのMiyuさんのリードで、この世界観、歌詞をコール&レスポンスするするので、明るく元気に盛り上がります。


CASPA(キャスパ)は、2016年の7月に大きな転機に直面しています。

バンドの発起者でリーダーであったドラムのAikaさん(セカンドボーカルも務める)が、7月9日の新木場STUDIO COASTのLIVEを最後に脱退されたのです。CASPAは、ベースのTokoさん、ボーカルのMiyuさん、ギターのNatsumiさんの3人で活動を継続することを決定しました。7月10日以降は、山崎聖之さん(再結成後のHUSKING BEEのドラマーで、現fam。安野勇太さんとYASUNO N°5 Groupも組んでいる)がサポートドラマーとして叩いています。

今後はメンバーのオリジナル曲の比重も高まっていくことと思いますが、ファーストミニアルバム「さよなら世界」の7曲は全曲佳曲揃いですので、ライブを重ねてパワフルに育てていって欲しいと思います。

終演後、 BAND-MAID(バンドメイド)のリーダーの廣瀬茜さんが、「CASPAちゃんとはイナズマロックフェスでまた一緒」とツイッターでつぶやいていました。

バンド名の呼称にちゃんが付いているのはちょっと新鮮。

 

SECONDLADY 

SECONDLADY(セカンドレディ)は、 2012年に大阪で結成されたパンクバンド。

メンバーは、ネイティブ関西弁を話すアメリカ人、リードボーカル、ギターのAlyseさん、ベースのMegさん、ドラムスのJunnaさんのガールズトリオに、サポートギターのヒロさんが加わったクァルテット。コーラスは全員が担当。

好きなバンドとして、メンバー中3人が、Hi-STANDARD、2人がHAWAIIAN6をあげ、グリーンデイの曲もカバーしています。

Alyseさんは、海外からの観光客を対象とする関西圏の観光情報発信等の活動をされていることもあり、音楽活動に対しても海外から関心を集めています。日本語版、英語版を並行して情報発信しているツイッターのフォロワー数は、日本語版の528に対し英語版が861と(2016年8月23日現在)、海外からの関心が上回っています。

2016年4月リリースのSECONDLADY(セカンドレディ)のファーストミニアルバム"FIRST JUMP"。収録曲の"Someday"には、プロモーション用に別バージョンの"大阪城ホールライブ Ver"があります。こちらのバージョンも気に入ってよく聞いています。歓声のSEが、"チープ・トリック at 武道館"を思い起こさせるんですよね。

Alyseさんの歌い方は(強めのエコーのかかったライブ Verミックスの出だしのパートが特に)、イギリスのパンク、ニューウェイブ出身で1980年代に多数の世界的ヒットを放ったプリテンダーズのクリッシー・ハインドを少し思い起こさせるものがあります。英米人の発声、発音、ソングライティングと日本人女性のユニゾンコーラスが重なり、SECONDLADY(セカンドレディ)のユニークなバンドサウンドを作っています。

個人的には、SECONDLADY(セカンドレディ)に、パティ・スミスの名曲"ビコーズ・ザ・ナイト"のカバーを聞かせて欲しいと思っています。

SECONDLADY(セカンドレディ)は、2016年9月30日から10月2日まで、フランス領ニューカレドニアで開催される"ブラックウッドストック ロック&アートフェスティバル"へ参加し、現地で2回のライブ演奏を行うことが決定しています。プログラムを見ると、ヘッドライナー級の扱いです。

大舞台ですね。

 

CASPA  "The End Of The World" 
   
CASPA  "1st mini album Trailer" (incl. 5 songs)

SECONDLADY  "Sing it all our days"

SECONDLADY  "Someday"(大阪城ホールライブ Ver)