- 1.1960年代半ば『ブリティッシュ・インベイジョン』に対抗した米芸能界のメディアミックス『モンキーズ』
- 2.『BanG Dream!』(バンドリ!)は、”キャラクターとリアルライブがリンクする! 次世代のガールズバンド・プロジェクト”
- 3.『BanG Dream!』(バンドリ!)プロジェクトを統括する木谷高明さんのラジカルな市場戦略!
- 4.米ギブソン社の連邦破産法申請に思う~『君はロックを聴かない』なのか?
- 5.Roselia 1stアルバム『Anfang』
1.1960年代半ば『ブリティッシュ・インベイジョン』に対抗した米芸能界のメディアミックス『モンキーズ』
1960年代の半ば、アメリカのポピュラー音楽市場では、イギリス出身のロックバンド(ビートグループ)が相次いて大成功を収めていました。
ビートルズ、デイブ・クラーク・ファイブ、ハーマンズ・ハーミッツ、サーチャーズ、ホリーズ、キンクス、アニマルズ、ローリング・ストーンズ、フー・・・。
このブリティッシュ・インベイジョン(イギリスのロックバンドのアメリカ進出)に対抗し、アメリカの芸能界で、人気ロックバンドを作ろうとする動きが起こります。
アメリカの芸能界は、オーディションで、アイドル性ある若者を集め、ロックバンド「モンキーズ」を結成します。そしてモンキーズを主人公とするテレビドラマ『ザ・モンキーズ・ショー』を制作し、1966年から放映しました。
この”メディアミックス”手法によるモンキーズの企画は大成功し、ロックバンド、モンキーズは、世界中でアイドル・スターとなります。
モンキーズは、その結成の由来のため、一部から「作られたロックバンド」という批判を受けました。
しかし、次第に批判は収束していきます。
一流の作家がアイドル性あるメンバーに書き下ろした良い楽曲、そして楽しいロックのパフォーマンス。これらのエンターティメントの質そのものが、正統に評価されるようになっていったのです。
モンキーズの「デイドリームビリーバー」は、世界中の様々な歌手にカバーされるスタンダード曲となりました。
2.『BanG Dream!』(バンドリ!)は、”キャラクターとリアルライブがリンクする! 次世代のガールズバンド・プロジェクト”
約50年前に”メディアミックス”により大成功したロックバンド、モンキーズ。
現代ではメディアミックスのことを、IP(インテレクチュアル・プロパティ、ゲーム・アニメのタイトルやキャラクターなどの知的財産)と呼ぶようです。
ロックバンドRoselia(ロゼリア)は、歴史的には、”2018年のモンキーズ”と言えるかもしれません。
約50年前より進化していることは、プロジェクトの売上面での中核をスマホゲームが担っていることでしょう。
Roseliaは、漫画、小説、テレビアニメの『BanG Dream!』(バンドリ!)、そして、スマホゲームの『バンドリ! ガールズバンドパーティ!』(ガルパ)に出てくるキャラクターの一つなのです。
主人公の『Poppin’Party(ポッピン パーティー)』というバンドのライバル的な存在として『Roselia』は設定されました。
そして、『BanG Dream!』(バンドリ!)、『バンドリ! ガールズバンドパーティ!』(ガルパ)のキャラクター(バンド)の強力な特徴は、声優さんが実際に劇中と同じ仕様の楽器を担当し、リアル(現実世界)のライブで演奏活動を行うことなのです。
3.『BanG Dream!』(バンドリ!)プロジェクトを統括する木谷高明さんのラジカルな市場戦略!
『BanG Dream!』(バンドリ!)プロジェクトを統括するのは、ブシロードグループの創業者である木谷高明さん。
木谷高明さんは、次のように市場戦略(太字の部分、ハイフン以降は感想)を語っています。(株式会社ブシロードのホームページに掲載されているコラム「木谷高明の視点(2018年04月03日)」より)
■第一段階.まず、航空部隊(アニメ、音楽、ライブ)で先陣を斬る - つまり制空権を獲得するわけですね。-
■第二段階.アプリゲームは機甲師団 - スマホゲームは地上部隊として侵攻していき、面(市場)をおさえるということですね。-
■第三段階.歩兵にあたるカードゲームやグッズがコアなユーザーの求める欲求を満たしていく - スマホゲームがならした市場を深耕し、アナログメディア・ツールを販売していくということでしょうか。 -
この、IPビジネス(メディアミックス)の”市場掌握のための3段階戦略”と、そのための投資の規模というのは、一ロックンローラーが考えついて実行するレベルではちょっとないような気もします。
『BanG Dream!』(バンドリ!)プロジェクトを統括する木谷高明さんのビジネスについての発言を読むと、製品・市場を立ち上げ、成長させ、収益化を実現するためには、(特に初期において)”広告宣伝費は青天井で投入すべき”という主張が繰り返し強調されています。
音楽家にとっては、あまりなじみのないラジカルな考え方かもしれません。
4.米ギブソン社の連邦破産法申請に思う~『君はロックを聴かない』なのか?
アメリカのエレキギターメーカーの名門、ギブソン社の連邦破産法申請(事実上の経営破たん)については、日本のメディアでも大きく取り上げられました。
クラシックロックやサザンロックのファンとして、ギブソン・レスポールの音色には思い入れがあります。しかし、ギブソン社の事実上の経営破たんについての報道や識者の意見を見聞きして、少し、違和感を感じました。
それは、「歴史が半世紀(50年間)進み、事業環境(世の中)が根本的に変わった。昔は良かったとぼやいていても仕方ない。」ということです。
年配者が、「昔は良かった。」「今の若者はよろしくない。」「若者はロックを聴かない。(”あいみょん”かい!)」とぼやくのは、ロックじゃないような気がするんですよね。
チャック・べリーが発明したロックンロールは、徹底してティーンエイジャー(10代)に寄り添う、ティーンエイジャーの立場に立って味方する音楽だったはずなんです。
例えば、馬車や人力車は、運送手段としての需要はなくなりましたが、今でもイベントや観光用途の需要はあります。
エレキギターが、馬車や人力車のように衰退していく製品だとしたら、売上の減少は仕方のないことなんですよね。
木谷高明さんは、「KAI-YOU.net」のインタビューで(2017年7月14日)、『【記事見出し】2年以内に革命を起こさなければカードゲームは滅びる・・・』『アナログTCG(トレーディングカードゲーム)に関しては、ここ2年のうちにいろんな意味での革命を起こしていかないとダメです。』と答えています。
木谷高明さんは、TCG(トレーディングカードゲーム)という自社の原点・アイデンティティの事業の将来性に関して、「このままでは存続できない」と認識し、大変な危機感を持っているのがわかります。
この危機感があって、ラジカル(革命的)な行動に出ているのですね。
前述の”市場掌握のための3段階戦略”によれば、航空部隊(アニメ、音楽、ライブ)は、後続の事業のスマホゲームやカードゲームに対して、広い意味での”広告宣伝”に当たります。
つまり、とにかく制空権をおさえる(=市場での期待、認知度、支持等において絶対優位を確立する)ことが絶対であり、そのための費用は最大(青天井)に投入するべきであるということになります。
そのようにして掌握した市場を、自社の製品一色に染めて売上を伸ばし、投下した費用を回収していくというサイクルなのですね。
Roseliaの 1stアルバム『Anfang』は、2018年5月14日付オリコン週間アルバム(CD)ランキングで2位、同デジタルアルバム(ダウンロード)ランキングで1位を獲得しました。
声優さんがリアルに演じるガールズバンドが、売上、観客動員ともに、突然、トップクラスのロックスターとして躍り出てきた?!
音楽(ロック)の側面だけから見ていたので、背景が良く理解できず、一体何が起こっているのか??!というのが最初の印象でした。
プロジェクトを統括するブシロードの木谷高明さんは、音楽だけを見ている人とは全く視点が異なりました。
そのため、音楽制作にあたっての時間、費用(予算)等の「制約」も音楽業界の人と全く異なっています。
音楽の視点から見ると、打ち手が全然違った破天荒なものに見えるのです。
音楽面のプロデュースをされている作曲家の上松範康さん(Elements Garden)は、キャラクターを演じる声優が実際に楽器を演奏する『BanG Dream!』(バンドリ!)のバンド、Poppin’PartyやRoseliaについて、次のように発言されています。(「e-onkyo music」 2018年5月2日)
『音楽家の考え方だとこういうものは生まれない。専門家だとブレーキをかけてしまうような、一見無茶と思えるものからでないと、新しいものって生まれないんです。』と。
5.Roselia 1stアルバム『Anfang』
声優さんは、声で表現・演技するプロフェッショナルです。
BanG Dream!(バンドリ!)、ガルパのRoseliaのボーカル湊友希那を演じるのは、声優の相羽あいな(あいあい)さん。
相羽あいなさんは、劇団員、プロレスラーを経て、2016年に声優事務所入りし、2017年の『けものフレンズ』のイワトビペンギン役で注目されました。
以下は、音楽(ロック)という限定した視点からの感想です。
Roselia(ロゼリア)の1stアルバム『Anfang』は、湊友希那を演じる声優、相羽あいなさんが、リアルでのロックスターとしての才能を開花させたことが大きなポイントです。
そして、本職がアニメの声優さんであるメンバー4人(ないし5人)の声が重なったコーラスは、とにかく煌びやかで強力で魅力的!
ベースとなるロック(V系、アニソン、メロスピ、パワーメタル、ラウドロック・・・)を彩り、リードしているのは、声優さんのコーラスのように聴こえます。
Roseliaのメンバー(CAST)5人が、声で演技するプロであることを念頭に、声の魅力を最大に活かすようにプロデュース、アレンジ、ミックスしているのでしょう。
この制作によって、BanG Dream!(バンドリ!)のガールズバンド・プロジェクトの音楽性は、世界中どこを探しても、これしかない音楽(ロック)になっています。
さて、今年は、航空部隊は、海外のコンベンション(展示会)へも展開されていくのでしょうか?
□【公式ライブ映像】Roselia「BLACK SHOUT」/Roselia Live 「Vier」
声による演技が本職の声優さんのコーラスは聴きごたえがあります。
https://www.youtube.com/watch?v=p6XVF7fkoGM
□【公式ライブ映像】Roselia「R」/TOKYO MX presents「BanG Dream! 7th☆LIVE」
https://www.youtube.com/watch?v=Lx3Hwij-a94
□Roselia「Determination Symphony」( MV公開期間終了 )
Roseliaの衣装は”青い薔薇”をモチーフにしたゴシックロリータ風。X JAPANの名曲「Tears」の歌詞で歌われる”青い薔薇”の花言葉は、『不可能(奇跡・夢)の実現』。V系、耽美・ゴシック系等で”青い薔薇”は重視されてきました。ガールズハードロックバンドBAND-MAIDのボーカル彩姫さんのトレードマークも青い薔薇です。
□ Roselia「魂のルフラン(カバー)」( MV公開期間終 )
アニソンといえばこの曲。しょこたん(中川翔子さん)、SU-METAL(BABYMETAL)、SORAMIMI等々数多くのカバーバージョンがあります。